岩手県議会、盛岡市議会に提出した「女性専用トレイの存続を求める請願」の審査結果について
今年3月に岩手県議会、盛岡市議会にそれぞれ提出していた「女性専用トイレの存続を求める請願」の審査結果について報告します。
記事の一番下に、今回の請願の内容を記載しているので良ければご参照ください。
■岩手県議会
4名の議員に紹介議員の署名をいただくことが出来ました。
結果は、継続審査となりました。
(継続審査とは「付託委員会の審査が会期中に終了しない請願(陳情)な どについて、委員会の申し出に基づいて、議会の議決により閉会中も審査を継続すること。」とのこと)
まだ不採択と決まったわけではないので、良い結果を期待して待ちます。
■盛岡市議会
4名の議員に署名をいただくことが出来ました。結果は不採択でした。
請願を通して公共トイレを取りまく国内外での動きについてや、性犯罪に対して女性や子供の親が抱える不安を知っていただけたこと、またそれについて議員の方たちの様々な意見や考えを知ることが出来たことなど、大変得るものが多い経験でした。
不採択の理由は以下の通りです。
・請願の趣旨にあるような事例は盛岡では起こりにくいのでは。
・願意の根拠が不明瞭である。
・請願事項については賛成だが、(市内で)女性専用トイレが減っている事実がなく、市もそういう方向がないので採択の必要がない。性犯罪を減らしていく取り組みを頑張ることで請願の趣旨に応えられるのではないか。
・盛岡市有公共施設トイレ環境整備計画において、女性専用トイレをその他のトイレに置き換える方針はない。
・女性専用トイレとその他のトイレは優先度を置いたり比較されるべきものではない。本請願は個々に平等に守られるべき尊厳に差を生み出す議論に繋がるおそれがある。「ジェンダーレス」という概念を「女性や子供の危険」に結びつけかねず、新たな誤解や偏見や差別を生み出しかねないことを危惧する。
・現在市民から「女性専用トイレを廃止しオールジェンダートイレに変えて欲しい」という要望が一切ないため採択にそぐわない。請願者の性犯罪に対する危機感は理解する。市が今以上に性犯罪防止に取り組むよう要望する。
(請願名)
女性専用トイレの存続を求める請願
(請願趣旨)
誰もが快適に使用できる公共トイレをコンセプトに、昨年、東京都渋谷区のいくつかの公衆トイレの建て替えが行われた。その中で、女性専用トイレが無く、男女共用バリアフリートイレと男性用小便器のみで構成されたトイレが物議を醸した。女性利用者から男性用小便器だけあるのは不公平、男女共用トイレは防犯面と衛生面で不安などの声が上がった。
NHKが行った調査では、東京23区の屋外公衆トイレの6割以上で、女性専用トイレが無いことが分かった。公園等では建物の建築面積に制限があり、近年は男女別トイレよりバリアフリートイレの設置が優先されているということである。
性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律、いわゆるLGBT理解増進法が施行され、運用の指針等はまだ示されていないが、岩手県においても多様性に対応したトイレの拡充が進むことが期待される一方で、女性専用トイレの扱いについて不安を感じている。
多様性先進国のイギリスでは、近年、女性専用トイレを廃止し、ジェンダーレストイレに置き換える政策が進んでいたが、女性の安全や尊厳の観点から懸念の声が上がり、令和4年には政府の方針が変更され、新しく建設する公的施設には男女別トイレを設けることとされた。
また、国内でも、大都市の商業ビルにジェンダーレストイレが作られたが、女性客から安心して使えないと抗議が殺到したため、設置からわずか4か月で、男女のスペースを区切ったトイレに改修された。
犯罪学の専門家である立正大学の小宮信夫氏によると、海外では犯罪の機会を与えないことで、犯罪を未然に防ぐ犯罪機会論という考えに基づいて公衆トイレが設計されており、男性用トイレと女性専用トイレの入口をできるだけ離したり、男性が女性専用トイレのスペースに近づかないよう、男性が女性専用トイレのスペースに近づいたら目立つよう工夫されているとのことである。
我が国の公共トイレでは、女性が無理やり連れ込まれ性被害に遭う事件、男性が生理用品を持ち去る事件、盗撮等の目的で女性専用トイレに侵入する事件が後を絶たない。女性専用トイレが男女共用トイレに置き換わる流れが進めば、更に犯罪が起こりやすくなりかねない。
ついては、公共トイレの安全性を確保して女性や子供を犯罪から守るため、以下の通り請願する。
(請願事項)
1.現状、岩手県が管理する公共施設にある女性専用トイレを無くさないこと。
2.今後、岩手県が建設、改修する公共施設には、原則として男性用トイレ、誰でもトイレ(ジェンダーレストイレ、多目的トイレ)に加えて、女性専用トイレを置くこと。