「東京五輪1964」
東京新聞運動部でスポーツ取材にあたり夏冬のオリンピックを6度現地取材した筆者が、前回東京オリンピックから50周年になりかつ二回目の東京オリンピックの開催も決まった2014年に、自身は中学三年生だった前回東京オリンピックの第一日から最終第十五日までの各一日毎にテーマと人を選んで取材して書いた本です。
第一日の聖火ランナー坂井義則から始まり、第三日の重量挙げ三宅義信や第十一日の柔道中谷雄英と金メダリストも登場しますが、第十二日のマラソン寺澤徹の挫折も描かれます。第八日のヘーシンクの髪を切った選手村の女性理容師など選手以外の人も取り上げられています。
第六日の文部省の課長の地位を捨ててまで100mの決勝でフライングを起こさせずに一発でスタートさせることに執念をかけたスターター佐々木吉蔵の話が特に印象に残りました。
最終第十五日のフリーカメラマン岸本健やNHKアナウンサー土門正夫の目を通して描かれた整然と行進するはずが各国選手が入り乱れて入場したあの閉会式の様子は感動的です。
本の最後は、多くの当時の関係者が同じ意味のことを口にするという「1964年の東京オリンピック、あれはほんとうにオリンピックらしいオリンピックだった」という言葉で締めくくられます。