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薪ストーブの灰で灰汁をつくる

2015年5月29日
草木を燃やして得られる灰は、江戸時代には実に様々な分野で活用されていました。

酒蔵で麹種を作るために、カリ肥料として、和紙の製造、藍染液の製造にと、挙げればキリがないほどです。

家庭においては、洗濯や食器洗いにときどき灰汁を使っていたそうで、「ときどき」ということはいつもはどうしているのかといいますと、灰やもみ殻の軽い研磨力で洗っていたそうです。

そうして使ったもみ殻はやがて畑の堆肥となり、また灰汁は肥料として畑に撒かれたり、台所排水と共に排出されたりしました。

現代では、洗剤を使わなくても汚れが落ちるアクリルたわしというものがあります。
アクリルの細かな繊維に汚れを取り込むことできれいにする仕組みですが、ほんとにお皿がツルっとします。

そこで、アクリルたわしの保管にさえ注意すれば洗剤不要、油汚れは(しっかり拭いたあと)灰汁で洗ったらいいのではないかと思ったのです。

食器や調理器具につく汚れにはどんなものがあるかを考えてみますと、野菜などの食品かす、調味料、油分、そんなところでしょうか。

我が家では、それらはシンクに持っていく前に良く拭き取っているので、あとは少しの拭き残しを落とせばいいだけなのです。

食器も調理器具も、どれも表面はつるつるに作られていますから、軽く擦ったり、または流すだけでも十分落ちる気がします。

マレーシアとタイとの国境の食堂で、注文した皿が運ばれてくるのを待つ間、その店の横で男の子がバケツに水を流し入れながら、その水だけで客に供した食器を洗っている様子を眺めていました。

それらは基本的にステンレス製の平皿なので、水を掛けて軽く擦っただけで汚れは簡単に落ちるようで、その後布巾で拭きあげればよく陽を反射するピカピカの皿に戻ります。

水だけできれいになるものだなあ、だからこの国では皆ステンレスを選ぶのだな、と感心したものです。(グラスも水洗いだけでした)

※彼らがステンレスの食器を選ぶ理由は「宗教的な清浄さ」ということです
彼らの生活の基盤には、宗教的な意味での「浄と不浄」と言う概念があり、汚れた食器や衣類などが宗教的に不浄とみなされているそうです。
陶器のチャイカップは完全にはきれいにできないので「不浄」、だからきれいに洗える金属製である「ステンレス」の食器が好まれるのだそうです。

話が逸れましたが、食器洗いにアクリルたわしと灰汁を使ってみようと思い立ち、さっそく灰汁を作ってみました。

火鉢の灰を分けて貰いました。
これらは薪ストーブから出た灰です。

火鉢に貯めた薪ストーブの灰

陶器の容器に三分の一ほど灰を入れ、水を注ぎます。

灰濁した水

手を突っ込んでよくよくかき混ぜ、ネコが飲んだりしないよう木綿の蓋をかけておきます。

カバーを掛けておく

大事なことですが、灰汁はかなりのアルカリ性のため、アルミの容器は御法度です。
ですので陶器製のパン用の鉢に入れました。
大きさは通常の丸い金魚鉢くらいでしょうか。

素手でかき混ぜたとき、手がヌルッとするくらいのアルカリ性です。

こちらが1日経った鉢の様子。灰が沈み、濁りがなくなりました。

浮いているのは炭です

一体全体どのくらい漬けておいたら完成するのか見当がつかないので、

「冬じゅうたいた薪灰は、大樽にみんなとってあった。その樽の上から水をそそぐと、樽の底にあけた小さな穴から灰汁がポトポトたれおちてくる。」(ワイルダー著「農場の少年」より)

この一文を参考に(した割には漬ける時間が長いようですが)翌日には木綿で濾してひとまず灰汁の完成となりました。

つづく・・・


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