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消え行く小さな手仕事たち


2015年8月16日

キューバが気になっています。

庭にミントを植えればモヒートだなと思うし、アイスクリーム屋を見ればここがキューバの街角だったら行列になるんだろうなと思うし、空になった使い捨てライターを見ればキューバだったら見つけた人はどうするのかな、と思うくらいに頭がキューバです。

実際キューバの街角にはライターの修理屋さんというものがいて、使い捨てライターのガスがなくなったとしても、そこに持っていけばライターの底に小さな穴を開けてガスを充填し、その穴にピンを挿して封をしてくれるそうです。

壊れたライターの修理だってしてくれます。

我が家のライターは使い捨てではないライター。年季入り。

キューバでライター修理の仕事をしている元郵便配達員(63才/男性)の顧客には、貧しさから新しいライターを買うことができない人がいる一方で、暮らし向きは良くても単純に新品のライターを(キューバ国内で)見つけることができないという人もいます。

そのほかに、皆が日常的に使うもの、例えばベッドのマットレスやフレーム、おもちゃ、靴、電化製品、車のバッテリーなどの修理屋さんもあります。

これらの小さくても専門的な職業は、ソビエトの崩壊後のキューバ国内の経済恐慌による不自由なくらしの中で生まれたものばかりです。

「キューバの人はリサイクルの精神を育てなくてはならなかったんだ。でもそのおかげでサバイバル能力がものすごく付いたんだ。」
(65才/クラフトマン)

ハバナの街角

現時点でキューバ政府公認の「自営業」が201個あって、そのリストがなかなかおもしろかったのでちょっとご紹介いたします。

先に挙げたさまざまな修理屋さん以外に、

・アーティスト
・蹄鉄と釘の販売
・製本
・ボタンカバー掛け
・レコードの仕入と販売
・貝殻などの自然素材の収集と販売
・絵描き(路上での絵画の販売)

など、キューバの生活が垣間見れるような職業から「それでやっていけるの?」と聞きたくなるようなものまでリストアップされています。

それから「カフェ」「ソフティ」「ホットドッグ」「自動車販売」など普通の職業もあります。

しかしこれら201の政府公認自営業の経営は実に制限されたもので、売り上げには50%の税金が課されるなど、利益を得てそれを運用するのは難しい状況だということです。

そもそもキューバの人びとは、政府より配給手帳と日用品を貰っているものの、食料などは暮らしていくには不十分な量なので、みな創意工夫を凝らし、友人や家族と協力し合って節約をしてくらしているそうです。

2014年のアメリカとの関係改善(国交正常化)にともなって、これまでは禁止されていたこのような個人商店の対アメリカの輸出入ができるようになり、商売の幅が広がる可能性があると同時に、それはつまり国外の質の良い製品やサービスが手に入るようになるということでもあって・・・。

街角の修理屋たちが姿を消してしまう日というのもそう遠くはないのかもしれません。
自分は身勝手な部外者でありますが、かつて日本の江戸の町に溢れていたという「小さな職業」を思い、どうかリサイクル精神だけはなくならないでほしい・・・などど自戒とともに思ってしまうのでした。

ところで関係のない話ですが、初めてキューバに興味を持ったのは旅をしていた頃のことです。

「次は中南米に行きたいな」とその辺の国々について調べていて、キューバでは国民だけでなく(条件はあるけれど)留学生でも医学部の授業料が免除され、医者になるための勉強ができるということを知ったときでした。

それと同時にキューバが医療に関しては先進国であること、さまざまな国に医師団を派遣していることを知りました。

次に「キューバいいな」と思ったのはTV番組「本当のエコを考える地球旅行」での「徹底したリサイクル精神!驚異のエコ国家・キューバ 」というコーナーでした。

この番組でライター修理屋や国を挙げての有機農業などが紹介されていて、面白そうな国だなあと思ったのでした。

この記事の一部は:havanajournal.com, qz.comを参照しています。

おまけ:キューバな本たち

「小さな国の大きな奇跡」
キューバに数年間滞在していた著者が見たキューバと人びとのくらし、感情、状況、歴史が綴られています。

トランジット24号「美しきカリブの国へ」
写真で見る美しいキューバ。
トランジットは数ある旅行系本の中でも特に好きな一冊です。

キューバ旅行記
「いしいしんじのキューバ日記」

トタン屋根を歩く猫たちの写真がかわいい。

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