【安曇野から発信する潤一博士の目】16~王滝村滝越の隕石落下孔(クレーター)
御岳火南麓で木曽ヒノキ林の調査中に、王滝村滝越の南方で、面白い地形に出合った。平らな河岸段丘上の円い凹地(池、直径50m)である(1976年)。火口に似ているが、まわりに火山岩は無く、火山性のものではなさそうだ。直感では隕石落下孔(クレーター)!
気にかかりつつも、1979年10月30日には、突然の御岳火山噴火、1984年9月14日には長野県西部地震と大事件が続き、クレーター(?)にはなかなか足が向かなかった。
1989年夏に、ようやくクレーター(?)の調査が始まった。数回に及ぶ調査の結果、
①池は、河床から比高15mの河床段丘上にある。まわりには、火山岩、火山灰層はなく、基盤には濃飛流紋岩類。池の原因は火山性のものではない。
②凹地は、ほぼ円形で、直径は50m。凹地内には、厚さ3~5m細粒砂~シルトが堆積し、その下位には厚さ数mの角礫岩層がある。基盤の濃飛流紋岩類は、凹地の部分でまわりより数m深い。
③シルト層下底近くの材化石はほぼ2980年前(2980±130C14年)を示す。
④隕石そのもの、高圧鉱物は発見できなかった。
以上を総合して、滝越の凹地は隕石落下孔(クレーター)と結論した。落下隕石は直径2.5mと推定される。形成時期は、ほぼ3000年前(縄文時代末期)である。
(地質学者・理学博士 酒井 潤一)
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