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【安曇野から発信する潤一博士の目】10~日本列島から姿を消した植物たち:メタセコイア植物群

 日本列島では、新生代第三紀の鮮新世(520万~258万年前)から第四紀更新世前期(258万~78万年前)に、温暖な気候を好むメタセコイアとその仲間(メタセコイア植物群)が繁栄していた。メタセコイア、セコイア、ヌマスギ、フウ、オオバタグルミ、イチョウ、コウヨウザン、イヌカラマツ、タイワンスギ、オオバラモミ、トガサワラなどである。いずれも、現在、日本列島には自生しいていない。氷河時代の寒冷な気候が強まる中で、次第に、日本列島から姿を消して(消滅)、温暖な中国南部や台湾に生息地を移していった。メタセコイア植物群の消滅に平行して、寒冷な気候に適した「第四紀型植物群」が日本列島に侵入してきて、主役が交代した。最初に入ってきたのは、ヒメバラモミ、チョウセンゴヨウ、スギ、ミツガシワなどであり、詳しくは次回に触れる。

 メタセコイア植物群の変還は、故・市原実さん(大阪市立大学)による、大阪層群(大阪平野に広く分布する地層)のすぐれた研究によって、明らかにされた。

ヌマスギの大木(松本市旧芳川小学校跡地)
メタセコイア植物群の一員(明治以降に入ってきたもの)
ヌマスギの球果と葉小葉は互生(交互)
市原 実(1993)を参照して作成した(酒井潤一、2021)
メタセコイア植物群と寒冷系の第四紀型植物の主役交代の様子

(地質学者・理学博士 酒井 潤一)


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