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【職員研修日誌】 けんちゃんのもみの木に会いに

   ことしもクリスマスシーズンを迎えました。あっという間の一年でした。
 当館は2021年7月9日金~10月5日火の期間、『いせひでこ絵本原画展~聞こえた「さよなら」の声』を開催し『けんちゃんのもみの木』(BL出版)、『あの路』(平凡社)、『かしの木のこもりうた』(岩崎書店)を展示いたしました。その中の1冊『けんちゃんのもみの木』は、1985年8月12日に起きた日航ジャンボ機御巣鷹山墜落事故で、9才の息子けんちゃんを亡くした美谷島邦子さんのつぶやくように綴られた言葉に、いせひでこさんが、美谷島さんの想いを受け止め、寄り添いながら絵を描いた絵本です。

 「けんちゃんのもみの木に会いに行きたい」という願いが叶い、11月13日、御巣鷹への慰霊登山に職員全員で参加させて頂きました。(今年は新型コロナと、台風による村道・登山道の崩落の影響で一般の慰霊登山は規制されていました)
 朝6時に集合、安曇野インターから高速に乗り目的地にむけ出発、車中にてNHK「ラジオ深夜便」で放送された美谷島さんのインタビュー『御巣鷹山のもみの木に520の命が灯ともる』(11月13日、14日は年内最後の慰霊登山)を聴いて胸が一杯になりながら、朝焼けの山々を眺めつつ上信越道の下仁田インターを目指します。
 下仁田インターから一般道で、柳田先生・いせ先生との合流場所、浜平温泉しおじの湯へ。台風19号の復旧工事のため通行規制になっている村道に危険箇所があるため、柳田先生が私たちの先導をして下さいました。(危険箇所にはJALの職員さんも待機していて誘導して下さいました)。

潤一博士の作成した資料を見る大人達。
慰霊登山にむけ、地質学的な資料を作成していました。

 いよいよ登山口から柳田先生を先頭に歩き始め、時々事故現場の説明を聞きながら進みます。

信州人の私たちでも日陰は結構寒く、着膨れております。
静寂の森の中を進みます。
台風19号により崩落してしまった箇所がずいぶんありました。
上の方から「柳田先生!いせさ~ん!みなさ~ん」と美谷島さんの声が!
笑顔で私たちを出迎えて下さいました。
登山道の途中には山小屋があり、たき火もありました。
いせさんからも絵本作りについて現地でお話しを伺うことができました。
山小屋でお弁当を食べて、いよいよけんちゃんの墓標を目指します。
空の安全を祈る鐘と、昇魂之碑。皆で黙祷をささげます。
短冊に想いを書き込む柳田先生と、スタッフ小林。
絵本の一場面に登場する切り株。たしかに新しい命が育っていました。
もうすぐけんちゃんに会えます。
けんちゃんにようやく会えました。
もみの木にクリスマスの飾りをします。
けんちゃんの墓標の前でスケッチをするいせさん。この日は取材陣も同行。
~「また いつかきっと あえるよ」ささやくように チョウが舞う~
そんな絵本の中のワンシーンのような出来事が!
1羽のチョウが美谷島さんの手に舞い降りました。
こんな奇跡のような出来事を目の前で撮影できたスタッフの米山は大興奮。
けんちゃんのもみの木を裏側から撮影。

 ご遺族らでつくる「いのちを織る会」は、子どもたちと山に登りながら当時の事故の状況について説明をしたり、墜落現場となった御巣鷹の尾根にある慰霊碑を訪れるなど、事故の悲惨さと安全の大切さを学ぶ「命の授業」を度々行っています。
(いのちを織る会 https://inochiwoorukai.jimdofree.com/
 そして絵本『けんちゃんのもみの木』が、親子で命の安全を話し合うきっかけになればと強く願います。
 今回職員全員で参加させて頂き、上記のような想いを共有できたことは、とても貴重な体験でした。自らの何かを変えなければいけない時、このような体験を思い出して前に進みたいと思います。

*職員 原田朋子*













最後までお読みいただきありがとうございます。 当館“絵本美術館 森のおうち”は、「児童文化の世界を通じて多くの人々と心豊かに集いあい、交流しあい、未来に私たちの夢をつないでゆきたい」という願いで開館をしております。 これからも、どうぞよろしくおねがいいたします。