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サラのこと

 最近「野生の呼び声」という映画を観た。
裕福な家でやりたい放題だった犬がさらわれて、冒険の末、野生に戻るという話だ。
はじめはやんちゃで、次に皆を護るリーダーの顔になり、最後は哀しさと決意の表情をみせるバック。
地図にない街を探す相棒、ハリソンフォードも魅力的だ、スターウォーズ老ハンソロの雰囲気がある。
アラスカの風景もいいし、余韻の残る、また観たい映画だ。
何度も映画化されているらしい。
ジャックロンドンの原本も読んでみたい。
あと読みでも違和感はないだろう。

 また脱線。
閑話休題というフレーズを使いたくてたまらないが、高尚な話題でもないしエスプリもないのでおこがましい。

中学生の頃、「野生のエルザ」の本をいつも手にしている友だちがいた。
そのひとがビートルズのレコードを貸してくれた。1963年ごろだろう。デビュー曲「love me do」と「please please me」。
そのエルザのせいで、初期のビートルズの曲はB面まで覚えている。
楽しいばかりだった日々とともに。
ある日、代々庄屋だったというエルザの家にレコードを聞きに行って、トイレを借りた…。

トイレではない、お手洗いでもない。はばかり?雪隱?
四角い部屋で、おそらく四畳半以上あるだろう、目が点になった。
だだっ広い板張りの空間の真ん中に木の便座がちょこんと座されてた。
花も飾られてない。
落ち着かず、昼間でよかったとそうそうに退却した思い出がある。

題(タイトル)に戻ろう。
島の生活を14年ほど一緒に過ごした黒ラブ、サラのことだ。
奥山に自生している姫シャラ、(夏山登山では抱え込んで冷やしてもらうすべすべの樹)それと、沙羅双樹(この樹の下で釈迦が入滅した)から、もらった。
動物病院の先生は、好きな女優の名前だと言ってたっけ。

また思考が飛ぶ。
「雲居の雁」って名の犬と山で出会った。
源氏好きだろうが、また何で。失礼!
「カリ、カリ」と呼んでいいたので、もしやと思い尋ねたらやはりそうだった。


 慣れない暮らしの中でなごませ、潤いを与えてくれたサラ。
大食漢、(ではない女だ)、ペロペロ舐める、走る、泳ぐ、くわえる、うんちで回る、玄関で待つ、逃げ出す、様々な姿は今でも脳細胞の上席に存在している。
手術から帰り、サークルに寝かせたのに、荷物を取りにいったら居なくなってた。
なんでーと一瞬あわてた。
動けないはずなのに居間の座布団に横たわっている。
ひとと同じ感情をもっていることをしみじみ感じた。
たがいに島の土に還ろうぞ。待っててね。
サラのことと、迷想でした。
読んでくださりありがとうございました。


※「野生の呼び声」 ジャックロンドン 冒険小説 アメリカ 日本では1919年から翻訳本が6冊出版されている。最新は2007年深町眞理子訳。

※「野生のエルザ」 ジョイアダムソン ノンフィクション 日本では「野生のエルザライオンを育てた母の記録」1962年 文藝春秋社

※ 姫シャラ 樹皮が薄く、なめらかな赤褐色の樹。梅雨の時期、椿に似た可憐な白い花が咲く。

※ 沙羅双樹 釈迦が入滅した時四方にあった二本ずつの樹。日本では夏椿をさす。姫シャラより花が大きい。

※ フォト ピンボケのサラ


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