名称未設定-1

「あの日の靴」

どこに飛んでいったのぼくの靴。
あの日、青空がとても濃かったから
高くゆれたブランコから
遠く遠くまで飛ばしたんだ。

いろんなところを探したんだ。
木の上、木の下、木の穴。
草むら。壊れた小屋の屋根の上。
茶色くにごった小さな小さなため池。

どこにもなかった
ぼくの靴。
しかたがないから
片足で、靴下どろだらけにして
帰ったんだ。

あの日からどれくらいたったんだろう。
のろのろと走る渋滞の車の中から
きれいな川をながめて
ふいに対向車の色をチェックしたときに
なにげに見た白い車線の上に
ぽつんと落ちてた靴をみつけた。
探していたぼくの靴。

ああ、ぼくの靴は時を越えて
こんなところまで飛んできてた。
あの日のぼくのどこまでも飛んでいきそうな気持ちは
やっぱりほんものだったんだ。

ああ、ぼくの靴は空を越えて
きみにところまで届くかな。
いまにも飛んでいってしまいそうなきみのところへ。

ぼくはあいかわらず、
かたっぽだけの靴をはいて
それでもそれでも
青空をながめているんだよ。


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