名称未設定-1

「落としちゃった笑顔」

落としちゃったよ笑顔。
どこにあるのかな。
歩いてきた道をちょっともどってみたけど
郵便局の前にも
コンビニの駐車場にも
おさななじみのタロウくんの家にもなかった。

どうしたもんかな。
なくてもいいかな。
いろんな顔があるから
笑顔ひとつくらいなくたって
生きていけるのさ。


落としちゃった笑顔。
そんなことすら忘れて。
淡々とした日々をすごしているのさ。
風は吹き、雨は降り、夕焼けだって
とてもきれいだよ。

でも、
それでも、
なんだかたりない。

でも、それでも
やっぱりたりない。

走って走ってそこら中を走って
必死で必死で探したんだ。
坂道も猛ダッシュして、ドブも飛び越えて
時々ころんだりして。

疲れ果てて
ねころがった川原で
見上げれば青い空。
こんなに空はきれいなのに
パンツまでびしょびしょになったぼく。

おもわず、くすりと笑えてきた。
そしたら、そんな自分にもっともっと
笑えてきた。ひとりで汗まみれで腹を抱えて
いつまでも笑っていた。

あったよ。あったんだぼくの笑顔。
ぼくの顔の中に。
あったよ。あたりまえだよ。ぼくの笑顔。
それはぼくの顔の中にある。


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