SEISHI2話

「私はラシー マンコーラシーよ」
その言葉でセシーは元気を取り戻した。今までは生きる理由が無かった。走る理由もなかった。だがたった今出来た。彼女に、ラシーに会うために私は走るのだ。
なんとか走り続けていると、波が止まった。そして波はまるで先程までの荒れが嘘のように静まった。
まるで何十万年も前からそうであったかのように、静かに周りのピンク色の壁を水萌に映している。
それを見た精子たちは皆バタバタとその場に崩れ落ちた。皆限界を超えて走っていたのだ。もう動くこともままならないだろう。
セシーも同様にその場に崩れ落ちた。そして崩れ落ちていく精子たちの中にはカルピスの姿もあった。
「やぁやぁ ようこそ諸君 おめでとう!!君たちは選ばれし精子たちだ」聞き慣れた謎の声が洞窟内に響く。
前のようにその声に悪態や罵声を浴びせる物は一人もいなかった。みなそんな元気もないほどに疲れ切っていた。
「じゃあここまで生き残った君たちに、褒美として特別に教えてあげよう 君たちが生まれた理由。そしてこれから向かうべき場所について まず…」
謎の声の話を遮るようにゴゴゴゴという音が洞窟内に響いた。
「ったくいいとこなのに… 君たちしっかり壁に捕まって置きなさい これから濁流が来るぞ まぁ前の液体みたいに体は溶けないからあんし…」
話の最中に、洞窟内を勢いよく濁流が襲った。
第二章 不満
山口ミナは憤っていた。それは三年前から付き合っている彼氏の森岡亮太の事であった。
森岡亮太は24歳。未だに定職につかずプラプラと遊び呆けている。その事についてミナが言うと、その場では「ちゃんとする しっかりする」というのたが、彼がその後変わることは一度もなかった。
ミナも今年で28歳 結婚や子供の事も考えたい年齢であったが、亮太のだらしなさを考えるとそんな事を考える事は出来なかった。
そしてミナと亮太は今日ホテルで会ってセックスをした。セックスが終わった後、亮太が申し訳無さそうに「ゴムが破けちゃった」と告げてきたのだ。
ミナの怒りは頂点に達した。この男は何を考えているのか。もしこれで妊娠でもしたら果たして責任を取れるのだろうか。いやこの男に取れるはずがない。前も同じ事があった。セックス中にゴムが破けたのだ。その時もこの男はオロオロとするばかりで何の役にもたたなかった。仕方がないのでミナが産婦人科に行き、ピルを貰って来て事なきを得たのだ。
「あのさ‥なんで学習しないの?これで子供出来ちゃったらどうするのよ」ミナは亮太に詰め寄った。
「悪かったよ…でも仕方ないだろ ゴムが破けるのは俺のせいじゃないだろ」
「じゃあもうセックスなんてしなくてもいいんじゃない?ゴムが破けるのが仕方ないなら怖くてセックスなんて出来ません。万が一に妊娠でもした日には大変だわ。こんなロクに仕事もしないで遊び呆けてる人が旦那さんなんて恥ずかしいもの。きっと子供もニートよ。男の子が産まれたら最悪。弱者男性になって世の中を恨んで未来ある若者を殺すんでしようね そしたら私も大変だわ 毎日ワイドショーで謝ってる姿写されて、ネットでは悪魔の子を産んだ親として叩かれて、その時隣にあなたはきっといないでしょうね。あなたは私が妊娠したら、そのまま怖気づいて逃げ出すに決まってるもの。そして一年くらい良心の呵責に苦しんで、でも2年もすればそんな事忘れて、今みたいにダラダラプラプラしてるんでしょうね 男の人はいいわね。子供が出来ても逃げちゃえばいいんだもの。コンドームが破れても仕方ない、おれは悪くないで済むものね。でも女は違うのよ。血反吐吐いてでもその子を育てなきゃいけないの。そうしないと責められるのよ。最低な親だって。子供を産んだ責任は父母両方にあるはずなのに、いつも責められるのは母親 ねぇ聞いてるの!!」ミナはついに堪忍袋の緒が切れてしまった。いつも心の奥の気持ちをしまっておく袋が破けてしまった。ちょうどベットの隅に転がっている破れたコンドームのように。
亮太は黙って聞いていた。言い返したい事が無いわけではない。なぜコンドームが破れただけでミナが殺人鬼の親になるのかはわからなかった。だが言い返しても火に油を注ぐ事になるのは目に見えていた。
「取りあえず家にあるピルを持ってきて 今すぐに ひきだしの薬箱ボックスに入ってるから 私はあんたが出した不潔な液体を洗い流してくるから。」そう言うと、ミナはホテルのお風呂場へと向かった。
お風呂場へと向かったミナは、シャワーを勢いよく出すと、それをそのまま女性器へと押し付けた。

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