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せかほし 〜優しい微笑みが残った

世界はほしいモノにあふれてる」での春馬くんとJUJUさんコンビでのやりとりが、とても好きだった。
この番組を知るきっかけになったのは、私が住む国が取り上げられたからなのだけれど、出来る限り過去の放送まで遡って見るうちにやめられなくなり、何度も見るようになった。
二人のMCは息もピッタリで、JUJUさんのクールなツッコミと豪快な笑い声、春馬くんの柔らかな口調と時々見せるお茶目な言動を見ても、すごくリラックスしている様子だったし、役を演じていない時のほぼ素の春馬くんが垣間見える貴重な機会だった。
リアルタイムで見たのは数回だったけれど、当時は春馬くん自身よりも、取り上げているテーマに惹かれて見ていた。
あの日が来るまでは…。

JAPAN!究極の”台所道具”

春馬くんが出演した最後の回は、和の台所道具という内容的にも、とても興味深かった。
日本の職人技の素晴らしさ、日本の伝統文化の美しさは、海外に住むようになってからより実感しているので、共感しかない回。
日本へ一時帰国した時の私の楽しみは、日本のザルなど職人さんの手仕事で作られた道具などを持ち帰ることなので、ここで取り上げられている台所道具は目福だった。
春馬くんが普段使っている漆の器を持参して、”経年美化”を楽しんでゆきたいという趣旨の発言には、とても美しい表現だと感心した。
私も自分の出身地にある工房の漆の器を少しづつ集めているのだけど、もったいなくて年に一度お正月に使うだけで、普段はしまい込んでいた。
来年は、もっと使ってあげよう。

「せかほし」での春馬くんのJUJUさんへの眼差しはいつも優しくて、本当に信頼し合っていることが、言葉にしなくても伝わってくる。
JUJUさんが、春馬くんからのプレゼントの茶筒に「ありがとね」と言った時の、春馬くんのとっても幸せそうで満たされたような微笑が切なくて、思わず泣きそうになった。
この出演最後の回の春馬くんは、何だかいつもより透明感が増していて、消えてしまいそうに儚げだった…。
「せかほし」の無邪気で楽しそうな春馬くんの笑顔を見返す度に、ホッコリすると共に、やるせない気持ちが込み上げてしまう。
二人のMCで何年も続く長寿番組になってほしかったのに、どうしてこんな事に…。

ロンドン KIMONOスペシャル

JUJU×鈴木亮平MCになって最初にとりあげた着物の回。
鈴木亮平さんが春馬くんの後任になってくれて本当に良かった。
亮平さんは、知性も品もあり、せかほしファンも納得の人選。
私はアンティーク着物が大好きで、まだ日本に住んでいた頃はよく着ていた事もあり、見ていて久しぶりにかなりテンションが上がった。
あの頃から、若い世代の中でも、格式に囚われ過ぎずに日常着として着物を着るというムーブメントが起きて、今もその流れが続いていることがとても嬉しかった。

そして、JUJUさんが誕生日プレゼントに春馬くんからもらったという、象牙の椿の簪を見てさらに感動した。
椿は着物の世界では冬の12~2月頃によく身につける文様。
着物を着る女性へ和小物の簪をプレゼントするなんて、これこそ粋というもの。とても20代後半の男性とは思えないセレクトが渋い。
春馬くんは、年齢以上に内面も成熟した人だったのだな。
着物を日常着として着ていた時代、男性から女性へ簪を贈るということは、意味のある事だった。今となっては本人しか知る由のないことなので、ここで多くは語りませんが、春馬くんにとってJUJUさんは、かけがえのない大切な存在だったであろうことは、「せかほし」を見ている多くの人が感じていたことでしょう。

春馬くんの側にJUJUさんが居てくれて本当によかったと、「せかほし」を見返すたびに思う。
そして、今もそこに春馬くんは一緒にいるという雰囲気があることも、番組の良心のようなものを感じる。
これからも「せかほし」と共に春馬くんの旅は続いてゆくんだね。


JUJUさんは、大晦日の紅白でどんな曲を歌うのだろう。
「せかほし」では、今までのように落ち着いた感じでMCをしているけれど、悲しみはいかばかりか…。

春馬くんの訃報後3日目のJUJUさんブルーノート東京ライブ。
『A Woman Needs Jazz』、そして2曲めの『みずいろの影』は、とくに歌詞が全て痛いほど心に突き刺ささってくる。
JUJUさんの今にも泣き出しそうな表情…それでも気丈によく最後まで歌いきった。そのプロ根性に、心の中で拍手を送った。


夕暮れの海辺に、ぽつんと一人、背中を丸めて佇む風景と波の音が寂しくて、美しくて。
とつぜん慟哭するように激しく熱唱するアカペラ部分は、彼女の深い深い悲しみのようで、聴く者の心に迫ってくる。




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