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大人になれたかな

 この三連休で祖母に会いに行った。去年の祖父の葬式以来だった。
 天気さえよければ日帰り温泉でも……と思ったけれど、例によって雨女パワーと梅雨が重なり、近所のコインランドリーとスーパーに出かけた程度で、あとは家でのんびり過ごしていた。
 日中はお茶やコーヒーで、夜はビールや日本酒、赤ワインを飲みながら、祖母と色々な話をした。
 頻繁に帰省していた子供時代は、祖母と何を喋ればいいのか分からなかった。好き嫌いではなく、標準語で喋れる祖父の方が話しやすかったからだと思う。
「自分は頭が悪いから、つまらない話ばかり……どれかひとつでも覚えて帰って」と、祖母は卑下していたけれど、生きるための心の持ちようや、趣味を持つこと。娘時代の思い出から晩年の祖父とのやり取りまで、どれも取りこぼしたくなかった。
「グチグチ飲むお酒よりも、楽しく飲んだお酒は美味しい」との締めの言葉も忘れたくない。

 四十九日を過ぎてから、祖父の夢を見るようになった。
 まだ元気だった頃の姿で車を運転していたり、ラーメンを食べている姿を見ると、痩せ細った最期の姿が夢ではないかと思ってしまう。
 これは祖母とも話したけれど、空っぽになった祖父の部屋に足を踏み入れても、初盆を迎える実感がわかない。それこそ気配は感じなくても、奥の座敷からひょっこり現れそうな気がするのだ。
 一年は本当に早い。もうすぐ梅雨が明けて、また夏が始まる。
 晩酌の中で初めて知った祖母の夢も、体が元気なうちに叶えてあげたい。次はもっと長い休みの日に会いに行こう。

夢の景色を探すんだ

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