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日記

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#エッセイ

祖父のいない処暑

 ミンミン、ジジジ、と競うように騒いでいた蝉の大合唱はもう聞こえなくて、もう少し声の高い、控えめな鳴き声が聞こえた。秋の虫だろうかと日陰で電車を待ちながらぼんやり考えた。  祖父が亡くなった。享年89歳。救急車で運ばれた翌々日、病院で息を引き取った。  自宅で転倒してから満足に歩けなくなり、腰の骨が折れていた(!)から入院することになったものの、最終的に在宅介護をすることになった。  祖母が「自宅で看取りたい」と言っていたと両親から聞いたのが、たしか去年末だったと思う。  

サンドイッチと初めてのレシピ本

 バイト先の近所にある本屋で、初めてレシピ本を買った。スーパーによくある食材と味出し素材を組み合わせて、手間なく簡単に作れるレシピを沢山紹介していた。  17歳の私は人生初の恋人に夢中だった。同じバイト先で働く年上で、とにかく嫌われたくない一心で盲目だった。  何度目かのデートで水族館に行くことになった。手料理が食べたいと言われて、朝から張り切ってサンドイッチを二種類作った。  今だから言えるけれど、うずらの卵を目玉焼きにするのは間違いだったし、デコチョコはチョコレートソース