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犬が星見たの那須登山〜三斗小屋日記1日目

にわか山登りをはじめて、数ヶ月。
7月上旬にひとりで尾瀬に行き、下旬にまたひとりでいつもの高尾山に行ってからは、暑さと緊急事態宣言もあり、山登りをしていなかった。

そろそろどこか行きたいな、栃木なら行き方はわかるし、と思い、那須・茶臼岳周辺へ行くことにした。
写真が綺麗な三斗小屋温泉泊と決めてネット予約した。初の山小屋(といっても個室、旅館ばりのサービスあり)心配なので、前日に電話確認した。
山小屋のきまりも本で読んだ。山のおねえさんがベッドランプが必要よと教えてくれて、快くストックまで貸してくれた。

準備が後手後手で、昼間買い物にいき、夜、前のりにして宇都宮のビジネスホテルに泊まった。明日は1日携帯の電波が届かない場所にいく。最近控えていたアイス(でも糖質オフしか食べたいのがなかった)にポテトチップスも食べて満足していつのまにか寝ていた。

やや寝坊気味に起き、急いで支度をして普通電車で那須塩原駅へ。そこからはバスで那須ロープーウェイ山麓駅へ。レンタカーでもよかったのだけど、駐車場に一昼夜止めておくのがちょっと気になってやめた。登山客が多い。格好で日帰りか泊まりかがわかる。前の日帰りと思われるおばさま方3人組に混じって、運転手さんから割引のチケットを買う。

那須にはしばらく来ていなくて、おしゃれな今どき風のグランピング場ができていたりした。(でも帰りよくみたら閉店した飲食店もたくさんあった…)バスに乗って75分くらい。傾斜が結構あるから路線バスにはつらそう(私観)。
終点で降りたら、くもりで寒い。ロープーウェイ山麓駅は9.5℃。フリースを出して着る。リュックは10キロなので結構重い。私と同年代くらいの女性が父親くらいの歳の男性と話している。敬語なので、父親ではなさそう。無論恋人でもなさそう。2人ともガチ登山装備。山登り仲間なのかな。ふしぎな組み合わせ。でも地図を見せあったり、今日の行程や肩こりの相談とかしていて、なんかいいな。

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バスの運転手さんもお天気のことをアナウンスしてくれて、ロープーウェイの運転手さんも「ガスってますね〜右手に朝日岳が…見えません。」と説明してくれる。
私よりずっと若い山ガールたちが富士山に登った時の話をしている。山登りではない装備の観光客もいる。4分でロープーウェイは山頂駅に着いて、トイレに行ったり、しばし準備。

支配人と思われる人がお客さんに「昨日は雨で地面が滑ります。気をつけて。今朝、遭難した人がいます。まだ見つかってません。」と衝撃的なことをさらっと言っていてお客さんは「え!」と衝撃を受けていた。ちびまる子ちゃんで言うと顔に縦線が入るレベルか。
ああガスだ…やむなし。ひとまず茶臼岳へ。

思った以上に岩と砂利と急勾配。すぐ汗をかいてフリースを脱ぐ。長袖のベースレイヤーに薄手のウィンドブレーカー。レッグウォーマーはもってきて正解だった。なんせ荷物が重いのでゼーハーしながら登る。

70代くらいのご夫妻、旦那様が「俺、眠いからここで寝るわ!」と岩場近くのベンチを指して言っていて冗談か本気かわからない。「お父さんこの前もそう言ってたわよ。ほらマスク落ちた!」お母さんは全く余裕でかわしていてすごい。

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半分ほど登り、大岩という文字通り大きな石がある場所に着いたら、おじさまおばさまのパーティーが休憩している。リーダー的おじさまが「まだ半分だー、山頂みえねぇけど。」というと、無邪気な感じのおばさまが「えー!まだ半分なんけ?えー。」とガックリしている。おじさま「見えないからいいんだっぺ!」と説いていた。おばさまが「あたし、お腹すいた!もうおべんと食べっかんね!」と言い出し、おじさんがちょっと呆れながら笑っていた。おばさまの明るさ、元気の良さ、天真爛漫さ、好かれそう。いいなー。ふたりともおそらく栃木弁のネイティブ・スピーカー。素晴らしく流暢で私的には大変望郷の思いが湧き起こり、もっとずっと会話を聞いていたかった。本当に上手な方言の使い手で教科書レベルだったと思う。

慣れない岩ヤギのように岩場を登り、山頂に着いたら、お弁当を食べているご夫婦がいて、「あー混んできた」「写真スポット」「ロープーウェイのみなさま」(このふたりは歩いて登ってきたのだろう、やや皮肉ぎみに?)「銀座みたいね」など会話しながら魚肉ソーセージを齧っていた。ユーモア感が多分すごく合うおふたりなんだろうな。

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山頂には壊れかけの鳥居があり、ちょっと怖かった。小さな神社があるのだ。
しかしなぜか小さなお社にはダッフィの彼女のぬいぐるみが鎮座ましましており、軽装備の大学生男子の団体が「ダッフィの彼女、守り神かよ〜。」と突っ込んでいる。「院試の祈願しようかな。」「まだ、はえーよ。」ととてもまじめそうな感じ。

若い軽装備カップルがおやつに「あのラスク持ってこなかったの?」とか話している。特に男性が山好きのようだ。ガスっててこんな厳しい岩場、しかも寒いとこに連れてこられた女性、どうか山と彼が嫌いになりませんように。

そして那須連山は火山のため、茶臼岳山頂は結構硫黄の匂いが強かったのだが、みんなふつうに岩場の間でお昼を広げていた。大丈夫?

リュックを調整して、借りたストックを取り出して朝日岳へ。途中もまたガスで先が見えない。
人生のような岩場、ザレ場、坂道、Long and winding load。
すれ違うお兄さんが「ガスガスですねー、お気をつけて」とか言ってくれる。おやさし。

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朝日岳の方へ向かおうとして歩き出したら、女性ふたりとすれ違い、「茶臼岳もきっとガスよねー」と話していたので、「ガスですー」と思わず言ったら、「あら、朝日岳はパラパラ(雨)よーお気をつけてね。」と教えてくれた。朝日岳は森林限界より下だから景色が違いそう。でも、霧が濃すぎて、風も強く視界不良になってきたので、これは…と思い、引き返してまっすぐに三斗小屋温泉に向かうことにした。(これは正解だった)

そこからもしばらくスーパーマリオか高橋名人の冒険島のような、転んだら谷底まっしぐら系の岩砂場を歩き、(そして誰も歩いていない…)
くまっぴ(熊)が出たらどうしようと思いながら歩を進めた。熊よけ鈴は持ってきたが、なんか音が小さい気がする。自分的にずっと鳴ってても嫌じゃない音の鈴を選んだけど、もっと迫力がある、リンリンするやつにすればよかった。どなたかいい音なのにくまっぴが嫌いな音波が出るハイブリッド熊よけ鈴を開発してほしい。プロデューサー!(誰)

そしてそんな中をしばらく歩くと森へ出て、あら不思議、開けた北欧みたいな場所に着いた。避難小屋があり、普通は入れない。誰もいないがよい場所だし、13時なのでお昼休憩とした。ここをムーミン谷と呼びたい。でもむしろ誰も来なさすぎて、くまっぴが本当に来そうで怖かった。カップラーメンを湯沸かしからだと6分でつくり、2分で食べた(体感)。それとアミノバイタルゼリーとプロテイン入りチキンソーセージでお昼ご飯とした。くまっぴが、どうかカップラーメン嫌いでありますように。

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そのあとは高尾山の5号路ばりの楽しい道が続き(わかりにくい)、延命水なる湧き水が出ていた。前を歩くカップルは「わー、水冷たい。でも川の水だから飲まないね。」と言っていたが、私は両手ですくってごくごく飲んだ。おいしかった。

あと10分で三斗小屋温泉というところまできて、ご夫婦とすれ違い、「あともう少しだね!頑張って!いいお湯だよ〜。楽しんできて。」って励ましをいただいた。うれしかった。なんてお優しい(涙)。

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宿に着いた。すてきな木造の建物。建ててから150年経つそう。割と早めに着いたようだ。
眺めがいいお部屋に案内される。宿の人が曇ってなければ尾瀬が見えるんだけどねーとおっしゃる。電気は自家発電で21時消灯、電波なし(電話は衛星電話のみ)。温泉はふたつあり、それぞれ源泉が違い、効能が違うそうだ。1時間おきに女湯男湯が入れ替わる。木の浴槽の大風呂は熱いが肌馴染みがよい。岩風呂はぬるめ。することもないため私は温泉にトータル4回入った。

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フロントで置いてある本を眺めていたら、シーツを畳みながら宿の人が話しかけてくれて、よく登るの?今日はどこに行ったの?と聞いてくれた。尾瀬で熊に会った話をしたら、静かに歩く女性の方が遭遇しやすいみたいよ、と教えてくれた。ガシガシあるくと熊が察知するらしい。尾瀬もいいよねー。会津のなんとかもいいみたいだよ、って教えてくれた(大事な部分を聞き逃している)。この辺りも熊が出るし、今年は5回中4回鹿に会うよ、鹿多いねーとのこと。もう1人の従業員さん(若主人さんでした!)が雑誌新しいのもありますんでどうぞーと出してくれる。

私は以前から、年甲斐もなく、登山リュックにサン・テグジュペリの「星の王子さま」に出てくるうわばみとぞうの小さなぬいぐるみを付けているのだが、宿に「星の王子さま」の本があったので、うれしくなりお借りした。寒いので布団をひいてもぐり、お菓子とお茶を食べ飲み、うつらうつらしながら読んだ。王子さまは知ってる人にどことなく似てる気がした。

おじいさんと娘さんらしき2人が宿に着いて、即、ビール下さいと言っていた。おじいさんが飲むらしい。しばらくするとおじいさんが「お風呂わかんない〜」とステテコでやってきたので宿の人が慌てて説明している。そして2人は私の隣の部屋だった。ふすま一枚隔てただけなのでしゃべってる声がまるまる聞こえる。最初、疲れたのかおじいさんはやや不機嫌そう。ご飯がきたら静かになり、そのあとはご機嫌になって、またひとしきりしゃべって(常におじいさんがメインで話している)「もう寝る」と言ってすぐ静かになったのでどうやら寝たようだ。 娘さんが焦って寝る前におじいさんが飲むのだろう「くすり!くすり!」と言っていた。

向かいはおじさまおばさまたちのパーティー。にぎやか。修学旅行みたいだ。

夕食は17:30に各部屋にお膳で運ばれてくる。そしてさらにはおひつご飯。感動。
たっぷりのご飯、ちたけのお味噌汁、サーモンフライ(スパイシーで美味しかった)、キャベツ千切り、ほうれん草のおひたし、湯葉の荷物、ひき肉多めの麻婆茄子、オレンジ。どれも美味しかった。
ご飯がたくさん余ったので、ついてきたお醤油をちょっと入れておにぎりにした。
お米も美味しかった。

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下にお湯をもらいにいったら、もうないのーと言われたので、大丈夫ですーと言って、宿オリジナルのかわいいナルゲン・ボトルを買った。あと久々にビールも。

再度お風呂に入って(貸切状態)、ビールを飲んでいたら消灯時間になった。沢の音しかしない。
そして21時過ぎに部屋の灯りが消えた。

つづくかしら??

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