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COVID-19の医学情報をどう扱い行動するか(1)エビデンスレベルは?

世界中の科学者たちが、新型コロナ感染症を克服するために寸暇を惜しんで調査・研究を行っています。研究成果は次々と発表されていますが、私たちはそれをどのように受け止め、行動たらいいのか?少し整理してみましょう。

確実な予防法・治療法は存在しない

これまでの医学・自然科学の成果で、私たちは数々の感染症を克服してきました。その対策で衛生管理とともに中心となるのは病原体への抗体を獲得して感染を阻止するワクチンと、発症後に確実な治癒を可能にする治療薬の確立です。新型コロナには「まだそれがない」状態のために世界全体が不安を抱えている状態です。

学術的にどうなればその条件を満たすのか

治療薬もワクチンも、「一定以上の確度で効果があり、かつ副作用は許容範囲である」ことが要求されます。では、それは学術的にどのように評価されるのか、非常にざっくりとしたお話しをします(一般の皆様向けであり、専門家の先生の批判に耐えるものではありません)。

ある臨床テーマに関して医学雑誌(最近はWeb版も増えました)に投稿される最初の入り口はいわゆる「1例報告」という「ある患者にこの治療をしたら効いたよ」というレポートです。一般的には20~30症例以内の報告であれば1例報告と似たような扱いをされます。「そういう事実があるのは確からしいけど、一般論とは到底いえないよね」ということです。

とはいっても、この症例数が数百、数千と増えていけば「やっぱりそうなのかもね」と徐々に信頼度は増していきます。「他に良い方法もないから、ウチでも取り入れてみるか」と他の施設でも実践され、論文の本数が増えれば信頼度はさらに上がります。

「確からしさ」には、レベルがある

しかし、異論は当然出てきます。代表的なのものが「病は気から」です。「あのエライ先生がくれたクスリだ、とっても効きそうだなぁ」と患者さんが思えば症状に影響するかも知れないですし、エライ先生も「私がススメるこの薬はよく効く、ほらやっぱり良くなっているじゃないか」と思えば評価のスタンスも違ってきます。

この事態を避けるために、本物の薬とニセ薬(プラセボ)を使って誰が本当の薬を飲んだか当事者には分からないようにし、さらに薬を投与する集団と比較対象となる集団の質を出来るだけ均一にするなど、調査結果を乱す因子を出来るだけ排除した「ランダム化比較試験(RCT)」と呼ばれる手法が信頼度が最も高いとみなされています。さらにこのRCTを複数、一定の条件のもとに集めて評価したメタ解析(システマティックレビュー)が、いわゆるエビデンスの最上級とみなされているのです。

では、現在の新型コロナをめぐる情勢はどうなっているのでしょうか?それを次の記事でお話しします。


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