morina_3629

理系専門職。本を読んで考えたことなどを書きます。

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最近の記事

ハイゼ家百年 感想/一次資料で語られること、語られないこと

overall19世紀末以降、ある一家に遺品として残された手紙、写真、履歴書の下書き、作文など、一次資料のみで構成されたドキュメンタリー。ナレーター(監督)は淡々と資料を読み上げるのみで、映し出されるのは写真に加えて現代のドイツの映像。そこには解釈や説明は一切なく、見る側は提示されたものと、頭の中の歴史知識などを突合せて、この一家になにが起きているのか、ドイツになにが起きているのかを推理していくしかない。 そんな、まるで歴史学者のような気分が味わえる作品です。 第1章第1章

    • コルタサル「奪われた家/天国の扉 動物寓話集」感想

      アルゼンチンの怪奇小説家、フリオ・コルタサルの短編集です。南米文学は難解、というイメージが強かったのですが、たまたまに手に取ったらとんでもなく面白かったので、中でも気に入った「奪われた家」と「動物寓話集」について感想を書こうと思い立ちました。 1.奪われた家タイトル通り、奪われた家の話ではありますが、むしろそれは本筋ではなく、家を奪われる、というストーリーから垣間見える兄(語り手)と妹(イレーネ)の近親相姦的、同胞間恋愛的な関係が目を引く作品でした。 かつては大家族で住ん

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