新規事業とは?

はじめに

一言に「新規事業」と言っても、人それぞれのイメージや捉え方があると思います。
そのため、同じ内容であっても、『新規事業では無く既存事業の延長では?』と考える方と、『それは新規事業だね!』と考える方がいらっしゃると思います。
そこで、今回は、「新規事業」の考え方や定義を行っていきます。
この記事を全て読むと長いので、結論を先に書いておくと「ビジネスモデルが変化すること」が新規事業となります。
次回以降は、基本的に今回定義した新規事業の(=ビジネスモデルを変化させる)コツやポイントなどを発信して行きます!

新規事業の輪郭

繰り返しになりますが、同じ検討内容であっても、人によって既存事業の延長か、新規事業かの捉え方が変わります。
和食屋さんでの新メニュー開発を例にして考えてみます。
「新メニュー開発」なので、新規事業だ!という方もいると思います。
一方で、和食屋さんが、新しい創作和食を開発するのであれば、既存事業の延長じゃない?という意見も多い気がします。
また、和食屋さんが、フレンチのフルコースを開発する場合は、何となく新規事業っぽい!という意見が多くなると思います。

では、次に新車開発を例にして、もう少し考えてみます。
新車開発の場合、何となく既存事業の延長っぽいなぁと感じる方が多いと思います。
多分これは、新車開発≒モデルチェンジというイメージが強いからだと思います。
例えば、イタリアの高級車スポーツカーメーカーが、軽自動車やファミリー向けのミニバンを作る場合だと、何となく新規事業っぽい印象に変化すると思います。
また、トラックなどの商用車メーカーが、スポーツカーを作る場合だと、多くの人が新規事業という意見に変わると思います。

この二つの事例から、何となく「突飛さ」、「既存事業からの遠さ」が既存事業の延長か、新規事業かを分けるポイントになりそうです。

上記の様に多くの例を集めて、分類したり、新しい法則などを見つけたりする方法を、「帰納法」と呼びます。
少し整理すると以下の様な感じになります。

スライド1

∴(故に)既存事業から遠い(類似性が低い)物が新規事業であり、近い(類似性が高い)物は既存事業の延長と定義出来そうです。

少し脱線しますが、新規事業ではスピード感が非常に大事になります。
そのため、上記の様な大まかな(ざっくりな)整理でメンバーの共通認識が図れる場合は、それ以上掘り下げずに前に進んだ方が、新規事業の成功確率は高くなります。
一方で、ざっくりな整理では共通認識が図れない場合は、メンバー全員が共通認識図れるレベルまで掘り下げることをお勧めします。
掘り下げずに進めた場合、どこかのタイミングで大きな引っ掛かりが出来て、新規事業を成功させるのが非常に難しくなります。

既存事業からの距離感

さて、「既存事業から遠い物が新規事業」というところまでは定義出来ました。
しかしながら、どのぐらい遠かったら新規事業なのか?という距離感の定義も必要そうです。
この距離感を、企業の成長戦略として有名なフレームワークである「アンゾフ・マトリクス」を使って整理・定義していきます。

スライド2

1番目は、今持っている製品を現在お取引のあるお客さんに販売する「市場浸透戦略」です。
これは、マーケティングで言うアップセル(並、大盛、特盛等の様に複数の価格帯の商品がある時に、大盛や特盛などのより高い方を買ってもらうこと)や、クロスセル(サラダやドリンクなどのサイドメニューやオプションもセットで買ってもらうこと)なので、既存事業そのものです。
2番目は、今持っている製品を新しいお客さんに販売する「市場開拓戦略」です。
伝統的な営業方法では、ロングリストの上から順番に電話をかけるテレアポなどのイメージです。
これを行うと、10件のうち1件ぐらいの割合で「忙しいのに営業の電話なんてかけてくるな!ガチャ…ツーツーツー」と怒鳴られて、心がボキボキに折れます。。。
こんな感じで新しいお客さんと取引するのは大変ですが、これも既存事業です。
3番目は、新しい製品を作り、現在お取引のあるお客さんに販売する「製品開発戦略」です。(現在お取引のあるお客さんのために、新しい製品を作ることでもOKです。)
これは、冒頭で分類した通り、既存事業であったり、新規事業であったりします。
作る製品によって、変化する感じです。
4番目は、新しい製品を作り、新しいお客さんに販売する「多角化戦略」です。
これは、想像しただけでも、相当大変です。
「新規事業は失敗の連続」と良く聞くパターンは、大体この多角化戦略です。
整理すると以下の様な感じになります。

スライド3

∴製品開発の一部と多角化が、既存事業からそれなりに遠いので、新規事業であると定義出来そうです。

因みに、この様な整理を行うと「海外展開は、市場開拓になると思うけど、新規事業じゃないの?」という疑問が湧くと思います。
確かに市場開拓なのですが、実際は、現地法対応や、生活・文化に合わせた製品のローカライズを行わないと売れないのが実態です。
そのため、海外展開の多くは「多角化」に分類されると捉えた方が良いと思います。
有名な事例として、ユニ・チャームさんが販売している紙おむつの「マミーポコ」が挙げられます。
日本では、30~50枚程度(新生児用だと100枚弱ぐらい)の大容量パッケージでの販売が多いと思います。
大容量だとスケールメリットが出るので安くなる上、買いに行く手間も削減出来るため、日本市場では好まれます。
一方で、数年前の東南アジアでは、取っ払い(給料の当日払い)が多いという事情もあり、高単価商品が買われにくいという市場特性がありました。
そのため、おむつ1個あたりの単価は高くなるが、1回の購入金額が低くなる個包装にパッケージの変更がなされています。
この様に、海外展開の場合、ただ単に市場開拓を行うだけでは無く、製品開発もセットで行う必要があります。
そのため、最終的には「多角化」になっていく事が多くなります。

製品開発の分類

製品開発の一部と多角化が新規事業だというところまで定義が出来ると、多くの方との共通認識が図れると思います。
そのため、実務上は、今回の新規事業は「製品開発」で行く、もしくは「多角化」で行くという方向性を決めて走り始めることになります。
しかし、せっかくなので、既存事業となる製品開発と、新規事業となる製品開発の距離感も定義してみます。
そこで、次も、比較的有名なフレームワークである「バリューチェーン」で考えてみます。

スライド4

上の4つ(全般管理、人事・労務管理、技術開発、調達)を支援活動と言います。
会社で言うと、法務部、経理部、人事部、総務部、企画部、研究開発部門などがここに該当します。
下の5つ(購買物流、製造、出荷物流、販売・マーケ、サービス)を主活動と言います。
会社で言うと、調達部、製造部、営業部などがここに該当します。
ここでは、「主活動」のみに着目します。
また、主活動は主に製造業をイメージしてフレームワーク化されています。
そのため、飲食業や、金融、サービス(教育、宿泊、ITなど)などでは、馴染みが無かったり、違和感があったりする流れになっています。
そこで、購買物流を「原材料・技術」、製造、出荷物流を「製品ライン」、販売・マーケ、サービスを「販売チャネル」というフレームワークにします。
以下の図をご覧頂くと、イメージが湧くと思います。

スライド5

さらに、製品開発という観点から、「原材料・技術」と「製品ライン」の2つのみに着目します。
冒頭で定義した「既存事業の延長」と「新規事業」の例を、このフレームワークに当てはめてみると以下の様な感じになります。

スライド6

∴片方のみが変化する製品開発は既存事業、両法変化する製品開発からが新規事業という定義が出来そうです。

まとめ

ここまで定義してきた内容をまとめると、以下の様な感じになります。

スライド7

これを言葉で説明すると、コストドライバー及び利益ドライバーが変化する時が新規事業になると言えます。
つまり、一言で言うと「ビジネスモデルが変化することが新規事業」となります。
そのため、今後はビジネスモデルが変化する、6~8の内容を中心に情報発信を行っていきます。

著:NS.CPA森本 晃弘

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