【遊戯王】格ゲー好きがVS(ヴァンキッシュ・ソウル)を愛でるだけの記事【格闘ゲーム】
先日、遊戯王マスターデュエルに新テーマ『VS(ヴァンキッシュ・ソウル)』が追加されました。
このVS、僕の大好きな格闘ゲームをモチーフにしているとのこと。この記事では格ゲー好きの観点から、VSカードが格ゲーのどのような要素を反映・再現しているのかを考察(妄想)していきたいと思います。
※この記事は攻略記事ではありません。これを読んでも遊戯王が強くなったり、VSデッキの回し方が理解できるようにはなりません。ただ書きたいから書いているだけですが、「VSデッキは好きだけど格ゲーはわからない」という人が楽しめる記事になったらいいと思います。
・VSという格ゲーについて
格闘ゲームとは(基本)2人で対戦するアクションゲームです。互いに1キャラを操作して攻防を続け、先に相手の体力を0にしたほうが勝ちます。
VSは「タッグマッチのように入れ替わって~」とあることから複数キャラでチームを組んで、戦況を見ながらリアルタイムに操作キャラを交代しつつ戦うゲームのようですね。この手のゲームでは「MARVEL VS. CAPCOM」シリーズ・「ザ・キング・オブ・ファイターズⅪ(KOF11)」・「ドラゴンボールファイターズ」などが有名です。
VS(ヴァンキッシュ・ソウル)は文字通りVS(ブイエス、バーサス)のもじりで、格闘ゲームのタイトルにもよく使われる単語です。(Granblue Fantasy Versus・MARVEL VS. CAPCOMシリーズなど) 「versus」は「~対・~に対して」を表す前置詞とのこと。
おそらく「ヴァンキッシュ・ソウル」自体がこのゲーム?のタイトルなんでしょう。ヴァンキッシュ(vanquish)は「征服する・打ち負かす・克服する」と対戦ゲームにピッタリな単語。
モンスター名は「VS ◯◯」の表記で統一されていて、相手モンスターと並べると「ブラック・マジシャン VS ラゼン」のようになるのがオシャレ。
格闘ゲームはボタンを押して攻撃を繰り出しますが、それを手札の属性に見立てていることが上記の説明からわかります。よくある「弱・中・強」攻撃ボタンの代わりに、「炎・地・闇」の属性の組み合わせで技を出せるようです。
・VS ラゼン
このVSの主人公ポジションのキャラでしょう。星4・戦士族・攻撃力1800と遊戯王テーマの顔的なステータスを兼ね備えています。
炎属性は格闘ゲームのみならず主人公に多い属性ですね。格ゲーでいうと「ザ・キング・オブ・ファイターズ」シリーズの草薙京、「ギルティギア」シリーズのソル・バッドガイなどが代表的な炎使いの主人公です。
効果①はVSモンスターのサーチ。これはテーマエースにありがちな効果ですが、自身が含まれる戦士族はサーチできません。おそらくストリートファイターシリーズの有名なキャッチコピー、「俺より強い奴に会いに行く」を意識した結果でしょう。
ラゼン以外のVSモンスターは全員攻撃力・守備力のどれかがラゼンを上回っているのが芸が細かい。(攻守0のVS プルトンHGは効果使用で上回る )
効果②は効果破壊耐性と相手モンスターの破壊の二択をフリーチェーンで選択できます。
この二択というのも格ゲーらしい要素です。
格ゲーは「打撃」と「投げ」の二択を軸に戦うゲーム。打撃にも、立ちガードに効く「下段」としゃがみガードを崩せる「中段」があり、「択攻め」とは切っても切り離せません。
「波動拳(飛び道具)を避けてジャンプしてきた敵を昇龍拳(対空技)で迎撃する」、いわゆる「飛ばせて落とす」に代表されるように、リアルタイムで相手の動きを見極め、思考を読み取り、最善の選択肢を取るのが格ゲーです。
相手ターンにも発動できる「フリーチェーン」の「二択」はVSモンスターが共通で持つ効果。
格ゲーのフレーバーをカードゲームに落とし込んでいて本当にすごいと思います。
効果破壊耐性は格ゲーでいう「スーパーアーマー」・「ガードポイント」の再現でしょう。細かい違いはありますが、どちらも相手の打撃を受け止めながら攻撃できる状態です。共通して「投げ」には無力な点も、「破壊されないがバウンス(手札に戻す)などはされる」という耐性の穴で再現しています。
もうひとつはスタンダードな破壊効果。自身の正面に及ぼす効果というところで、対面で戦う格闘ゲームっぽさが出てます。
・VS 螺旋流辻風(ダストデビル)
VSモンスターの固有効果が格ゲーにおける「必殺技」なら、速攻魔法・罠カードは「超必殺技」(超必)でしょうか。必殺技よりも性能が高いけど、使用するためには別途超必殺技ゲージなどのリソースを消費する技のことです。そのリソースをモンスター以外のカード消費で再現しているものと思われます。
また速攻魔法・罠カードともに相手ターンにも発動が可能なので、ここでも格ゲーのリアルタイム操作は意識されています。
ラゼンくんの超必殺技ということで、彼が「螺旋流」という流派に属していることがわかります。KOFの草薙京、龍虎の拳のリョウ・サカザキなど拳法家の格ゲーキャラは多いです。
上に向かって足を突き出しているので「対空技」だと思われます。有名な「昇龍拳」に代表される、空中の相手を落とす必殺技ですね。ジャンプ攻撃に対する無敵がついていることが多く、飛んでくる相手に対する信頼度は高いです。
自分モンスターの向きを変更するテキストは「コマンド入力」を意識していそうです。格闘ゲームの必殺技はレバー(キー)入力とボタンの組み合わせで出すことが多く(昇龍拳なら「→↓\(右下)+P」)、入力によってキャラが動くのでその再現ですね。
対空されたキャラは多くの場合ダウンして攻守が切り替わるので、裏側守備表示になるのはそれを表していると思われます。
あとそんなでかい得物を握ってるのにそっちで殴らんのかいと思うでしょうが、両手のアレはブースターのようなものらしいので・・・
インターネット老人なら「トンファーキック」で通じるやつかもしれません。一応、格ゲーにもトンファーキック的な技はあります。
・VS Dr.マッドラヴ
ヒロインポジションの女キャラっぽいですが、イラストを見るかぎり医者、もしくは科学者です。この属性のキャラにはギルティギアのファウスト、ブレイブルーのココノエなどがいます。
主人公タイプのスタンダードな性能とは異なり、搦め手で攻めてくることが多いキャラ付けです。ファウストならランダムで様々な効果を持つアイテムを投げつけてきたり、ココノエなら重力と斥力を切り替えて自他の動きを制御したりですね。素の攻撃力が低めで防御力が高めなのが、ひねくれた性能を持ってる感を出しています。
効果①の魔法・罠カードサーチは主人公であるラゼンと対をなしている点でヒロインポジションらしくもありますが、特殊な効果を持つガジェットを使って戦う科学者キャラの印象からでしょうか。
効果②の闇・地のバウンス効果でモンスターの守備力を参照しているのが、一筋縄ではいかない感じがして個人的にかなりのお気に入りポイント。
相手のステータスを下げるデバフ効果も、格ゲーではたまに見かけるものです。ドラゴンボールファイターズの人造人間21号(白衣)という科学者キャラは、相手の攻撃力を永続的に(その名の通り)21%下げる超必殺技を使い、環境で猛威を振るいました。
・VS パンテラ
獣人系のキャラクターです。格闘ゲームでは多くの場合、スピードが早く相手を翻弄する動きを持つ属性です。代表的なキャラはストリートファイターのブランカでしょうか。(獣人ではなくれっきとした人間ですが・・・)
攻撃力がラゼンより低いのも、スピードタイプにありがちな調整です。
このカードが一番わかりやすいですが、VSモンスターのイラストには背後にキャラを拡大した絵が描かれてますね。これは格ゲーで超必殺技などを発動する際に挟み込まれるカットイン演出を意図してそうです。
脱ぎ捨てられたマント、そしてムエタイっぽいポーズからストリートファイターシリーズのサガットを連想してしまいます。かつてのムエタイの帝王で主人公リュウのライバルキャラですね。サガットの技構成はリュウと似通っており、パンテラも効果②が主人公のラゼンと似ています。
効果①はモンスターがいない場合の特殊召喚。チーム制の格ゲーではキャラが倒されたあと控えのキャラがステージに躍り出るという流れが一般的で、それを再現している可能性があります。もしくは試合開始時に一番最初に出す、いわゆる「先鋒」向けのキャラ性能をしているのかもしれませんね。
効果②の魔法・罠破壊は自分フィールドのものも破壊されます。自分の後ろにも効果が及ぶのは、キャラクターの位置の入れ替えがよく起こる格闘ゲームらしくていいですね。
もしくは、ジャンプ攻撃の後ろの判定で相手のガードとは逆の方向を攻撃する「めくり」を意識しているのかもしれません。
関係ないと思いますが、「パンテラ」という格闘ゲーム用のアーケードコントローラーが発売されています。
・VS 蛟龍(ジャオロン)
後述する罠カード「VS 裏螺旋流雪風」の存在から主人公のラゼンとは螺旋流の同門であると思われます。属性も同じ炎。ステータスがラゼンくんより高いので兄弟子か師匠的なポジションかもしれません。
名前の「蛟龍」は龍の幼体とのこと。VSのボスキャラ「VS 龍帝ヴァリウス」がドラゴン族でこちらは幻龍族。KOFシリーズのクリスというキャラクターはKOF97のラスボス・オロチの依代でしたが、似たような関係なのかもしれません。クリスとは主人公と同じような技を使う点でも共通しています。
効果①は場のVSモンスターが効果(技)を発動した場合の手札からの特殊召喚。チーム制の格闘ゲームに多く採用される「アシスト(ストライカー)」でしょう。
控えのキャラクターがステージに乱入し、何かしらの技を放つシステムです。主な使い方としては全体動作の長い技に合わせてアシストを呼ぶことで隙をカバーしたり、攻撃がヒットした相手にアシストによる追撃を加えることで連続技を伸ばしたり。この効果をバトルフェイズに使うことで格ゲーと同じように連撃を加えることができます。
効果②の「炎・炎」ではVSカードのサーチが可能。ラゼンくんよりも対応範囲が広いことからも、同門の上位存在であることが伺えます。
「炎」の表示形式変更効果ですが、相手の向きを変える=ガードさせると考えると、手に持った長い得物で遠距離から相手にガードを強いるイメージでしょうか。
ストリートファイターのダルシムに代表される遠距離キャラは、長いリーチで相手の技が届かない距離から牽制を当てることができます。VSモンスターながら正面の相手だけではなく、モンスターゾーンのどこにでもに効果を及ぼせるところに遠距離キャラのフレーバーが感じられます。
・VS 裏螺旋流雪風(スノーデビル)
「デビル」繋がりからもラゼンくんと同門であることがわかりますが、「雪風(スノーデビル)」ということは冷気系の技でしょうか。この手の遠距離キャラは相手を近づかせない戦い方をするため、「寒い動き」と揶揄されることが多いです。
「裏~~」とつくのは、格ゲーでよく見るネーミングです。代表例は草薙京の「裏百八式・大蛇薙」ですね。同じ系統で「外式・百合折り」や「禁じ手・昇龍拳」など、同じ拳法の技でも破壊力がありそう感が出まくる名付けです。
効果は手札公開した属性の数によって強くなっていきます。属性をボタンに見立てているVSなら、これはいわゆる「追加入力」に対応した超必殺技ということでしょう。餓狼伝説シリーズのボスキャラ・ギースの「デッドリーレイブ」のように、技のモーション中にタイミングよくボタンを押すことで攻撃が追加され威力が上がっていく技です。
・VS プルトンHG
不定形のキャラクターです。初期の「格闘」がモチーフだったころの格ゲーにはいませんでしたが、ジャンルが定着して様々な世界観のゲームが生まれるのなかでこのようなキャラも出てくるようになりました。有名なキャクターでいえばブレイブルーシリーズのアラクネでしょうか。
キャラ性能がスタンダードであることはほとんどなく、色物な見た目通りのトリッキーな性能であることがほとんどです。簡単には動かせず、勝つためには熟練が必要な上級者向けのキャラ。このカードも通常召喚できない星6・攻守0というステータスでその辺のフレーバーを表現しています。
効果①の特殊召喚も相手ターン限定ということでトリッキーさが伝わってきます。もしくは、(アラクネのイメージに引っ張られるようですが)ワープや透明化などの技を持っているのかもしれません。
格ゲーにおいてはどちらも強力で、相手を幻惑し奇襲することができる点が「相手ターンの特殊召喚」という形で表現されているのかも?
効果②は攻撃力か守備力を3000ポイント強化するもの。これによってすべてのVSモンスターのなかでも最大のステータスを得ることができます。
この手のキャラはハマれば強いけど負けるときは何もできずに終わるといった極端な試合になることが多く、そういったピーキーさを表現していると思われます。
・VS ヘヴィ・ボーガー
格ゲーモチーフでこの巨体。いわゆる「デカキャラ」。効果を併せると「投げキャラ」で間違いないでしょう。「コマンド投げ」という投げ外しができない高威力の投げ技でダメージを稼いでいきます。
元祖はストリートファイターシリーズのザンギエフ。以降投げキャラはこのイラストのように巨漢に割り当てられることが多く、そのイメージから打撃の攻撃力も高く設定されています。
防御力が低めなのは、相手の攻撃を切り返すための技が薄く守勢には弱い投げキャラの宿命を意識したのでしょうか。
効果①は場のVSモンスターと交代する能力。チーム制の格ゲーでも同じように操作キャラを控えのキャラと交代するシステムがあります。体力の減ったキャラをいったん下げて控えで回復させたり、対面と相性のいいキャラにチェンジしたり。
効果②はドローとダイレクトダメージの二択。
ダイレクトダメージは相手のガードを無視して大ダメージを与える格ゲーの投げ技を再現したものでしょう。
投げ技は基本的に近い距離の相手を「引き寄せて」放つものなので、ドロー効果はこの「相手を引く」と「カードを引く」を掛けているのかもしれません。
・VS 龍帝(カイザー)ヴァリウス
星8・VSモンスター中最大の攻撃力・強力な効果。VSにおける「ボスキャラクター」ポジションだと思われます。
防御力が意外なほど低いですが、これはボスキャラクターがプレイアブルになる際によく受ける調整の再現でしょうか。
ボス性能の攻撃力はそのままに、体力が一般のキャラより低く設定されていてゲーム内のバランスを取っています。
効果①はヘヴィ・ボーガーと同じ交代能力です。メインフェイズ時限定なのは「バトルフェイズ中=自キャラが攻撃を食らっているときは交代できない」という基本的なルールの再現でしょうか。
効果②は完全耐性の獲得とフィールドカードの破壊。
完全耐性は格ゲーでいう「無敵」でしょう。「アーマー」や「ガードポイント」のほぼ上位互換であり、相手の攻撃をすべて無効にします。
効果破壊能力もラゼンやパンテラのほぼ上位互換。ボス性能の強力さを感じさせます。
・VS 龍帝ノ槍(カラミティ・カイザー)
カウンター罠・相手の効果発動を無効・返しにダメージと格ゲーの「当て身技」をモチーフにしたものでしょう。
「当て身」とは実際の意味とは異なり、格ゲー界隈で「カウンター技」のスラングとして使われているものです。すべての元祖は餓狼伝説のボス・ギースの「当て身投げ」という技です。
まず構えを取り、その構え中に相手の攻撃を受け止めるとカウンター攻撃が発動して相手にダメージを与えます。このカードは見事にそのプロセスを再現していますね。
・闘神の虚像(ロック・オブ・ヴァンキッシャー)
モンスターカードですがVS名称も攻撃力を持ちません。おそらくVSの世界観を表すカード、格ゲー的にいえば「対戦ステージ」でしょう。
効果①の対戦相手に強者との戦いを強いる効果、②のVSモンスターサポートなど、格ゲーステージとしての「場」の側面が強調されています。
・Stake Your Soul!
僕が一番好きなカードです。あまりにかっこよすぎて初めてマスターデュエルでプロテクターを買ってしまいました。真ん中の迅雷エフェクトが「VS」ってなってるのがオシャレ。
イラストのモチーフは対戦前の画面です。多くの格ゲーでキャラクターの顔が大写しになって向かい合います。
カードの効果はこの画面に入る前の使用キャラクター選択でしょうか。カード名は説明文から察するに対戦前のラウンドコール。「Steak Your Soul! READY!!」と掛け声が入って対戦が始まるんでしょうね。
このラウンドコール、スト2では「Round1! Fight!」とシンプルなものでしたが格ゲーが増えるに連れ、独特なものが増えてきました。VSはそっちの系列ですね。
・VS トリニティ・バースト
これはキャラ単体の超必殺技ではなく、チーム制格ゲーにおける「ディレイド」に類する共通システムでしょう。
「ディレイド」とはMARVEL VS. CAPCOM 2の「ディレイドハイパーコンボ」が元になった言葉で、操作キャラが超必殺技を撃ったあと、続けて控えキャラが出てきて超必を放つことができるシステムです。
上記シリーズの他、ドラゴンボールファイターズや2on2のブレイブルークロスタッグバトルなどでも類似のシステムが搭載されており、総じて「ディレイド」と呼称されています。
最大3人分の超必殺技が撃てて、アシストで呼び出されている相手キャラクターにもダメージは入るため、最大3キャラをKOすることができるわけですね。
・VS コンティニュー
カード名の通りコンティニュー画面です。
格闘ゲームのアーケードモードではCPUや乱入相手に負けるとこういった画面に移動します。ゲーセンでの対戦なら時間内にクレジットを支払うことで再戦ができます。500LPが1クレジットというわけですね。
再戦時にはキャラクター選択画面に戻るため、キャラを変えてもいいしそのまま続行もできます。細かいところまで再現が行き届いたテキストです。
・終わりに
最高ですね、VS。ここまで格ゲーのシステムや攻防、あるあるをカードゲームに落とし込んでるのがすごいです。
デッキ自体の動きも、相手カードとの位置関係や手札の属性の種類、フリーチェーンゆえの効果発動のタイミングなど自ターンにも相手ターンにもたくさん考えることがあるので使っててすごく楽しいテーマです。
格ゲー好きでVSデッキを使ったことがない方、オススメです。またVS好きで格ゲーのことをよく知らないという方、この記事を読むことでよりVSに対する理解を深められたらいいなと思います。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。
森本市夫
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