騎士団長殺しを読みながら

小説を読むときはブラック珈琲を入れてから。
私はカップを出し、ドリッパーにペーパードリップをセットし、モカの粉を1杯半入れてお湯を注いだ。
珈琲は障害者施設から購入したものだが、なかなか味わい深い。
私は椅子に座りながら、読み進めていた文庫本を開いた。
村上春樹の騎士団長殺し。
彼の文体は以前読んだIQ84の3人称から1人称に戻っていた。
私としては彼の一人称の文体も好きだが、以前の三人称の文体もなかなかに味わい深いものだった。
画家の主人公の視点から奇妙な体験。そして現実世界と非現実世界の隙間にはまる感覚。
彼の文章を読んでいると僕のある器の中にドボドボと何かが注がれるのが分かる。
その何かが一定割合溜まると私は文庫を閉じ、珈琲を飲み文章リズムを体に刻み込むのだ。
リズムが体に整うまでにほんの少し時間がかかる。
それからまた文庫を開き読みだすのだが、この溜まるモノは一体何なのだろう。
この不可思議な狭間に私も落ちて現実世界から遠く僕を引き離すものとなる。
主人公が内へと潜るほど、私自身も内へと潜ることになる。

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