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手を動かして身につける!――近刊『例題で学ぶ材料力学』まえがき公開

2022年7月下旬発行予定の新刊書籍、『例題で学ぶ材料力学』のご紹介です。
同書の「まえがき」を、発行に先駆けて公開します。


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まえがき
本書は、大学および高専の機械工学系学科で開講されている材料力学の教科書、もしくは設計を業務とするエンジニアの参考書として執筆したものである。材料力学の基本的な事項に対し、図や例題を数多く取り入れてわかりやすく内容を記述し、設計の現場でも役立つよう具体的な問題を数多く取り上げている。

材料力学は、いうまでもなく機械工学の中心をなす基礎科目の一つであるが、近年、有限要素法(FEM)などの計算力学的なツールによる構造強度解析が容易になり、その必要性はますます高まってきている。現代は、解析条件を設定してFEMを用いてコンピュータによる構造計算を行うと即座に答えが得られる便利な時代になっている。一方、FEMでは、適切な境界条件を設定しないと現実的ではない解が生じ得るが、この誤りは非常に気づきにくい。しかしながら、材料力学の知識があればFEMの結果の奇妙さに気づき、適切に対処することが可能である。このため、コンピュータによるシミュレーションが隆盛を極める現代においても、材料力学は以前にも増して重要な位置を占めることは論をまたない。以上の点を踏まえ、執筆に際しては、以下の点に配慮した。

(1) 取り上げた項目には例題を配置して、その場で理解が深まるようにした。
(2) 初等的な微分積分学、線形代数学で理解できるようにした。
(3) 各章末には精選した演習問題を配置し、問題を解くことによって真の理解が深まるようにした。
(4) 自学自習がスムーズに進められるよう、演習問題に対しては詳細な解答を示した。
(5) 国際標準の技術者教育認定制度(JABEE)などへの対応として、英語による例題や問題を配置した。

学習の成果を上げるために予習や復習が重要であるが、この自学自習を促すために、本書では他書に比べてかなり詳しい解答をつけている。また、式の導出についても丁寧な記述を心がけた。これらは冗長に思われるかもしれないが、理解が及びにくい点を自力で解決できるための手がかりとなってほしいという著者の希望の現れである。ただし、逆説的な言い方になるが、どうしても解決の糸口が見つからない場合だけに、解答を参照してほしい。はじめから解答に頼ってしまうことは学習に有害となることに注意されたい。

執筆中に常に念頭にあったのは、近年の日本の技術力の低下、および基盤技術が軽視される風潮への懸念である。本書を読むであろう若い学生やエンジニアの皆さんが今後の日本の工業界を担うには、応用に過ぎずに基本的なことを深く理解することが必要である。そのことを絶えず意識して内容を記述したつもりであり、本書が先に示した懸念を少しでも払拭することに役立つのであれば、著者の望外の喜びである。他方、著者の非才のために誤った記述や内容に不整合があることを危惧している。それらの点に気づいた場合には、読者の皆さんからの遠慮のないご叱正を期待する。

(以下略)
 
 
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著:堀辺 忠志(茨城大学 名誉教授)

◆手を動かして、基礎力を身につける!◆

豊富な例題を通して学べるテキストです。図を数多く取り入れながら、わかりやすい説明がなされています。
演習問題には、設計の現場でも役立つよう具体的なものを数多く取り上げ、詳細な解答をつけています。
また、国際標準の技術者教育認定制度(JABEE)などへの対応として、英語による問題も掲載しています。
 
学生の教科書としてだけでなく、エンジニアの参考書・自習書としてもお使いいただけます。


【目次】
第1章 応力とひずみ

 1.1 応力とひずみ
 1.2 応力ひずみ線図
 1.3 許容応力と安全率
 演習問題

第2章 引張りと圧縮
 2.1 不静定問題
 2.2 トラス
 2.3 熱膨張,熱応力
 2.4 遠心力
 2.5 棒の自重による伸び
 2.6 平等強さの棒
 演習問題

第3章 軸のねじり
 3.1 丸棒のねじり
 3.2 ねじりの不静定問題
 3.3 伝動軸
 3.4 中空丸軸
 3.5 非円形断面棒のねじり
 3.6 コイルばね
 演習問題

第4章 断面の性質
 4.1 図心,断面2次モーメント
 4.2 平行軸の定理
 4.3 断面2次極モーメント
 演習問題

第5章 はりのせん断力と曲げモーメント
 5.1 はりの種類とはりに作用する荷重
 5.2 せん断力と曲げモーメントの符号
 5.3 単純な分布荷重を受けるはりのせん断力と曲げモーメント
 5.4 複数の荷重を受ける単純支持はり
 5.5 任意の分布荷重によるせん断力と曲げモーメント
 5.6 荷重,せん断力および曲げモーメントの関係
 演習問題

第6章 はりの応力
 6.1 はりに生じる曲げ応力
 6.2 断面係数
 6.3 平等強さのはり
 6.4 はりのせん断応力
 演習問題

第7章 はりのたわみ
 7.1 はりのたわみ方程式
 7.2 片持はりのたわみ
 7.3 単純支持はりのたわみ
 7.4 せん断力によるたわみ
 演習問題

第8章 はりの複雑な問題
 8.1 たわみ方程式に基づく不静定はりの解析
 8.2 重ね合わせ法に基づく不静定はりの解析
 8.3 連続はり
 8.4 組合せはり
 8.5 断面相乗モーメントと断面の主軸
 8.6 非対称曲げを受けるはり
 演習問題

第9章 ひずみエネルギー
 9.1 単軸応力状態におけるひずみエネルギー
 9.2 相反定理
 9.3 カスティリアノの定理
 9.4 最小仕事の原理
 9.5 衝撃応力
 演習問題

第10章 組合せ応力
 10.1 3次元の応力,ひずみ成分
 10.2 主応力と主せん断応力
 10.3 モールの応力円
 10.4 薄肉圧力容器
 10.5 弾性係数間の関係
 10.6 曲げとねじりを受ける軸
 演習問題

第11章 柱の座屈
 11.1 弾性座屈とオイラーの公式
 11.2 座屈の実験式
 11.3 偏心圧縮荷重を受ける長柱
 演習問題

付録A 数学公式
付録B 各種はりのたわみおよびたわみ角
付録C 各種断面の断面2次モーメントほか
付録D 各種工業材料の機械的性質(常温)
付録E ギリシャ文字一覧

演習問題解答
参考文献
索引

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