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モータ制御エンジニア必携! 近刊紹介:『ACモータ可変速制御システムの理論と設計』

モータ制御エンジニアの必携書、待望の復刊です。

5月刊行予定の『ACモータ可変速制御システムの理論と設計』は、1990年に総合電子出版社から発行され、好評を博していたものの長らく絶版だった『ACサーボシステムの理論と設計の実際』が全面改訂されたものです。

本書では、モータの基礎から制御理論の導出、動作波形まで、幅広く丁寧に解説されています。また、ベクトル制御理論だけでなく、PWM制御のためのインバータ、センサなど、システム設計のために理解が欠かせない周辺技術についても紙面を割いていることが特徴です。

今回の改訂では、従来扱われてきた表面永久磁石形同期モータ(SPMSM)、誘導モータ(IM)に加えて、埋込永久磁石形同期モータ(IPMSM)の制御や、それぞれのモータのセンサレスベクトル制御について、大幅に増補されました。

ACモータの制御にかかわるエンジニアの方は、ぜひ手にとってみてください。

発行に先駆けて、本書の「まえがき」を公開します。

※本書の発売は2020年5月末を予定しています。

ヘッダ


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『ACモータ可変速制御システムの理論と設計』まえがき

杉本英彦(編著)、小山正人・玉井伸三(著)

ACモータの可変速制御システムは、電力変換制御装置、ACモータおよびセンサからなるが、製品化初期の約40年前と比べてそれぞれ大きく進歩した。電力変換制御装置については、それを構成するパワー半導体デバイスの高速スイッチング化技術、低損失化技術および実装技術(たとえばモジュール化)が現在も進歩し続けており、電力変換制御装置の小型化等に寄与している。また、マイクロコンピュータで代表されるマイクロエレクトロニクスの高速化技術、大規模集積化技術および通信技術もなお進歩が続いており、電力変換制御装置の高機能化、利便性の向上、小型化に寄与している。

制御理論、制御技術、フィルタ技術も進歩し続けており、ACモータの高精度制御、高速応答制御、角速度センサレス技術に寄与している。これらは、電力変換制御装置が使用される装置の高性能化、高機能化に貢献しているとともに、その応用範囲を広げている。

ACモータでは、新しく埋込永久磁石形同期モータ(IPMSM)が製品化され、高効率化や広い定出力制御範囲の実現という進歩をもたらした。従来から使用されていたかご形誘導モータ(IM)は、省エネルギーの要求から高効率化が推し進められ、その適用が広がっている。また、表面永久磁石形同期モータ(SPMSM)は従来の分布巻きに加えて集中巻きが採用されるようになり、小型化が進められている。埋込久磁石形同期モータや表面永久磁石形同期モータでは、高温で使用可能で可逆減磁範囲が広い永久磁石の製品化も、これらのモータの進歩に大きく貢献した。

センサのうち、角度、角速度センサでは、光学式エンコーダが使用できない悪環境で使用できる、構造が簡単なVRレゾルバが製品化され、電気自動車駆動に使用されている。光学式エンコーダでは高分解能化が著しく進み、精密位置制御に貢献している。また、電流センサでは、ホール素子を用いた電流センサに加えて、オフセットに強いフラックスゲート形電流センサが製品化されている。電流センサ出力はアナログ信号であるので、ディジタル信号に変換するために従来から使用されている逐次型ADコンバータのほかに、∆Σ型モジュレータとsincフィルタでAD変換する∆Σ型ADコンバータも製品化されている。後者ではシャント抵抗で電流を電圧に変え、∆Σ型モジュレータの回路中のフォトカプラで絶縁するものもある。

このように大きく進歩したACモータの可変速制御システムは、製品化初期の油圧駆動を電気駆動に、あるいはDCモータの可変速制御をACモータの可変速制御に変えようとしていた時代を超えて、ACサーボのみならず、電気自動車駆動も含めて、あらゆる可変速制御へ応用が広がっている。

本書では、表面永久磁石形同期モータ(SPMSM)、埋込永久磁石形同期モータ(IPMSM)およびかご形誘導モータ(IM)について、3相交流で表される回路方程式を示すとともに、それから直交2軸のdq座標で表される状態方程式を導き、各モータの電圧、電流をd軸、q軸の直流電流で扱い、ベクトル制御してトルク制御する方法を導いている。また、各モータの角速度センサレス制御についても、dq座標で表される状態方程式とその規範モデルの状態方程式との誤差状態方程式に基づいて導いている。

さらに、電力変換器を設計製作するうえで必要なトランジスタのスイッチング時の挙動について述べる。また、センサについては、レゾルバ、VRレゾルバを単に出力電圧から扱うのではなく、回路方程式の導出、入力電圧と出力電圧の関係、出力電圧から角度、角速度情報を検出する方法まで述べている。光学式エンコーダについては高分解能化する利点等について述べる。

角速度制御系の設計については、目標値追従性と外乱不感性に対応する制御系設計法や、機械系が低剛性である場合の設計法等を述べる。また、位置制御系については、サーボ剛性、1軸および同時2軸直線運動追従性や円弧運動追従性について述べる。

ACモータの可変速制御システムもディジタル制御系として構成するのが一般的であるので、ディジタル制御系を構成するうえで必要な基礎的な事項を説明するとともに、ディジタル速度制御系の周波数特性とステップ応答の関係やサンプリング周期の設定を含む具体的なことについても述べる。

【著者紹介】
杉本英彦(編著):福井大学名誉教授、工学博士
小山正人(著):金沢工業大学教授、博士(工学)
玉井伸三(著):東芝三菱電機産業システム技監、博士(工学)

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『ACモータ可変速制御システムの理論と設計』
杉本英彦(編著)、小山正人・玉井伸三(著)

表面永久磁石形同期モータ(SPMSM)、埋込永久磁石形同期モータ(IPMSM)、誘導モータのそれぞれについて、モータ・ベクトル制御の基礎からセンサレス制御まで丁寧に解説。

また、制御理論だけでなく、PWM制御のためのインバータ、センサ、角速度・位置制御、ディジタル制御など、システム設計の際に必要となる事項についても詳しく扱っています。

制御システムの全体像を理解できる、ACモータの制御エンジニアにおすすめの1冊です。

※本書は、1990年に総合電子出版社から発行された『ACサーボシステムの理論と設計の実際』を全面改訂したものです。

【目次】
第1章 ACモータの可変速制御システムの概要
第2章 ACモータの回路方程式、トルクおよび運動方程式
第3章 電力変換回路 ―3相電圧形PWMインバータ
第4章 ベクトル制御永久磁石形同期モータ(SM)
第5章 ベクトル制御誘導モータ(IM)
第6章 ACモータ可変速制御システム用センサ
第7章 角速度制御系および位置制御系の設計
第8章 ACモータのディジタル制御系

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