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【物理出身の編集者より】手計算への誘い――『格子振動と構造相転移』



刊行したばかりの新刊書籍『格子振動と構造相転移』につきまして、編集者より本書をご紹介いたします。

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先生からご提案いただいたときは

 「いまではあまり聞かないテーマだな」
 「どのくらい研究者がいるのかな」

というのが第一印象。もともと物理の専門書の読者は限られるのに、どのくらい多くの人に興味をもってもらえるのだろう…
(石橋先生、ごめんなさい)

強誘電体や強弾性体については(もちろん)素人なので、

 「専門家しか知らないような高度な理論が展開されるのかな」
 「物質固有の構造や観測値をもとに第一原理的な数値解析をするのかな」

と勝手に思っていました。

ところが話をよく聞いてみると、実は結構おもしろい。出てくるのは「格子模型」「格子振動」「群論」など、物性物理の教科書でよく目にする単語ばかり。しかも、高度な理論や数値解析ではなく、あの「ランダウの相転移理論」!

つまり、

  • 単純な模型

  • オーダーパラメータを導入して

  • 自由エネルギーを仮定すれば

  • いくらかの手計算

構造相転移の本質をつかめる、ということなのです!

確かに、いまは計算機シミュレーション全盛の時代。コンピュータなら複雑な計算だってやってくれるし、定量的評価だって得意です。手計算をする機会は減ってきているかもしれません。せっかく学んだランダウ理論も、教科書に出ているイジング模型でしか扱ったことがない人も多いでしょう。

そんなときこそ!
本書を読み、手を動かしてみませんか?

手を動かすことで“見えてくる”ことが多々あるでしょう。興味や研究テーマが構造相転移とは多少離れていてもいいじゃないですか。

モデル化のセンス、手計算のテクニック、本質を見抜く慧眼…
きっと何か得るものがあるハズです。

最後に、著者の石橋先生について少し。
実は「ランダウ・リフシッツ理論物理学教程 物理的運動学」の翻訳(共訳)をされた方。物性論以外にも広い興味をおもちのようですが、とくに「構造相転移」分野の酸いも甘いも知り尽くした第一人者です。

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名古屋大学 名誉教授 石橋 善弘(著)

物性研究において登場する結晶の構造相転移現象について、モデル化と解析法を豊富な具体例とともに詳しく解説した待望の書籍。

本書では簡単な格子モデルから始めて、難解なイメージがある構造相転移現象をできるかぎりわかりやすく、丁寧に説明しています。
第1部では群論の知識に自信がない方でも読みやすいよう説明を工夫し、第2部では空間群の対称操作の記法や計算法について適宜フォローを入れているので、無理なく理解を深められます。

格子振動および結晶弾性論の基礎から、間接型強誘電体、不整合相転移の解析まで広く網羅しており、強誘電体材料の開発・設計にも大いに役立つ一冊です。

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