#509 地域移行待ったなし。我々はまず場を作る
今回は珍しく?時事的な話題。
2023年8月2日のYahoo!ニュースにて、新潟県村上市立神林中学校の部活動地域移行の取り組みを取り上げたテレビ新潟の番組が挙がっていた。神林中学校のバスケットボール部を入り口に、地域移行に取り組む村上市とNPO法人の活動が紹介されている。
神林中学校のバスケットボール部は、今年度から活動を平日の2回のみに設定し、学校の部活動としての大会参加もしないという方針を取っている。競技としてより多く深く取り組みたい生徒については、NPO法人・希楽々(きらら)が運営するクラブチーム・Hangout(ハングアウト)に所属しており、大会にもこのクラブのメンバーとして出場している。クラブには、神林中学校以外の学校からも生徒が参加している。
神林中学校は段階的に部活動の地域移行を進めており、ここで紹介されているバスケットボール部と卓球部、野球部が軸足を地域のクラブに移している。まだ方向性の定まり切っていない地域移行問題の中にあって、先進的に取り組みを進めている例と言ってもいいだろう。
このバスケットボール部については、神林中学校の富樫勉先生が顧問を務める傍ら、クラブチームのコーチも兼任している。兼職兼業の申請を提出し、コーチとしての報酬がある状態で行っているとのことだ。部活指導、経験のある競技の指導についてやりがいを感じている教員の方にとっては、考えうる望ましい形の一つかもしれない。
まず気になったのは予算だ。クラブの運営はNPO法人が行っており、番組の中では参加費が必要となることも挙げられていたが(このことは経済的負担という点では一つの課題ではある)、それだけでまかない切れるものでもないだろう。村上市として、あるいは新潟県として何かしらの補助が行われていると考えるのが妥当か。
運営するNPO法人・希楽々のホームページに、2022年度の決算報告が上げられていた。
これによると、2022年度の収益のうち、助成金・補助金によるものは239,900円となっている。また、融合型部活動活動費として829,700円が計上されている。このあたりが、部活動の地域移行活動にかかってくる収益に該当するだろうか。こちらのNPO法人は地域の健康増進やフィットネスに関する事業や委託事業なども行っており、全体的な収益としてはこちらの占める割合が大きい。このあたりをうまくやりくりしながら、地域移行の取り組みを実現させているのだろうか。
今回の例では、部活動指導にやりがいを持って取り組んでおられる先生と運営するNPO法人、そして自治体が上手に手を取り合って行うことで実現している事例といえる。競技の指導が難しい、あるいは負担に感じる場合には、教員以外の指導者を取り入れて活動するために受け皿にもなるだろう。国の動きが進まない中、できる形を模索して先行して場所を作っていく取り組みの必要性を感じた。
実は、先日守山市のご担当者の方と面談をし、守山市および滋賀県の状況などを伺ってきた。国と県の方向性が定まっていない中、現場の方も身動きが取りづらい状況であると感じた。そして、我々競技団体や指導者の立場としては、学校部活動の教育的側面を考慮しつつも、競技をより多く深く楽しみたいニーズに対しては、やはり場を作るところから先んじて始めていく必要があると決意するキッカケになった。村上市と全く同じことはできないが、こうして先行して活動している方々がいるということが参考にもなったし、励みにもなった。
(了)
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