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#464 失ったものと得たもの

今後の明暗が別れていきそうな出来事だと思う。

テニスの四大大会・全仏オープン女子ダブルスで、加藤未唯選手が失格処分になった件が波紋を呼び、広がっている。この出来事の流れについてなどは、フリーライター・内田暁さんの記事がわかりやすいと感じたのでリンクを掲載しておく。

僕が注目したいのは、加藤選手の行為についてではなく相手選手の振る舞いについてである。

僕がこの出来事について知っているのはニュース記事による記述と該当シーンを部分的に切り抜いて編集された映像によるものなので、その場にいた全員の振る舞いについて見たわけではない。しかし、相手選手は泣いているボールガールの様子を見て「審判への抗議」という行動を選択した。

自分自身に痛みなどの被害があったことであれば分からなくもないが、今回痛い思いをしたのはボールガールである。心配して慰めに駆け寄るわけでもなく(実際にはそういう行動もあったのかもしれないが)、それを理由に対戦相手への失格処分を審判に迫るというのは、このボールガールのことを“だし”にして自らの利益を得ようとしたと見られても仕方がないのではないか。

結局、審判が毅然と対応できなかったという事象も重なって、裁定はレフェリーが出てくるところまでもつれた。このレフェリーによる裁定も疑問視されている部分が多いが、それについては割愛する。残念なのは、レフェリーにより加藤選手の失格が確定されたあと、抗議をしてきた相手選手がベンチで談笑する姿が映し出されたことだ。海外のニュース記事では、加藤選手の失格処分に対して「ほくそ笑んでいる」とまで表現されてしまった。

実際に、このスペイン人選手がどのような会話をしていたのかはわからない。しかし、それまでの言動によりそのような印象を与えてしまったのは確かだ。もしこのスペイン人選手がボールガールのことを理由に失格処分の主張などをせず、ボールガールに対して真摯に対応し、最後まで試合を戦いきって勝利した上での笑顔であれば、それは勝利に対する喜びや安堵の笑顔として何の疑問も持たれなかっただろう。

ツアープロとして、そのプライドや生活をかけて非常にシビアな世界で戦っているということはわかる。このスペイン人選手は次の対戦で敗退したとのことだが、彼女たちがそこまで勝ち上がったことによって得た賞金やポイントと、一連の振る舞いによって失った信用や応援は、どちらのほうが重いのだろうか。

加藤選手は、この失格処分によって今大会で得た全ての賞金とポイントを剥奪されたという。これについてはプロ選手協会からも抗議がなされているというが、その結果はまだ出ていない。しかし、結果的に加藤選手が多くの支援・応援を得たのもまた事実である。

最後に、不本意な形ではあるだろうが加藤選手も今回の件で注目を集めた。であれば、今回の対戦相手の振る舞いは他山の石として、今後も多くの人に応援されるプロ選手として活躍していってほしいと願う。

(了)

○この内容をもとにお話したstand.fmの放送は、こちらから聞くことができます


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