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#426 子どもに冷たくならずに済むように

最近は読書が順調だ。やはり本を読みたいなら「時間があるときに読む」意識より「時間を作る」意識が重要だと実感している。

今読んでいるのは、兵庫県明石市長・泉房穂氏の「社会の変え方」である。子育て支援の充実でこの1年ぐらいは特に有名になった感のある明石市の市長を務めておられるが、来月には“元”市長になってしまわれるのが残念でならない。

泉氏はかねてから「子どもに冷たい社会に未来はない」と仰っているが、これは同氏の大学の卒業論文にも書かれていたらしい。泉氏は今年60歳になられるわけだから、もう40年近くも前から子どもと子育ての応援の重要性を説いてこられたということになる。今のように少子化が危機的な状況に陥るはるか前から、社会の持続的な発展のために必要なことを見抜いていたわけである。

さて、同氏の述べる「社会」だが、これは国全体のことを指すこともできるし、泉氏が市長を務めておられる明石市を指すこともできる。行政区分単位でも社会は造成されるからだ。では、この「社会」をソフトテニス界に置き換えてみたらどうだろう。

日本のソフトテニス界は、日本ソフトテニス連盟という組織を大本として各都道府県支部、各郡市支部に枝分かれをするような体系になっている。ただし、生活の基盤となる社会と違ってソフトテニスは自由に参加を決められるスポーツであるから、この組織体系に属さない中でソフトテニスを楽しんでおられる層がいることも追記しておく。話を戻すと、日本全体の大本組織があって各都道府県、各市町村まで分化していく様は、行政区分をもとにして運営される社会ととても良く似ていると言ってもいいだろう。

全体を管轄する日本ソフトテニス連盟が、子どもたちやその育成に冷たくないかどうか、は今回は横に置くこととして、ミクロな視点として個々の所属する市の連盟やクラブがどうなのか、ということを考えてみた。

僕の所属する守山市の連盟では、守山ジュニアという小学生のクラブチームを運営している。一見、これで市の連盟としては子どもたちの育成に積極的であるようにも見えるが、全体でできている状況ではないのが実情である。

断っておくが、僕は誰も彼もが子どもたちの指導育成の場に来なければいけないとは思っていない。先にも述べたようにソフトテニスはそれぞれが自由に参加を決められるスポーツだから、指導を通じて参加するのも競技者として参加するのも、エンジョイのために参加するのも自由である。ただ、組織としてより全体的に育成に関われているかといえば、足りない部分があると思っている。

今、足りていないと感じるのは子どもたちと大人が関わる機会の設定ではないかと思う。子どもたちが活動している時間・場所と、大人たちが活動している時間・場所が、ほとんどの場合においてそれぞれに独立している。これでは、それぞれがどのような活動をしているのか見ることすらできない。見ることすらできていないものに、興味関心を持つのはなかなか難しい。

地域の組織として、この地域におけるソフトテニス競技の持続発展を考えるのであれば、大人が子どもやその育成に対して「冷たくならずに済む」仕組みと文化の創出が必要だと感じている。関わろうとしないのが冷たい・悪いのではなく、それぞれの立場を尊重しながら関わる機会を持てない仕組みが悪いのだと思う。

余談だが、これの実現のためにはいかに見通しを実感してもらうかが大切だと思っている。過去に、守山ジュニアの練習に卒業生が参加することについて、一部の上手な子たちだけが相手をしてもらって得をしているとか、現役の子たちの打球機会が減るとかいった不満の声が出たことがある。その後、コロナ禍も相まって卒業生の参加はほぼなくなってしまったが、あの頃もっと先々の見通しをもって卒業生の参加を歓迎する文化が創出されていれば、今ごろクラブの練習はどの様になっていただろうかと思う。卒業生の中には、滋賀県の中学生大会で優勝するような子たちもいる。この子達がジュニアクラブの練習に帰って来やすい文化ができていれば今の現役の子達にどれだけ良い影響があったかは、言うまでもない。

縦の軸を作って子どもから大人まで双方向に関われる仕組みと文化を作ること。これが、今後の地域における競技組織運営において大切なことだと思う。

(了)

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