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「見本が大事。」(モデリングと認知的徒弟制)


1|見本が大事。

知識や技能・技術などを習得していく際、「教科書を読む」「マニュアルを読み込む」「デモンストレーションを見る」「見本を参考にする」ことはよくあることだと思います。

私もチームでの指導の際に、「明日のモデリング動画送るね。」とよくプロ選手などの「ハイライト動画」などを選手に共有します。

また、スキル動画を作成するときも、「モデリング」というセッションで、本時のテーマのイメージをしっかりと持ってもらいます。

みなさんも同様かと思います。

ただ、指導者や教育者としては「見本」が学びのプロセスのなかで、どういう位置づけにあるのかということを理解しておくことは重要なことだと思います。また、自身の経験や感覚も重要ですが、背景に理論があることも大事ですね。

そこで、今回は「認知的徒弟制」をピックアップしました。


2|認知的徒弟制とは

認知的徒弟制は、昔ながらの職人などに多い、「親方」と「弟子」による伝統的な職業技術の訓練のプロセスを認知的に理論化した教育法です。また、1980年代に、アメリカの認知学者ジョン・S・ブラウンやアラン・コリンズらが伝統的な徒弟制に見られる見習いの修行の過程を、認知的に理論化した教育法です。

とくに職人の世界では、弟子たちは親方の仕事を見て、「技を盗む(=学習する)」こと、弟子入りする「徒弟制」が基本でした。


3|認知的徒弟制4つのステップ


モデリング(modeling)
【見せる】
指導者(教育者)が学習者に仕事のやり方を見せて教える。学習者は、指導者の見本を見て模倣し、身につけていく。

❷コーチング(coaching)
【させて、見て、気付かせる】
指導者(教育者)は、学習者にその技能を練習させ、取り組みを観察し、より良い方向に行くように、ヒントやアドバイスなど、フィードバックをする。習熟度の状況や発達段階に応じて、適した課題(「ちょうどいいレベル」については今度お伝えしていきます)を設定する。

❸スキャフォールディング(scaffolding)
【自立の支援】
「足場(かけ)」という意味。学習者がひとり立ちできるように支援する段階。学習者はさまざまな作業・課題に取り組み、指導者(教育者)は作業・課題の難易度・負荷を高めていく。自力で行える作業や課題は任せ、できないものだけを指導者(教育者)がサポートする。学習者は、いまの自分の習熟度、発達段階を理解、自覚する。

❹フェーディング(fading)
【任せて、手を引いていく】
学習者の習熟度、発達段階に応じて、サポートを減らしていく。また、学習者に任せて、手を引いていく段階です。


※認知的徒弟制をアーティキュレーション、リフレクション、エクスプロレーションなど、6つの段階で捉えることもあります。ここでは、一般的な教育法として4つの段階

というような4段階を踏むことで、学びが深化するというものです。


4|伝統的な徒弟制


アプローチなく、伝統的な徒弟制である「背中を見て学べ」「技は目で盗め」だけでは、簡単に学習効果が得られないこともあると思います。学習者の習熟度や状況、発達段階に応じて、選択する必要がありますね。

つまり、「背中を見て学べ」だけではなく、課題には教育的配慮が大事ということですね。


5|まとめ


学習者はあくまで学習者であって、そもそも習熟度が低い、経験値が浅い、技能が身についていないということを理解し、習得していくまで、独り立ちしてくまでに「時間がかかること」をよく理解する必要がありますね。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」
山本 五十六

山本五十六氏の言葉は有名ですが、このように学習理論、教育法にあてはまめてみると、もっと言葉の凄みを感じますね。

率先垂範、Lead By Example、色々な言葉がありますが、指導者(教育者)は学習者に対して、より良いモデルの提示、モデルをプレゼンテーションしていくことが大事ですね。

それでは、また「学び」について考えていきたいと思います。
ありがとうございました。



上達するには、「モデリング!?」全中2018ハイライト


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