『ボブ・ディランの直筆サイン本「オートペン」使ってました事件はNFTを理解するのによい事例』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.12.6

■ボブ・ディランが謝罪。599ドルの限定サイン本に「オートペン」使ってました

サインと直筆サイン。
音楽界の重鎮、ポップアイコンでもあるボブ・ディラン氏。世界中に数多くの熱狂的ファンを持ち、彼のサインを家宝にしているという人もいるはず。が、11月1日発売のボブ・ディラン氏の書籍『The Philosophy of Modern Song』のサイン入り本が、オートペンを使って書かれていたことが発覚。本人が謝罪しています。

NFTアートについての頭の体操っぽいなと思ったニュースです。

ボブ・ディランの直筆サイン本が「オートペン」というマシンを使って書かれていたことが発覚し、本人が謝罪したとのことです。

本人が直筆したことの証明の必要性や、直筆サインによって量産品と異なるノンファンジブル性が資産価値を生むことなど、NFTっぽいなと感じます。


■オートペンでも契約機能は同じ

オートペンは概して情緒的な理由から使用されるものであり、全ての署名を本当に手書きで行うのか、それともサインを印刷して複製するのか―人間味がないとも受けとられかねない―という問題に対する妥協の産物である。

オートペンとは筆記具を持たせテンプレート通りの筆跡でサインするマシンです。ジョン・F・ケネディ時代のホワイトハウスで大統領署名によく使用されていたとあります。

Wikipediaのオートペンの説明の冒頭部分はとても詩的ですね。

「サインを印刷して複製」でも契約が有効なケースもあるようで、「情緒的な理由から使用される」という表現の通り印刷でも法的に有効なのに手書きの方がソレっぽいという理由で使われるマシンという位置づけです。

つまりサインの機能性だけを見ればオートペンでも直筆でも同じで、情緒的価値が差分だということになります。


■機能は同じなのに資産性を帯びる

ディラン氏レベルの超大御所の場合、直筆サインは1万4000ドル(約190万円)ほどで取り引きされる場合もあり、こうなってくると、直筆サインはもはや資産です。

直筆サイン本に高額な値段が付くのも、ファンが情緒的価値を見出すからです。

本としての情報量や機能は同じなのに190万円も払うことはファン以外には理解しづらいものです。


■直筆サイン本はノンファンジブル

今回のボブ・ディランの直筆サイン本では、運営サイドが「直筆」を謳って販売され印刷ではなく筆記具を用いてサインされてはいます。

オートペンは情緒的な意味で使われましたが、ボブ・ディランの直筆サインではオートペン程度の情緒では足りなかったようです。

印刷物・量産品である書籍に直筆サインを加えることで1点モノになること、そしてボブ・ディラン本人が1点1点苦労して書いたというストーリーが、直筆サイン本に高値を払う理由です。

つまり「ノン・ファンジブル」化に価値を感じるわけです。


■ファンの間での承認ユーティリティ

最近のNFTはもっとわかりやすく直接的なユーティリティを求められるようにはなってきました。持っているとDiscordの限定部屋に入れるなどはよくあるユーティリティです。

直筆サイン本にはユーティリティのような野暮なことは求められませんが、ファン界隈で一目置かれたり、大量にコレクションしていると取材を受けて有名になる人が現れたりはします。


■NFTのことが理解しやすくなる事件だった

今回は内緒でオートペンを使っていたことが問題になりましたが、以前から「5人のアシスタントとサイン作業を行っていた」とある通り、直筆であってもボブ・ディラン本人がサインしていないものもあったようです。

それでも公式が認める「直筆サイン本」であって、量産品と違うノンファンジブルなものだということで一定の価値はあります。

その価値というものは非常に情緒的なもので、直截なユーティリティによって価値づけされているものではありません。欲しい人がいるから値段が上がる、というものです。

NFTのノンファンジブル性とその価値については最近もう語られなくなりましたが、世の中の99%くらいの人はやっぱり「JPEGに数千万円?」の疑問を持っていると思います。

そんな人にNFTがなぜ値段が付くのかを説明するのに「今回のボブ・ディランの直筆サイン本がオートペンで書かれていた事件」を例え話で出すと理解してもらいやすそうです。

・オートペンでも契約など機能的には同じ
・印刷よりは筆記具を使っているので情緒的
・量産品にサインをすることでノンファンジブルになる
・ほしいファンが値段をつけるから高額になる
・ファンに一目置かれるユーティリティあり

NFTならさらに
・公式かどうか(本人かどうかはともかく)
・いつ作られたか
・どういう人の手を渡ってきたか
もわかりますし、公式出版社など権威組織が証明する必要がありません。
今回は公式出版社側がコッソリやっていましたので信用依存しなくていいというNFTのメリット説明にも使えます。

ホントこの手のNFTの話をもう全くしなくなりましたね。まだ全然世の中には浸透していないのにクリプト界隈のスピードの速さには驚きます。

そしてこのnote、毎日書き始めて明日で365日を迎えます。続けられるうちは毎日更新していこうと思いますが、無理なく楽しめる範囲でボチボチやっていきます。引き続きよろしくお願いいたします!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?