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『RWA事例「家賃3万のNFTシェアハウス」が予想以上の大成功。開始1年、成功の鍵は“報酬トークン”』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.10.13


■「家賃3万のNFTシェアハウス」が予想以上の大成功。開始1年、成功の鍵は“報酬トークン”

意思決定をする人や機関が存在せず、組織内のメンバー一人ひとりによって自律的に運営される組織「DAO(分散型自律組織)」のような仕組みに基づいて運営されるシェアハウス「Roopt神楽坂 DAO(ループトかぐらざかダオ)」が、2022年9月のオープンから1年を迎えた。

物件の管理運営はオーナーが行うのが一般的だが、Roopt神楽坂はNFT(非代替性トークン)を活用することで、入居者と他の出資者が自律的に運営に関与するのが特徴だ。

仕掛け人である、ソーシャルメディア事業などを展開するガイアックスと、空き家を活用したシェアハウス事業などを手がける巻組が、1年間の成果を発表した。

これも一種のRWA NFT。

家賃という金銭的価値が提示されていることが、DAOやNFTというムズカシイことをわかりやすくしていると感じます。


NFT3万円=1か月の家賃=RWAがわかりやすい

DAOという組織を運営することによって、不動産の売り上げにも貢献したことが大きい成果だったのではないかと思っています

この記事ではDAOという組織形態と、DAOというものに参加する人たちにターゲティングしたことが成功要因としています。

それもあると思います。たんなる「安価なシェアハウス」としてマーケティングするより、スタートアップ気質の人に「NFT」「DAO」という言葉で集客することで差別化できます。

しかし、そのような「NFTマーケティング」というだけではなく、「NFT1個=3万円の家賃」が価値の裏付けとしてわかりやすかったのも商業的に成功した要因じゃないかと思います。

まず、240個のNFTがあらかじめ発行されている。NFTの価格は1個につき3万円で、1トークンを購入すると1カ月の賃貸居住か、7泊8日の宿泊滞在のいずれかの権利を得られる。

今のところスマートコントラクトで自動実行されているわけではなく手作業で事務処理しているということなので、ぶっちゃけNFTやオンチェーンである必要性はありません。ここは「NFTマーケティング」です。

1年前にこの「NFTシェアハウス」が始まった時はまだNFTの投機的な売買がまだ盛んでした。なぜか「NFT」というだけで何万円もの値段が付いた時代から、多くの人が少し胡散臭みを感じ始めたころでした。

何万円もする理由はよくわからず、「値段が上がりそうだから」「ほしい人がいるから」そんな説明をされていました。

そんな中で「1か月の家賃3万円に充当できますNFT」は裏付け資産があるのはちょっと新しかったと思います。

今はそれをRWA(Real World Assets)と呼びますが、当時は今ほど流行っていませんでした。


管理コストもトークン化

掃除などは他のシェアハウスでも住人の善意によって行われるケースはある。

DAOが異なるのは、居住者が運営に貢献した場合「報酬トークン」が得られる点だ。

家の掃除や内見の案内など、担った仕事に応じて「報酬トークン」が付与される。入居者とトークンの保有者はDiscord上で議論しながら家の運営について決めていくが、この報酬価格もその議論を通して決められたという。

例えば、内覧対応をした場合は報酬トークンが4トークンもらえる。これは現金で1000円相当という。「報酬トークン」は3万円相当貯まると家賃に充当できる仕組みになっている。

通常のシェアハウスでも住人が当番制で掃除することはありますが、そこに「報酬トークン」を設定してお仕事化したことも、運営の無人化とコストダウンにつながったとしています。

早稲田大学大学院経営管理研究科教授の入山 章栄先生のポッドキャストでも「ちょこざっぷが全国2000店舗を目指す時の店舗拡大のボトルネックになるのはスタッフ人材の確保」とし、ちょこざっぷ会員が掃除などを担う仕組みにしたことが1000店舗規模に到達できた大きな理由としています。

(ちょこざっぷが狙うのはジムの拡大ではなく「地域の公民館のようなコミュニティづくり」というのが本題の話で、とても面白いので是非聴いてみてください。)

「NFTシェアハウス」も、住民が運営コストの一部を負担することで家賃を安く設定できたり管理費を別途取る必要がなくなっています。

DAOは善意の組織のように語られがちですが、基本はお金を軸にした集まりだと捉えた方がわかりやすいように思います。

「内覧対応したら4トークン、3万円相当まで貯めると家賃に充当でできる」という報酬体系も、「謎のトークン」ではなく「1トークン250円相当、120トークン=3万円分貯めたら家賃」という裏付け資産があるRWAのやり取りだからわかりやすいのです。


結果、NFTとDAOが空き家対策につながったのが大きい

家賃収入など売り上げは想定を1.7倍上回った。利益率は37%だった。

コミュニティという側面でのDAOが注目されがちですが、ビジネスにも繋がったというところは、大きい成果なのではないかと思っています

「NFTシェアハウス」を「DAOで運営」と銘打っていますが、結果、商業的に成功するモデルが見つけられたことで、空き家対策ができる道筋ができたことが大きな成果だと感じます。

NFTを総額いくらぶん売ったとか、時価総額がいくらだとか、とかくNFTそのものの売り上げ規模の話になりがちなNFT界隈。NFTコミュニティのDAO化にしても、ホールドするか、売るか、値段を上げるための策を打つか、みたいな話がメインになりがちです。

今回の「NFTシェアハウス」は、家賃が上がらない限りNFTの値段は上がりません。それがRWA NFTというものですから。

物件の値上がりによるキャピタルゲインを狙う不動産NFTの世界もありますし、不動産の流動性を上げたり小口化によって投資しやすくなるなどのメリットもありますが、今回の「NFTシェアハウス」はそちらではなく、空き家対策として作られたリノベーション物件の借り手をつけることが目的のプロジェクトです。

投機的なNFTの売買ではなく、空き家対策の道筋ができた。このNFTの使い方はとても興味深いと感じます。

現在、報酬トークンの付与は都度アナログな作業で行われているが、今後はブロックチェーン上に書き込まれたプログラムに基づいて契約を自動的に執行する仕組み「スマートコントラクト」によって対応していきたい考えだ。

あとはスマートコントラクト対応ですね。これがないとNFTやブロックチェーンである必要性がないように見えます。

物件が増えてきたら、それぞれの家賃の違いを吸収する仕組みも必要でしょう。NFTが個人間で売買される二次流通市場が成熟すれば、住み替えし放題なNFTシェアハウスにも発展できそうです。

家賃を裏付けにしたRWA NFTを使った空き家対策。成功例が出れば他社の参入もあるでしょう。そうなれば、業者をまたがって相互運用できるNFTに発展するかもしれません。

よりNFTである必然性がある発展の仕方が見えてきます。DAOの存在は薄くなるかもしれませんが、シェアハウス全体の運営や経営に関わるように発展すれば面白そうです。新しい不動産賃貸事業のかたちがDAOから生まれるのもミライっぽいですね。

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