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『米地裁、NBA Top Shotを有価証券と判断。何が問題だったのか?』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.2.24

■米地裁、NBA Top Shot MomentsのNFTを「有価証券」と判断

米ニューヨーク州南部地裁は22日、Dapper Labsの発売したNFT(非代替性トークン)「NBA Top Shot Moments」は有価証券であるとの判断をくだした。

「今回の判決は最終的なものではない」としているものの、影響はありそうです。

NBA Top ShotはNFTの最もシンプルな使い方=デジタル画像をコレクション用に販売するモデルの代表として紹介されることが多く、スポーツに限らずアイドルや鉄道などファンがいる分野でNFTビジネスを検討する際に真っ先に試されていました。

これが有価証券に認定されるとなると多くのNFTプロジェクトに影響を与える可能性があります。

判事は、今回の判断はすべてのNFTにあてはまるわけではなく、個別の案件についてはそれぞれケースバイケースで評価する必要があるとしている。

広くNFT全般を有価証券と見なすわけではない、と判事自身が表明しているので影響は限定的かもしれませんが、今回の判決で有価証券と見なされたポイントは注目です。


自己所有プライベートチェーン上のNFTだから有価証券?

Dapper Labsがプライベートなブロックチェーンを作成し、維持しているという主張は、裁判所の結論にとって基本的なものである。

Dapper Labsが「モーメント」の価値の土台となるブロックチェーンをプライベートなものとし、「モーメント」の取引をFlowブロックチェーンに限定することで、購入者はDapper Labsの専門知識や経営努力、そして同社の継続的な成功と存在に依存しなければならない。

ひとつは、NBA Top ShotをリリースしているDapper Labs自身が運営しているFlowブロックチェーンだけに限定されていることを理由に挙げています。

ブロックチェーン自体をDapper Labsが所有しているなら従来のサーバ&クライアント方式のECサイトと同じであるし、Flowブロックチェーンの成長はDapper Labs自身の経営努力によって決まり、NBA Top ShotのNFTの価値がFlowの成長、Dapper Labsの成長と連動するので有価証券だという主張のようです。

この論拠だと、NFTの発行主体とチェーン所有主体が同一だからダメ、という主張のようで、プライベートチェーンだからダメということではなさそうです。

プライベートチェーン上のNFTに意味があるのか?というのは今回の「NFTが有価証券と見なされるケース」の判決とは別問題です。


値上がりを期待させる宣伝が有価証券?

宣伝の際に、「ロケット」や「マネーバッグ」などNFTの価値が高まることを示唆する絵文字を使っていたことを挙げた。

市場が価格を決めるのは原則ですが、NFT販売側が値上がりを期待させたり値動き自体を商品価値に位置付けることも、有価証券である根拠としました。

NBA Top Shotのようなカードをコレクションして楽しむ商品は、販売元はあくまでもコレクション商品を売っているだけという立場に徹しなければならないようです。

プロ野球カードやビックリマンチョコのシールなども実際には二次流通市場でプレミアム価格で売買されますが、販売元は二次流通を前提にしておらず関与もしていないのが建前です。印刷数が少ないレアなカードやシールを設計上盛り込むのも一次販売で買われやすくする工夫であって、二次流通での値上がりのために仕込んだものではないということになります。

NBA Top Shotの場合、二次流通市場自体の運営をDapper Labsがやっていますし、Flowブロックチェーン以外、つまりDapper Labsが運営していない二次流通市場では二次流通できない仕組みになっています。

さらに加えて値上がりすることを期待させる宣伝を行っていたため、二次流通での値上がりを前提としてNFTを販売していたと見なされました。

二次流通市場をDapper Labs自身が運営していることとセットでの判断ではないかと思いますが、NFTプロジェクトのオーナーは安全策として「二次流通市場での値上がり期待を前提とした宣伝をしない」方がよさそうです。


日本は規制を無為に呼び込まないことが大事

ハウィーテストとは
米国で特定の取引が「投資契約」という証券取引の定義の一つに該当するかどうかを判定するテスト。SECのW. J. Howey社に対する訴訟事件に由来する。これ自体には法的拘束力はないが、SECはこのテストをもとに複数のICO(トークン販売)に対してリーガルアクションを起こした経緯がある。

米国ではSECが何でも有価証券と見なしがちで厳しめに見えますが、日本国内ではNFTが比較的自由に扱われているように感じます。

ハウィーテストはひとつの基準ですが、こういうモノサシがあった方が有価証券であるかを事前に判別・回避することができてよいようにも思います。

株式会社の仕組みでは実現できなかった資金集めや投資家への還元の仕組みがFTやNFTで実現できるというのはweb3の大きな可能性だと思っています。ファンが応援する「推し活」で食っていける世界は魅力的です。

でもそれは突き詰めると有価証券で行われていたことに近づきますし、無規制だと消費者の保護が全くできないという懸念も理解できます。

従来の日本だと消費者保護の観点が強すぎてイノベーションを阻害して世界に遅れを取るということが多かっただけに、いま日本でFTやNFTが世界一に近い容易さで扱えている状況は異例かもしれません。

そんな中で規制がないことに乗じた悪用や大きな消費者被害が起きると、一気に昔ながらの超規制に舵が切られる恐れはあると思います。

web3を国家戦略に、と謳われている以上あまり過度な規制方向には向かわないと思いますが、間隙悪用は自らの首を絞めます。規制を無為に呼び込まないことが大事です。


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