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『「ゴールド会員」なんて顧客は嬉しくない。「囲い込み」施策が失敗に終わる理由』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.7.27


■「ゴールド会員」なんて顧客は嬉しくない。「囲い込み」施策が失敗に終わる理由

LTV(顧客生涯価値)を伸ばすため、企業は「会員プログラム」や「会員アプリ」を駆使して顧客を囲い込もうとします。しかしこうした「囲い込み」施策は、顧客にとってのメリットが少なく、利用されずに終わることがほとんどです。

当記事では典型的な失敗事例を紹介しながら、LTV向上のために本来何をすべきかを提言します。

旅先で訪れたお店など、およそ2度来ることが難しいか、2度目も数か月~数年後になるかもしれません。

にもかかわらず割引クーポンをもらうためにアプリをダウンロードさせられ、会員登録にメアドや趣味嗜好などを登録させられます。超メンドウです。

飲食店に多いLINE公式に登録させるタイプの囲い込みはアプリダウンロードより簡単ではありますが、再来店することができない立地の店からのキャンペーン通知はオフにするかブロックしてしまいます。

これが現状なのに、お店は一生懸命囲い込み施策を打とうとしますし、アプリダウンロード数やLINE登録者数をKPIにして、増えれば喜びます。

「囲い込み発想のマーケティングは多くの場合失敗する。なぜなら顧客がそれを望んでいないからだ。」

という、しごくモットモなことと、実際にさまざまな企業・店舗などで行われている施策のズレを非常にわかりやすく解説している記事をご紹介します。


囲い込みの4大幻想施策

顧客を囲い込むことができるのは「大規模なプラットフォーマー」か、「極めてロイヤルティの高いファンビジネス」だけです。

にもかかわらず、世の中の多くの企業は定期的に「囲い込み」施策に手を染めます。典型例は「会員プログラム」「会員アプリ」「サブスク」「メディア」という「妄想四天王」です。

1. 経済的メリットがほぼない「会員プログラム」
2. まったく使われず放置される「会員アプリ」
3. 都度購入で事足りるのに毎月購入を求める「サブスク」
4. 企業視点で作られたつまらない「メディア」

の4つを「妄想四天王」して挙げ、それぞれの施策がいかに効果がないかをわかりやすく断罪しています。

これらがうまく行かない理由の共通点は「顧客視点でない」ことに尽きると読みました。シンプルに、囲い込まれることを顧客が望んでいないからであり、他に選択肢がある中で「囲い込み施策」が他の選択肢を押しのけるほどの威力やメリットがないのです。


瞬間的な顧客メリットだけはある

とはいえ、囲い込み施策の中で打たれるキャンペーンは顧客にとって瞬間的にメリットがあるものもあります。「登録で割引クーポン」は最たるものです。

定期的に連絡ができる状態を作り、顧客の情報を獲得するために登録させるわけですが、登録しても継続情報の効果がないか、むしろ疎ましがられるようであれば、逆効果にすらなってしまいます。

登録後の継続施策に効果がないのであれば、登録させずに「期間限定割引」や「季節限定商品」を来店者全員に提供した方がマシです。

新規顧客や一見客に対していきなり囲い込み施策を当てても効果はなく弊害も大きい。一見さんと常連さんを同じ施策で囲うことに無理があるとも言えます。


すでにブランドを愛している顧客だけに提供するのはアリ

「ゴールド会員」など名誉ある称号を与えれば顧客が喜ぶかといえば、まったくそんなことはありません。嬉しい人がいるとするならば、それはすでにそのブランドを愛している顧客です。

かつて、いきなりステーキが肉を食べたグラム数を競わせランク称号を与える施策で一世を風靡しました。

この例ではいきなりステーキの元々のファンだけでなくグラム×ランクの施策自体に興味を持った新規のチャレンジャーを多く獲得し、見事に来店頻度アップと単価アップに成功したと思われます。

しかしこの成功例を再現するのは多くの場合は難しいものです。

できても既存のファンに向けたロイヤルカスタマー施策に留まり、新規顧客を巻き込んで一足飛びにファン化まで連れていくまでには至らないでしょう。

むしろ既存顧客については「ゴールド会員」など「狭い村の中でのヒエラルキー競争」は響くことがままあります。地下アイドルとそのファン、地元民向けの小料理屋と常連客、ホストクラブと太客、こんな関係性の中では、「ゴールド会員」というあからさまなバッジをつけるには至らなくても、「覚えてもらえている」「自分のほうがあいつより愛されている」の競争が起きがちです。

これらはウェットな関係性ですが、少しドライにして入りやすくしたのが「ゴールド会員」です。明確なゲームルールがあるおかげで対象人数を増やしやすいのがメリットですが、むしろよりウェットな施策にした方が常連客の満足度は上がるのではないかと思います。


インスタグラムがクリエイターにサブスク機能を提供

インスタグラム(Instagram)が、クリエイターが登録者のサポートを通じて毎月一定の収益を上げることができる「サブスクリプション機能」の提供を日本を含む10ヶ国で順次開始すると発表した。

SNSプラットフォームが囲い込み施策を行うのではなく、インフルエンサーがファンに向けて囲い込み施策用の機能を提供するのはあり得るのではないかと思います。

インフルエンサーのファンの中でも一見さん・常連さんのグラデーションはあると思いますが、すでにいるファンが有料課金するモデルであれば成立する場合もあると思います。

かたや「登録で割引キャンペーン」で新規登録者を獲得することは効果がないはずです。割引があっても新規の一見さんは「ファン」ではないですからサブスク会費を払いません。またその時限りの割引にも魅力を感じにくいでしょう。

飲食店などで起きている「一見さんにアプリやLINEで登録させるために割引クーポンで釣る」施策の効果がなさそうなのは、このインフルエンサーへの課金例を考えても理解しやすいと感じます。


囲い込みの成否はファン度による

囲い込みそのものが悪いというより、囲い込まれることを嬉しいと思う人にだけ囲い込み施策をやるべき、という理解です。チェーン店も含めたショップアプリのうち、定期的に使っているものがどのくらいあるでしょうか。そしてそのアプリがあるから行くという動機になっているものはどのくらいあるでしょうか。

そして、動機になっているもののうち、クーポンや発信情報が動機の源泉になっているものはどのくらいあるでしょうか。

実際は、そのお店の商品・サービス・値段・立地などが魅力の源泉で、どうせなら他と比べてコチラ、くらいの意識ではないかと思います。つまり本質的にいい店・いいサービスでなければ、クーポンがあろうが選ばないはずです。

先にお店やサービスのファンを作る。そのファンに喜んでもらうための施策を打つ。それが結果的に囲い込みにも見える。

この順番であればファン度が高い顧客にとっては満足度が高いはずです。囲い込み自体が悪なのではなく、顧客のニーズに寄り添っているか、顧客がきちんとファンになっているか、ファンになるための本質的な価値を提供できているか、そちらに努力の力点を置くべきなのだと思います。

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