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読書録「世界一子どもを育てやすい国にしよう」 ◎根拠のない3歳児神話

 前回の記事の続きです。

 今回は本の中から「根拠のない3歳児神話」という項目を紹介します。

 私の息子も今ちょうど3歳で、この3歳児神話という言葉は何度か耳にしたことがあります。



 
 歴史の本も出されている著者・出口さんは『人類の歴史に学びたい大切なことがあります。子育てや介護は、社会全体でやるもので、家族だけでやるものではないということです。』と話しています。

 『20万年前に僕たちの直接の祖先であるホモ・サピエンスが生まれてから定住を始める1万年ちょっと前まで、ヒトはグループで移動しながら暮らしていました。男たちは狩へ出かけ、女たちも貝や山菜を採ってくる。そうすると、小さな子どもたちは残されてしまいます。高齢者も残る。そこで、交代で誰かが群れに残り、当番で子どもや高齢者の面倒を見ていたのです。

 『以前の総理が言われていた「3年間抱っこし放題での職場復帰支援」は、いわゆる3歳児神話(子どもが3歳になるまでは母親が子育てに専念すべき。そうしないと成長に悪影響を及ぼすという考え方。ただしこの言葉に付託された本来の意味は、3歳までの脳の発達は極めて重要であって、その間に正しい刺激を与えなければ、健常な発達が臨めないことがある)を考慮されてのことだと思いますが、3歳児神話というのは、じつは人間の歴史にはないのです。
 そもそも人間は、お母さんと1対1ではなく、集団の中で育ってきた。それが正しい方法だし、集団で育てることで人間は社会性が身につくのです。』




 『そもそも3歳児神話のきっかけとなったのは、1951年に世界保健機関(WHO)の要請で行った、イギリスの学者、ジョン・ボウルビィの、第二次世界大戦による戦争孤児の報告書だとされています。そこには「孤児や親と離れた子どもたちに、精神発達の遅れが生じている」とありました。
 日本には1960年くらいに入ってきたのですが、それがなぜか「3歳までは母親が必要に」という解釈になってしまいました。
 日本の保守派の人たちはよく「お母さんと一緒にいるのが大事だから」と言いますが、日本の長い歴史を振り返り、お母さんだけで子育てをしている時代がもしあったとしたら、それは戦後の20〜30年だけです。

 ちなみに、私の子ども時代(幼稚園)もお母さんが家にいる家庭が多かったように思います。私の母は産休後すぐに職場復帰し、私は祖母に育ててもらいましたが、周りの友達は家に帰るとお母さんがいたので、ものすごく羨ましかったのを強烈に覚えています(笑)



 先ほど紹介した1960〜1970年代はちょうど高度成長期とも重なったこともあり、父は外で長時間労働、母は家で専業主婦&育児のスタイルがより定着したそうです。
 『女性は家庭に入れと専業主婦を推奨し、「第3号被保険者」とか「配偶者控除」とか、さまざまな仕組みをつくって「そのほうがラクですよ」とか「結婚退社のほうが有利ですよ」という文化をつくってしまったのです。そして日本は、吉田茂の描いたグランドデザイン通りに高度成長し、うまくいったからよけいにそれがデフォルトになってしまいました。』

 『冷戦、人口の増加など、さまざまな前提があって初めてうまくいったキャッチアップモデルですが、いまはこの前提条件がすべて消えてしまいました。冷戦はなくなり、人口が減り始め、キャッチアップモデルもなくなり、逆に課題先進国となって、成長が止まってしまいました。いまや潜在成長率は、0.2〜0.3%程度と言われています。日本は普通の国になったので、もう一度グランドデザインからつくり直さないいけない時期にきています。

 



 
 当たり前のように脳に刷り込まれていた、この男女分業制が戦後のたった20〜30年で根付いたものだと初めて知り、とてもびっくりしました。そして、時代が変わってきているのに、未だ男女の差が残っていると感じます。


 次回は本書の中の「教育こそが人間形成につながる」の項目をご紹介したいと思います。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!



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