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営業組織のデジタライゼーションを成功に導く方法〜Harvard Business Review 23年1月号

『営業組織のデジタライゼーションを成功に導く方法』。22年も年末を迎えて、アメリカのハーバードの名前がついた学術誌においてコンサルからこの論文が掲載されることに、DXの難しさ、チェンジマネジメントやアダプションの難しさが感じ取れます。2000年の論文と言っても誰も驚かないはずです。そんななかで、国境に関しても、日本のDXが…という言説に惑わされすぎずに、DXの難しさの本質と向き合うことの難儀さを(ベンダー側としては)改めて認識する良記事でした。また、さらに言うと、変革の難しさは、変革対象の違いはあれど、古今東西大きく変化することもないことに気付かされました。章立ては以下の通りです:

  • 営業組織のデジタライゼーションがなぜ必要とされているのか?

  • 営業のデジタライゼーションを推進する際の障害

  • 営業のデジタライゼーションを成功に導くための提言

営業組織のデジタライゼーションがなぜ必要とされているのか?

  • 2021年のZS社の調査では、バイオ医薬品業界の営業幹部の90%がDXは成功に不可欠だと思っているが、その半数以上(55%)は自社の取り組みは成功していない、とみなしている。また、投資を通じて最大限の効果を得られたと回答したのは10%。

  • DXは様々な部門で失敗している。営業部門を含む全部門の失敗率は87.5%だった

  • DXの取り組みの理由は、「進捗の遅れ」「デジタルアダプションの貧弱さ」「持続的なインパクトの低さ」が挙げられる

営業のデジタライゼーションを推進する際の障害

  • DXの革新はより顧客重視の販売モデルを構築および支援することにある

  • 3つの失敗要因が存在する ※一部補足しています

    • ①なかなか効果が出ない (時間軸)

      • 多大なエネルギーを費やしても、実際には動き出さない、進捗がおそすぎて、リーダーすらもその取組に自信を失ってしまうから

    • ②広く浸透しない (ヒト軸)

      • 一部はソリューションへとつながるが、営業組織全体に浸透しない。なぜなら、スキルの習得やマインドセットの変化が発生しないから。サポートプログラムもテクノロジーリテラシーの低さや、カスタマイズの細かい要望などに対応できないことも多い

      • 新しい働き方への移行への尻込み

    • ③当初は成功するが、変化についていけない (変化対応軸)

      • 有用性を保ちながら価値を提供し続けるシステムへ進化できない。仕事の進め方の変化についていけない

デジタライゼーションの成功例

  • マイクロソフトが挙げられる。が、マイクロソフトでも、特段突飛な素晴らしいDXではなくて、凡時徹底した内容。

  • ジョン・ディアも例として挙げられる。ジョン・ディアはビジネス自体をデジタル起点にトランスフォーメーションした代表的な例として各所で取り上げられる。特に、販売代理店(ディーラー)に対してもイネーブルメントをデジタルを使ってやりきっているところは興味深い。また、データを元にして、コンサル的なことも提供(ディーラー支援)しており、この点も興味深い。

営業のデジタライゼーションを成功に導くための提言

  • 筆者は5つの分野に関して、3つの取組みを行えば、成功に近づくとしてチェックリスト型で提示してくれている。一部補足します。 (営業のデジタライゼーションをすすめる際のチェックリスト)

提言1:適切なリーダーを置く

  • 営業・マーケ、そしてIT両サイドから尊敬されるバウンダリースパナーを置く(そんなヒトいたら苦労しない!ってのはそのとおり)。少なくともこの2つの協働を確保するレポートラインの一元化は必要そう。

  • 要するに、顧客視点で動ける、ビジネス軸で判断できるというのがバウンダリースパナーの要件になりそう。

  • またスポンサーである経営幹部がこのバウンダリスパナーをきちんと支持するというのも要件だそう。そりゃそうだよね。

提言2:アカウンタビリティの基準を組み込む

  • 先行指標、遅行指標を両方に含めたKPIを取り込む

  • KPIを中心にPDCAを行う

  • ガバナンスフレームワークは中央集権型にする

提言3:部門横断型のチームを設置する

  • 成功を収めた取り組みではバウンダリースパナーをリーダーとする部門横断型のプログラム管理チームが置かれている、とのこと

  • この点は陥りがちな罠だと思う。本籍がIT、営業、マーケと分かれているのは、専任になりきれない場合があり、仕方ないのかもしれない。ただ、人事考課も含めてプロジェクト側に権限移譲しないと結局サイロになる可能性が高いように考えています。

  • このために、期限を設けて集中的に、というアドバイスも記載している。

  • 特にアーリーエクスペリエンスチームと呼ぶチームをクロスファンクショナルに組成することを説いていて、そのチームにソリューションの初期バージョンをトライアルさせることを推薦している

提言4:アジャイル手法を実践する

  • SFAでアジャイル手法を実践するのは難しいような気がするが、アーリーエクスペリエンスチームだけでPoCすれば可能なのかも…

提言5:組織変革を促進する

  • この点は5つ目に来ているが、一番大切な点なのではなかろうか。

  • DXにはWHYがとっても重要、WHYに腹落ちがなければ、成功する蓋然性が下がるだろうと考えています

  • 実際に営業の4つの特色が組織変革を促進することの重要性に影響を与えていると筆者は説明しています

  • ①リモート性:顧客と接している時間が長いが、次は上司。ということで管理職層の支持が欠かせない。彼らのデータやテクノロジーへの受容性が重要だと説いている。これからの営業職のマネージャーには、データとテクノロジーを必須要件にする、というのも一案かもしれない

  • ②自律性:AIに関するリコメンデーションへの信頼性について触れている。ここも営業管理職の関与が重要そう。

  • ③顧客に変化を伝えたくない、リスクを取りたくない:新しいやり方を試したくない、という営業の心理性があると説明している。この点も管理職やアーリーエクスペリエンスチームという名前のエバンジェリストの関与が不可欠

  • ④売上目標の存在:インセンティブにデジタルアダプションのKPIを入れることも一案として筆者は上げている。それはそのとおりかも。

まとめ

(再掲) 『営業組織のデジタライゼーションを成功に導く方法』。22年も年末を迎えて、アメリカのハーバードの名前がついた学術誌においてコンサルからこの論文が掲載されることに、DXの難しさ、チェンジマネジメントやアダプションの難しさが感じ取れます。2000年の論文と言っても誰も驚かないはずです。そんななかで、国境に関しても、日本のDXが…という言説に惑わされすぎずに、DXの難しさの本質と向き合うことの難儀さを(ベンダー側としては)改めて認識する良記事でした。また、さらに言うと、変革の難しさは、変革対象の違いはあれど、古今東西大きく変化することもないことに気付かされました。

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