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晴れを探しまくったら、テキサス州の地名に詳しくなってしまったの巻

今回はあえて文章だけで表現することにチャレンジ!
どうせ日食はスマホのカメラでは映らないし。

朝が弱い夫もこの日だけは早起き。
前日からテレビ番組のお天気情報を入念にチェックして、候補地の目星をつけていた。
朝、改めて予報を確認して、今一度考える。

日食が北米大陸を横断していくわけだけど、その経路に入っていて、なおかつ晴れそうな地域……。
もちろん、ダラスで観測できるならそれに越したことはないけど、お昼頃は曇りの予報で、微妙。
帰りの飛行機は夜なので、レンタカーで晴れを求めて行ける所まで行ってみる?
直前まで決めかねていたけど、夫は意を決して、移動する方に賭けてみることにした。

早めにホテルをチェックアウト。
……にもかかわらず、空港のレンタカーの受付カウンターで、何か不具合があったのか、1時間くらい足止めを食らう。
それでもめげずに、日食を観測するための最善策を淡々ととっていく夫。
こんなに情熱的な夫は見たことないぞ。

さすがはテキサス、何もない平地がひたすら続いて、次の町までが遠い。
ダラスの国際空港から北東へ1時間強。
適当な田舎まちに着いた。
建物がなく、落ち着いて観測できそうな場所にジープを止める。
近くには農場があって、なんだかよく判別できないが、動物がいる。

お天気は薄曇りで時々晴れ間が出る感じ。
私は正直、タイミングによっては観れないんじゃないかな、とも思っていた。

夫はわくわくしているだろう。
なにしろ皆既日食を観るのは初めてだし、次は11年後だから。
私はこの時点ではまだ凄さを知る由もないから、ひまつぶしに耳を澄ませていた。
昨日聴いたのとはまた違う鳥たちの声。数種類聴こえてくる。
ブーーーンと、虫の羽音も。
時折、やや強い風が吹く。

12時半頃、太陽がちょっとずつ欠けはじめた。
なんかよくわかんないけど、これが日食ってやつなのか?
そのまま見るのは危険だから、ペラペラの日食グラスを持参したけど、
どうやって見たらベストなのかわかんなくて、日食グラスを付けたり、外してチラッと見てみたり。
なんかイマイチくっきり見えないなーと、しばし格闘。

午後1時半頃。
空気がひんやりとして、薄暗くなってきた。
薄暗いのに、自分の影はちゃんとある。
曇りとは違う変な感じ。
ヤギだか牛だかがザワつきはじめた。
ニワトリも鳴いている。

突然、辺りがサーーーっと暗くなっていく。
まるで早送りしているように。
そして、ついに、月が太陽にすっぽりと重なった。

なに、これ!?
・・・と、しか言いようがない。
言葉がひとつも見つからないな。

3分くらい続いたのかな、その世界は。
太陽のリングはたしかに見えた。
所々ピンクっぽくも光っているように感じた。

真っ暗ではないけど、日の出の1時間前くらいの暗さで、星も明るく光っていた。

驚いたことに、日食は月と太陽だけで完結しているわけじゃないんだね。
太陽のリングが見えるのは、現象の一部分にしかすぎないんだ。
空気というか世界が全部変わってしまう。
あれ?ここはいったいどこなんだろう。
私だけじゃなく、動物たちもそう思ったに違いない。

その後、また1時間くらいかけて、太陽はゆっくりと元の形に戻っていく。
おぉ、すっかり晴れた。
あんなにひんやりしていた空気も一気に暑くなって、アメリカ南部、内陸地の気候そのものだ。

日本に帰ってきて、夫がふと、自分のスマホの天気機能のリストを見せてきた。
そこにはテキサス州やアーカンソー州の聞いたこともないような地名がずらりと並んでいた。
地図で、日食の経路上にある地名を片っ端からチェックしていったんだね……。
がんばったね……。

今まで当たり前だった、太陽が照らす世界。
月が遮っていくのを全身で感じて、その世界は当たり前じゃないと知った。
ありがとう。