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M-1グランプリの立川志らくによる「(ギャロップ林の)“ハゲかた”がおもしろくない」というコメントに対する盟友ダイアン・西澤評

編集・ライターという仕事柄、いろんなエンタメに触れる機会が多いのに、なにかを楽しんだあと、すぐに咀嚼して文章化するのが苦手…。
いざ書こうとしても、他の原稿の締切が詰まっていて、「そんなことするヒマあるなら、原稿やれや」と怒られるのが怖いため、結局レビューを書くタイミングがなくなってしまう。
そこで、じっくり考えた後で、「いまさらすぎない?」ってタイミングで書く、周回遅れのレビューと銘打って、勝手連載を始めます「いまさら!周回遅れのエンタメレビュー」第1回です。

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●巨人のヒザ、頭が固い恐竜みたい、魔法のかかった木魚みたい

R-1グランプリ2019が開催され、霜降り明星の粗品が史上初の「R-1」「M-1」の2冠に輝いた。気が早い人は、そろそろキングオブコントやR-1グランプリなど、今年のお笑い賞レースは誰が制するのか…という話をする人も現れる時期なんだけど。こんな時期にまで、耳にこびりついて、忘れられない言葉がある。去年のM-1で出現した、このワード。

“ハゲかた”が面白くないーー。

漫才の日本一を決める大会「M-1グランプリ2018」にて、ファイナリストのコンビ・ギャロップの林健が、審査員の立川志らくから、こう評されたのだった。

ハゲかたに、おもしろいもなにもあるか、という気もする。でも、ギャロップのネタは、「自分以外20歳のモデルばかりの合コンに行くことになる」という、自分はモテない見た目であることを強調し、そこをきわだたせておもしろくする内容だった。たしかに、ハゲかたのおもしろさは、重要なポイントだったのだ。

あらためて録画を見直して、コメントをもう少し長めに引用すると、こうだ。

「モニターを見てたんだけど、”ハゲかた”があんまり面白くないんですよね。遠くで見てると面白いけど、モニターで見てると、大して…どこにでもいるハゲだなっていう感じで、あんまり面白くない」

ダウンタウンの松本人志も「言うほどハゲてないねんな」と同調。

林は、その場では「ちゃんとハゲてます」と言い返すも、翌日に配信された「月曜The NIGHT」(AbemaTV)では、「昨日の夕方まで(ハゲかたが)おもしろいと思ってたんですけど…」と後ろ向きな発言をしていた。

しかし、大会終了直後に配信された「世界最速大反省会」では、面白くないハゲであることを、「ツカミに使えるからよかったじゃん」などとイジられ、笑いが生まれていた。

「月曜The NIGHT」(AbemaTV)では、林の頭を例える大喜利が始まり、「巨人のヒザ」「頭が固い恐竜みたい」「魔法のかかった木魚みたい」「後ろむくと富士山に雪積もったみたい」と次々に答えが出ることで笑いが生まれるなど、いわば昨年でいう、上沼恵美子に怒られたマジカルラブリー的な感じで、その後の笑いに変えられる可能性があり、収穫といえるかもしれない。

とはいえ、「“ハゲかた”が面白くない」と言われても、どういう意味? どうすればよかったんだ? という理不尽な言葉のように思える。

●昔の林はもっとコントラスト利いてたやん

ところが、実はこの指摘、的を射た発言であったと同調するお笑い芸人が数人いた。ひとりは、当日の深夜に配信された「M-1打ち上げbyストロングゼロ」(YouTube)でMCを努めた千鳥のノブ。

至近距離で見た結果、「それ言われてあらためて見たら、ロシアの高官のハゲ方に見えるねん。威厳があるから、しっかりしちゃってる」というのだ。

確かに、おもしろというより、外国人風の違和感ないハゲに見えると言われると、そうかもしれない、とすら思えてくる。

加えて、M-1グランプリのファイナリスト経験者である、ダイアンの西澤裕介と津田篤宏。このふたりはギャロップと同期で、仕事での絡みも多く、よく知る間柄だ。

「M-1」開催の直後、12月4日放送の「ダイアンのよなよな…」(ABCラジオ)にて、このようなやり取りをしていた。

西澤
たぶんね、全国放送やから、(ギャロップ・林が、頭の)横を刈っていったと思うねん。あんなきらびやかなセットで、ライトもすごい。ハゲてるよ。ハゲてるけど、横を刈りすぎてスキンヘッドに見える。“おもしろハゲ”がきわだたへん。もったいない。(ネタの最中に)自分のハゲの話もしてたけど、それやったら、横(の髪の毛)をもっと真っ黒にしないと。

おれらが昔、初めて林君を見たとき、横はもっと真っ黒やったから、インパクトがすごかった。「肌色…黒!!」って、バチーンってコントラストやったけど、あんだけ刈って照明炊いたら、肌色に見えるねん。そこがもったいなかった。

津田 
それ、あいつに言うててんで。白髪も染めなあかんねん。フチどらな。メイクと一緒やで。染めて、(ハゲが)わかるようにせえ。それはおれもめっちゃ思った。

西澤
ハゲてるよ。ハゲてるけど、昔の林はもっとコントラスト利いてたやん。そこがもったいなかかった。

津田
あいつ、(髪の毛を)短くすることで、カタナ(お笑いとしての武器という比喩)がボロボロになんねん。もっと濃くして、シャキーン!って切れ味を…。

西澤
わかるよ。おれも林の立場で、あんだけハゲてて、「M-1グランプリ」っていう素晴らしい舞台に出るってなったら、やっぱり横を刈ってしまうと思う(笑)。散髪に行ってしまう。

そこでね、いや、違うんやと。伸ばさないと、蓄えておかないとあかんかった。…っていうのは、1回出ておかないとわからない。帰って自分で見てさ。「あ、ちょっとあんまりハゲがわからないわ。来年は、夏くらいから一切散髪いかへんってとこも仕上げないと」って。

津田
たぶんな、散髪行ったときに、いつもの散髪屋さんも「明日、M-1や」ってなるわけよ。そうなったら力も入ってもうて、いつもより短なってると思う。黒いサインペンで書くくらいの勢いで黒くせなあかんねん。

西澤
もっと横が黒かったら最終決戦残ってたと思う。

津田
これ、冗談ぽく聞こえるかも知れへんけど、これは意外とマジやで。

西澤
ちょっとホンマよ。林も、想定外やったと思う。舞台上がどんな感じかとか、そこまで考えてない。おれらも考えてなかったやん。


古くから知るダイアンのふたりの話を聞いてから、ギャロップのネタをもう一度見ると、たしかに…と思ってしまう部分もある。髪の毛を少し刈る、刈らないで、ウケがまったく変わってしまう可能性があったのだ。

お笑いとは、かくも繊細な部分で、結果が大きく変わってしまう難しいものだとわかる。

いずれにせよ、立川志らくの「ハゲかたがおもしろくない」、松本人志の「あんまりハゲてない」という言葉は、ただギャロップをおいしくしてあげようとした優しさからくるボケだったのではなく、意外とするどい批評だったのかもしれない。

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こんな感じで、「いまさらその話?」というレビューを、周回遅れで書き散らしていきます。同じような題材で、似たような原稿ばっかり並ぶウェブニュース業界へのアンチテーゼとして、題材が古いという、斜め上のずらし方で、好き勝手に書き散らしていく。インターネッツはもっと自由でいいはずだ!

フリー編集・ライター 森祐介 
過去の仕事実績 https://note.mu/mori_yusuke/n/n90c5f9e53b90

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