ITPで問われるアフィリエイト広告の価値について
ヤフーがアフィリエイトサイトの広告出稿をNGにしたり、グーグルのコアアップデートでのSEO変動など、アフィリエイト広告を取り巻く状況が変わりつつあります。(そしてアフィリエイト業界的には明るいニュースではない。。)
その中でもSafariに搭載されたITPによって、改めてアフィリエイト広告の価値について考え直す必要ある気がしております。
デジタル広告全体に影響を与えたITPについて
そもそもITP(Intelligent Tracking Prevention)とは、Appleのブラウザ「Safari」に2017年から搭載された、主にCookieというブラウザ機能を用いてサイトを横断するトラッキングをブロックする機能。
ITP以前のデジタル広告業界では、広告効果の計測や、ユーザーターゲティングなどを目的にCookieが利用されていました。
アフィリエイト広告においても、Cookie利用して「どのアフィリエイトサイトを閲覧してから商品が買われた」を計測し、成果報酬型の広告を展開していました。そのためアフィリエイト業界でもITP機能がONになっているユーザーの動きも測定できるよう、技術的な対応がなされてきました。
※少し古いですがアフィリエイト業界の対応について
ITP2.xが来た!
そんなITP機能ですが、今年になって発表されたITP2.1とITP2.2によってアフィリエイト業界が揺れています。
ITP2.1ではざっくり「アフィリエイトASPの提供する一部の計測方法では、Cookieの有効期限が7日に制限され、8日以上経過したものは削除され計測不可となる」というものです。また、今年の4月に発表されたITP2.2では「Cookie有効期限がITP2.1より更に短縮され最長1日」とアップデートが予告されています。(かなりざっくり解説です。計測方法は複数あり、ITPの影響を受けないパターンもあります。)
今までアフィリエイト広告では、初回の広告接触から30~90日以内であれば「アフィリエイト広告を見て買った」として成果報酬を各メディアに支払っていました。これが技術上7日や1日以内となるのであれば、アフィリエイトの広告費全体が減少するはずです。
アフィリエイト広告主向けのツールを提供しているものとしてはあまり状況はよくありません。幸い提供しているツールではITP2.1向けのアップデートでITP2.2の影響も受けない可能性が高く短期的には問題ありません。ですが今主流となっている計測方法も今後、ITPにブロックされる可能性が高くあまり楽観視はできません。
ITPの今後の展開
そもそもITPはSafariユーザーのプライバシー保護のために搭載されました。
下記ツイートでも指摘されている通り、今後も反発を避けながら着々とアップデートは続くもの思われます。
ポストITP時代を予想
イタチごっこが終着点へ
ITP3.0など、現行の計測方法をブロックするアップデートがあると、計測ツールのベンダーは更にITP3.0対応のアップデートをする、、、とイタチごっこは当分続くものと思います。
ただCookieなどの技術はブラウザを便利に使うためにも利用されています。プライバシー保護を優先してユーザー利便性を犠牲にするような、ブラウザとして超えちゃいけないラインは踏み越えられないはずです。最終的にはそのラインを跨ぐ「ITP対応」が主流になった場合、ITPのアップデートも終わるかもしれません。しかしその対応方法はかなり広告出稿側に負担を強いる(少なくとも今主流の計測タグの設置だけでは済まなさそう)ものになりそうなので、広告出稿側の本気度が必要になるはずです。
成果報酬から純広告寄りに
ITPでアフィリエイトだけでなくリターゲティングやセグメント化が難しくなると、計測精度や予算効率が悪化します。究極的には広告出稿側がその広告をクリックしたかが分からない程にブラウザ側で制御されるようになると、純広告での解決が主流になるかもしれない。
成果報酬のハイブリットタイプが生まれるかも
(たぶん実運用で採用されることは無いと思うが理論上は。。という感じ)Chromeがsafari相当のプライバシー保護をやらない、という前提でsafariの計測を諦めてChromeユーザーと同じ動きとしてカウントする。この方法であれば精度の落ちた成果報酬型広告として運用できるかもしれない。
(※追記:Chromeもプライバシー保護の動きが出てきましたね!GoogleとAppleだとデジタル広告におけるポジションが異なるので動向に注意したいです)
ITPで改めて問われるアフィリエイト広告の価値
アフィリエイト広告の特徴は大きく「成果報酬型」であることと「提携メディア主体で広告を掲載する」がある。実際に広告効果が出てから(買われてから)広告費を支払えばいいので、広告の出稿側と掲載側とが提携を結びやすい利点がある。そこへITPがやってきて、広告効果が出ているかどうかが不明瞭になるようになりました。
これからは広告出稿側の本気度が問われる
成果報酬型では、「広告を見た人が商品を買ったかどうか」が担保されなければならず、他の高い計測精度が求められる。この手法を続けるには広告主側に今以上の対応コストが掛かり、アフィリエイト広告を始めるにはそれなりの期待が必要になります。「とりあえずアフィリエイトASPを登録してみて放置」という広告主は減り、温度感の高い案件が比率として多くなるはず。
成果報酬はメディアにとっても最良なのか
アフィリエイト広告はマネタイズの一つなので、成果報酬にこだわらずとも他にもマネタイズのやりようはあるはずです。そのため「成果報酬型での計測精度が高い案件は成果報酬型、そうでない場合はクリック報酬型」など、マネタイズ手法が多様化するかもしれません。
それでも成果報酬型をやりたい気持ちは変わらない
(アフィリエイト広告に関わっているため願望も含みますが)ITPなど外的要因は良くないものの、成果報酬型で広告を出したいという要望は無くならないはずです。広告効果が出てから報酬を払える、というのは広告枠を売る方も買う方も利点が多い。ただしこれからはベターだからではなくマスト条件で成果報酬が選ばれる時代が来るはずです。
アフィリエイト業界はその手法の先駆者なので、プライバシー保護時代における成果報酬型広告のスタンダードを模索できる状況にあります。アフィリエイトに携わっている一人としては、動向としても技術面でもその動きを見誤らないよう動いていこうと思います。