森見登美彦氏とわたし【聖地に住む編】太陽の塔の巻

わたしが東京と京都との遠距離恋愛に耐えかねて、京都の恋人宅へ転がり込むように移住したことは、前回の「森見登美彦氏とわたし【聖地に住む編】プロローグ」で記述した通りだ。

その転がり込んだ家というのが、出町柳の界隈にあった。某関西最高学府もご近所と言える場所であり、鴨川に面した素敵な立地である。

そんな立地で暮らせば、ありとあらゆる森見作品を感じながら暮らせた。
今回は「太陽の塔の巻」と称して、当時の思い出を振り返っていきたいと思う。

まず、転がり込んで間もなく、わたしは出町界隈のホームセンターで自転車を購入した。
折り畳みができる、タイヤが小さいタイプのものである。
ちんまり可愛い愛車に、わたしは「まさみ号」と名付けた。
わたしが中学時代から想いを寄せている女優さんの名前にあやかったものだ。
そんな彼女は、ある朝、忽然と姿を消した。括り付けた釣り竿と一緒に、マンションの駐輪場から姿をくらましたのである。
結局、彼女との再会は叶わなかった。

それから、祇園界隈へ出向いて、四条通沿いの古びた店舗で太陽電池で動くモダアンな招き猫を購入した。
(なお、その後はその隣のお土産屋でしばらくアルバイトをしていた)
その年のクリスマスに恋人の本棚にこっそりとそれを陳列したのだが、結局気付かれることはなかったような覚えがある。

深夜の出町柳界隈を出歩いているうちに、アヤシゲな屋台ラーメンを発見した。
聞くところによると、猫でダシをとっているというが、真偽は定かではない。
なんだか辛いニンニクみたいのを多めに入れてもらうのが好きだった。
店主のブログをチェックして足しげく通ったものだ。
それももう、口にできないと思うと、胸に迫るものがある。

そして、太陽の塔。
中学の修学旅行でバスから眺めた程度だった太陽の塔を見に行ったのは、もっとずっと後のことだった。
もう、例の年上の恋人とはサヨナラをした後だった。
それでも、太陽の塔で待ち合わせをしていた。
結局、待ち人は来なかった。
太陽の塔はでんっと構えて、「そんな人のことなんて、忘れたらええやん」という感じに大きな懐でわたしを受け入れてくれた。


次回
「森見登美彦氏とわたし【聖地に住む編】四畳半神話大系の巻」




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