映画感想文-夜明けのすべて

推しの松村北斗が出演しているということで観てきた映画。

まず先に自分語りになってしまうのだけど、
わたしはさほど映画を見ない。
逃げ場がない、というのがその大きな理由。
ストーリー上必要であっても、共感性羞恥も、誰かががっつり傷つく場面も
結構しんどいと思ってしまう。家で見る時はそういう場面は倍速にしちゃう。
できれば先にネタバレを見たい。(これは割と友人各位から理解を得られない)

そんなわたしが
観てよかった と思い、
救われた と思い、
折に触れて繰り返し観たい と思った映画。

ありがとうの気持ちを込めて感想文を残すことにしました。


月に一度、PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられなくなる藤沢さんはある日、同僚・山添くんのとある小さな行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう。だが、転職してきたばかりだというのに、やる気がなさそうに見えていた山添くんもまたパニック障害を抱えていて、様々なことをあきらめ、生きがいも気力も失っていたのだった。職場の人たちの理解に支えられながら、友達でも恋人でもないけれど、どこか同志のような特別な気持ちが芽生えていく二人。いつしか、自分の症状は改善されなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。

STORY(夜明けのすべて 公式サイトより)

相手の人生を丸ごと背負うほどの関係性ではなくても、
同じ会社に勤めていただけ
ただ隣の席に居合わせただけ
たったそれだけの関係性の人に、
逆にたったそれだけの関係性だからこそ、
救われたりすることがあるのだろう。

自分のとった行動で相手を「救った」と思えることで
逆に自分が救われたりもする。

自分が何もしていなくても、
目の前の誰かが健やかに生きてくれることが
救いになってくれたりする。

藤沢さんが、一生懸命いろんな手段を使って
PMSを克服して普通になろうとしているところは
いじらしくて見ていて切なくなっちゃう。
上白石萌音ちゃんの演技がうまくて
PMSでキレている時の藤沢さんは、マジで近くにいて欲しくない人。
普段の藤沢さんは穏やかな人なのに。

けどPMSだからこそ、人の弱いところを見つけられる人になれたのかもしれない。
山添くんのパニックの原因に気づくことができたように。
PMSがあってよかったとはならないけど
今の藤沢さんになれているのはPMSがあるから。とも言える。

山添くんもそう。
山添くんの人生においては、パニック障害になって良かったことはきっとないだろうし、ならなければそれに越したことはなかった。
だけど、なってしまったからこそ得られた視点もある。気付きもある。

わたしは、
人がどんな特質を持って生まれてきたか
どんな過去を持っているか
過ぎてしまったことそれ自体には良し悪しはなくて
その特質を持っている/経験をした、
その後どういう人になろうとしているか が
その人たらしめるものなのだと思っている。
というかそうじゃないと、生きていくということがしんどくなっちゃう。

過去は変えられないというけれど、
過去だって変えられるものなのだ。

だから二人も、PMSがなければ、パニック障害にならなければ、
きっともっと楽な人生だったはずだろうに、と切なくもなるけれど
でも、今、「ちゃんと生きよう」ともがいているあなたたちは素敵だから、自分を嫌いにならないで、不幸にならないで、と思う。
その温かい目線が藤沢さんと山添くんを反射して、自分に返ってくるような気がする。

この映画では大きな事件は起きない。
自分があなたを幸せにする!!という壮大なストーリーでもない。
けれど、「あなたも幸せだったらいいな」という他者に向ける気持ちは、
向けられる側からすると、思った以上に暖かなものです。
観終わった後には、手の届く範囲の人たちが健やかでありますように、という祈りのような願いと、その人たちの顔が、自分の胸にぼや〜と広がってくる気がする。

映画の中の登場人物たちも、二人に対してそんな目線を向けている。
それが、「人と人が隣り合わせるっていいもんだな」と思わせてくれる。
ちょうどこの頃、過去の選択や人に投げつけた言葉などでモヤモヤして心がぐちゃぐちゃだった頃なので、大げさではなく「救われた」と思った。

ちなみにわたしは山添くんの広告代理店時代の上司の方の役がほんとうに好きです。彼と山添くんのシーンでは2度ほど泣いてしまった。

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