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タロット 15:悪魔(The DEVIL)悪魔は悪者か?~”常識”を超えた先の願いを叶える異端者の物語

本日のカードの解釈は悪魔。

悪魔も塔や死神と並んで嫌なカードですよね。
このカードが出たら身構えてしまう方も多いかもしれません。

塔の記事はこちら(塔も良い意味あります、の記事)


ですが、悪魔もそんな悪悪しい意味だけではありませんよ!

悪魔は「常識を越える欲望に対して抗えない力を持つ=叶えてしまう」みたいな意味や力を持っています。

常識って、誰の・なんの常識でしょうね??
その常識って正しいものなのでしょうか????

常識を越えるパワーに出会ったとき、あなたはその欲望を前に、振り回される側になるか・振り回す側に立つか、そのパワーを上手く享受できる側に立てるか。
それによって悪魔のカードの解釈は変わりますよ???

言うことで、塔のカードの一つ前、悪魔のカードについて見ていきましょう!

先ずは、悪魔の一般的な意味を知らべてみる

正位置の意味
裏切り、拘束、堕落、束縛、誘惑、悪循環、嗜虐的、破天荒、憎悪、嫉妬心、憎しみ、恨み、根に持つ、憤怒、破滅。

逆位置の意味
回復、覚醒、新たな出会い、リセット、生真面目、反省、猛省、出直し、転生。

wikipedia

正位置はなかなか嫌なワードが並びます。
逆位置はそこから反転したワードになりますが、リセットとかは別のカードでも意味が出そうですね。

ではなぜRWSの悪魔のカードがここにたどり着いたのか、成り立ちを見ていきましょう。

15:The Devil(悪魔)の成り立ち

塔のカードと同じように、悪魔のカードもタロットの基礎と言われているVisconti版の最初の方の版には含まれていませんでした。

これは貴族・宮廷サロンに属する方達からしたら「悪魔は特に忌み嫌われる存在」だったからかもしれません。

なぜそこまで「忌み嫌われる存在」だったのか。
まずは悪魔という存在について紐解いていきましょう。

【悪魔になった天使ルシファー】キリスト教における悪魔という”概念”

ルシファーというお名前は一度くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか?
日本では堕天使などとも言われています。

堕天使という日本語訳がとても秀逸なのですが、ルシファーとは「元・天使」でした、天使から堕ちた天使。
しかも天使時代は天使の中でも最上級に一番偉い天使の長であり、最も美しく光り輝く羽を持っていたと言われています。

ですが彼は神に反旗を翻したため、地上へと追放されました。

追放された彼は、その後「悪魔」「サタン」と呼ばれるようになります。

ルシファーの名前の由来は、旧約聖書「イザヤ書」14章12節「輝く者が天より墜ちた」という比喩表現に端を発しています。
天から落ちた人、それがルシファー。
天にいた天使はのちに、悪魔・サタンと言われるようになります。

こちらは罪人を食べているサタンを描いたもの(中央下)
タロットの悪魔に近い印象で、ヤギの角がしっかり生えています。
サタン(悪魔)は地獄の支配人であり、罪人を食べる最悪かつ邪悪で最下等な生き物的な描き方をされています。

Giotto di Bondone Last Judgement

ちなみに聖書では「悪魔・サタン」については「概念」であって、具体的な見た目の記述はありません。

ヤギの角が生えていたり、人を食べていたりするのは、後々の人々の解釈により根付いてきたものです。

「天国と地獄」というタイトルで、最下部(地獄)の中心で人を食べているのを描かれているのも悪魔。

Maestro dell'Avicenna Paradiso e Inferno

【異教徒の人】ルシファーはなぜ悪魔と呼ばれるようになったか

それは、神に反旗を翻し、神の教えに背いたからです。
神にとってみれば「反逆者」

キリスト教で言えば、キリスト教の教義に背く人・反逆者=「異教徒」と呼ばれるカテゴリーにいる人です。

異教徒とは、教義を教えるもの・教えられるもの、それぞれにとって脅威です。確実な脅威。

現代もそうですが、戦争というのは昔から、大体が①隣り合う国同士、もしくは②宗教を発端にします。

異教徒同士は戦争の発端となる。
それくらい「違う宗教の者」というのは脅威であり、敵でした。

甘い言葉で信徒たちを唆し、教義から道を外す(改宗)させようとする敵。
それはもう「ある教義の視点から見たら、最たる悍ましい存在のもの=悪魔」以外の何者でもないわけで。

【悪魔の囁き】異教徒の悪魔は、あなたに何を唆す(そそのかす)のか?

旧約聖書からユダヤ教、キリスト教、イスラム教へと引き継がれてなお偉大な燭天使ミカエルにやられてしまうサタンの絵が以下。

Lucas Kilian The Archangel Michael Defeating Satan, in a Niche

美しく描かれているミカエルとは対照的に醜く下等な生き物として表せられる悪魔。

悪魔(サタン・ルシファー)はあなたに何をそそのかしたのでしょうか?

それは「神の教義と反すること」です。

キリスト教であれば、キリスト教の教義に反すること。
イスラム教であれば、それを。ユダヤ教であれば、そのことを。

教義とは決して楽しく美しいものだけが並べられているわけではありません。
まず「人の持っている欲」を慎ましくコントロールするものが基本的な宗教の大方の方針です。
それは美徳とするもの…美しいかもしれませんが、決してヒトが手放しで享受できるものばかりではありません。
むしろ、けっこう厳しい。

教義とは常識のことでもあります。
人を傷つけてはいけないとか、ものを盗んではいけない、不倫をしてはいけないし、美味しい豚肉は食べてはならないところもある。

「ならない」と厳しく決められているのは、それが人にとって本来「甘美」なものだからです。

人間の眠らされていた欲望を呼び覚まし、具現化してしまう悪魔

7つの大罪を下に並べます。
半分くらいは人の本能を刺激するような人生の甘いキャンディーではないでしょうか?

  1. 「貪食」

  2. 「淫蕩」

  3. 「金銭欲」

  4. 「悲嘆(心痛)」

  5. 「怒り」

  6. 「アケーディア(嫌気、霊的怠惰)」

  7. 「虚栄心(自惚れ)」


「傲慢」「悪魔の囁き」は教義とは異なる、人にとってとても甘美な言葉をあなたに並べていきます。
お金・性愛・欲、欲、欲。

教義に反するもの=美しく・甘いもので、あなたを誘い込むのが悪魔です。

甘美な囁き。
甘く美しいものを目の前にして、生涯をかけてこれらを完璧にあなたの人生から退けられますか?

難しいですよね。。。
それくらい、悪魔の甘い囁きは人にとって絶大なパワーを誇るのです。

なぜなら、それは人間の眠っている欲望を呼び起こすから。
それこそ戦争を起こし、人が人を殺める世界を肯定するくらいのパワーをも持つのです。

異教徒は邪教の野蛮人

古代ローマでは、異教を崇拝すること=ペイガニズムという概念が生まれました。
このペイガニズムには侮辱的意味をはらんでおり、野蛮人、異教徒、邪宗、邪宗門を信じる者に相当する言葉として表現されていました。

異教徒は野蛮人なんです。
すごい言い草ですけどね。
それぐらい、違う宗教の人とは相容れないんです。

ヴィスコンティ版で悪魔のカードが当初なかったのは、これらの理由から歴然としています。

絶大な権力を持ちローマ教皇まで輩出した由緒ある家柄かつキリスト教のヴィスコンティ家を脅かすような異教徒=悪魔という概念は忌み嫌われて当然だったのです。

15:The Devil(悪魔)の解釈

悪魔の初期のカードはこのようなものでした。悪魔のみ。

当時サタンと蛇はセット

次第に仲間が増えてきます。
この時点で手前に描かれているのは人間ではなく悪魔の世界の仲間(手下)でした。

マルセイユタロットでも人ではなく、悪魔の仲間(手下)。
手下は男女別で表現されるようになりました。
マルセイユタロットの悪魔はコミカルに描かれています。

もし私のタロット解釈シリーズをお読み頂いているのであればなんとなくお気づきでしょうが、RWSはマルセイユタロットをベースにながらそれより過去のタロットの要素を盛り込んで作られていきました。

RWS版では、手下は男女に。
しかしこの男女も人間ではありません。
シッポや角をみればわかりますが、人間より下等(当時の世界観で)な動物的なものとして描かれています。

まぁそうですよね、悪魔(異教徒)の話を聞いて悪魔の囁きに魅了されてしまった者たちなど、教義の世界からみたら「人あらず者」なわけですから。

恋人のカードとの対比?司祭のカードとの対比??

RWS版では恋人のカードとの対比がよく取り上げられます。

悪魔のほうが存在感は大きい


構図は本当にそっくり。
なんといいますか、恋人たちの末路を嘲笑うかのような恣意的な意図も感じます。


ヘビに唆される前のイブと、アダムが恋人たちのカードとして教義の「正」の世界であれば、悪魔は教義の「対」となる世界なんでしょう。


さて、興味深いのはRWS版のベースともなるマルセイユタロット版。

教皇   悪魔   恋人


こちらは恋人のカードではなく、教皇のカードとの対比が顕著です。

手前にはお抱えの部下(手下)が左右対称に配置されています。
悪魔のカードは教皇を嘲笑うかのように、同じ構図で、しかし茶化されて描かれています。

このことからも、マルセイユ版の悪魔のカードの解釈のもとは教皇の反対の存在、異教徒がベースであることがうかがえるでしょう。

悪魔のシンボルワードは「異教徒の夢を叶える常識はずれの力」

眠っているあなたの欲望を呼び覚まし、具現化させる悪魔

あなたの欲望は何でしょう?
お金?
人には言えないような道ならぬ愛??
もっと黒くて背徳的な感情?

悪魔のカードはあなたの常識から外れた道ならぬ欲望について、「こっちにくれば、それを叶えてあげよう」と囁きます。

すでに道を外し深い地に身を落とした人とも動物ともつかない手下と共に、あなたがこちらに足を踏み入れるのを待っています。

悪魔は決してあなたを縛りつけません。
なぜなら、手下たちもいつでも自分の意思で逃げ出せるほど緩い首輪しか付けられていませんから。

ゆるゆるの首輪

手下の二人は、自らの意思で今も悪魔と一緒にいるのです。

それはなぜか?

悪魔は手下の「常識はずれの道ならぬ願望」で誘い込み、叶えてくれているからです。

悪魔「常識の範囲の普通でいいのなら、どうぞ一般人の生活を」

邪教の者が囁く甘い言葉は、教義から見たら「常識はずれの道ならぬ欲望」を掻き立てるものです。

悪魔があなたに漬け込むのは、この「甘美な、道ならぬ常識はずれの欲望です」

常識的な欲望「白馬の王子様と結婚したい」だとか「慎ましくとも幸せに暮らしたい」だとか、そういう人並みな欲望など悪魔が関わるまでもありません。

悪魔はこう言います、「常識的に普通の範囲で良いなら、どうぞそこら辺の一般人と同じ生活して満足してればいいじゃない」

悪魔の仕事は「常識を外れた欲望をあなたから呼び起こして、具現化しようとするパワーを使う」ことです。
自分の欲望のためなら、人まで喰っちまえるようなね。

あなたの中で混沌と眠っている欲望をあなたがはっきりと直視できたのであれば、悪魔は喜んでその具現化をお手伝いしますよ。

悪魔は地獄の門番です。
ただその地獄というのは、「教義(常識)から見た地獄」でしかありません。

その教義は正しいのでしょうか?
常識とはなんでしょうか?
それはお隣でも常識なことなのでしょうか?

牛肉は決して食べてはならない常識・世界で行きている人のそばで、牛丼を食べる人がいる。
火葬は地獄の業火に焼かれる事と忌み嫌われる常識・世界の人が、火葬が一般的な土地に住んでいる。

それくらい教義や常識は、世界のルールと言うわけではありません。

常識を超えるかは、あなた次第。
違う世界への門をくぐるかどうかは、あなた次第。
逃げるも止どまるかもあなた次第。

悪魔のリーディング:森下あかり的解釈

常識は概念であり、明文化されたルールでもない

一般的な悪魔の解釈ももちろん使いますが、私の悪魔のカードの解釈のベースは「常識はずれの道ならぬ欲望に対して、どの立場に立つか?」ということをまず問われているということを重視しています。

悪魔のカードが出た時


正位置では、
裏切り、拘束、堕落、束縛、誘惑、嗜虐的、破天荒、憎悪、嫉妬心、憎しみ、恨み、根に持つ、憤怒、破滅。
こういった「同じ常識の世界の隣人には大声で言えないような常識はずれなこと」を、「お前がそれを受け止めて直視するのであれば、悪魔の俺が叶えてやろう。」と言われていると解釈しています。

逆位置では、
そういった常識外れの欲望に対して、直視しない・もしくはあなたが我に帰るのであれば「常識の世界にさっさと戻れよ、いつも通りの普通の生活が待ってるから」と、悪魔にある意味見放されたと解釈します。

「常識はずれ」って

仕事において
とりあえず今の日本においては全く新しい仕事にチャレンジしてみる、賭けてみる、というのは悪魔の言う常識はずれに該当します。
ベンチャー企業が「今まで他所がやってないことででかいことやってやる!」とかも悪魔の担当に当てはまります。
常識の枠を出ると言うのが一般的にもポジティブな場合になるのであれば、悪魔がでてもあんまり悪い意味はないです。
出世争いの末役員の椅子を狙いたいのであれば、正当で王道なことばかりではない道でしょう。上司にゴマスリへつらいするくらい全然余裕なら、皇帝のカードじゃなくても、悪魔のカードが出ても喜べばよろしいかと。
ただ横領なども悪魔の分野ですから、カードへの質問が何なのかはとても重要です。

金銭において
「臨時のお小遣いがちょっと欲しいなー」程度では悪魔は出てきませんが、かーなーーーり大きなお金の野望を持っている場合に悪魔のカードが出たのなら、悪魔は叶えてくれますよ。
上にも書きましたが、横領等も悪魔の担当なので気をつけて。

恋愛において
理想の王子様が向こうからやってきてほしいなんて夢みがちなこと言っていると悪魔はしらけますが、道ならぬ恋でも何が何でも相手を手に入れてみると思うのなら、悪魔は俄然と張り切りるでしょう。

人の「75日以上続きそうなヒソヒソ噂話」以上の欲望に対して悪魔のカードが出たら、悪魔はあなたの絶対的な味方になると思います。

悪魔は問いかける「この門をくぐるのかどうなのか」


悪魔のカードによってあなたがあなたの欲望が揺り起こされた時、その時は心して。
やっぱりそれは「常識はずれ」だから。

常識から外れたくなければ、回れ右をして悪魔の甘い囁きには耳を塞ぐことです。

悪魔のカードは一応、願いを叶える前にあなたに問いかけてくれています。
「この門をくぐるのかどうなのか?」って。
逃げるも進むも、あなた次第

腹をくくって常識や教義を逸脱するなら、悪魔は喜んで応援します。







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