「わがままに生きろ。」(青木志貴)を読んだ

青木志貴さんのエッセイ「わがままに生きろ。」を読んだので、その感想です。

青木志貴さんと本書について

声優をはじめとして、ファッションブランドのプロデュースやモデル、舞台さらにはYouTuberとして活動している青木志貴さん。

本書は、そんな青木さんの生い立ちや自身の性自認に対する苦悩、それにまつわる周りとの衝突などを赤裸々に綴ったエッセイです。

中盤から終盤にかけては、今のキャリアに至るまでの道のりや将来の夢についても語っています。
(個人的には、このあたりの話が面白く、刺激をうけるものでした。)

私自身の青木志貴さんに対する認識はというと、非常にぼんやりとしたものでした。
アイドルマスターシンデレラガールズでその存在を知り、一人称が「僕」であったり、周囲から「志貴くん」と呼ばれていたり、特徴的な人だな程度の認識でした。

このエッセイを読んで、青木さんの「僕」の背景を知ることができたこと、さらにはこの人からは全く予想もしていなかった価値観を垣間見ることができたのは嬉しいことでした。

パンセクシャル

エッセイ序盤では、自身の生い立ちや性自認に関する話が語られています。小学校時代からいじめを受けていたり、それに伴う人間関係の不和に触れていたり、なかなかハードな内容が続きます。

その中で、医者から「性別はグラデーション」という言を受けて心が軽くなったというお話がありました。
性別は男か女かという二元的なものではなく、グラデーションのように多様なものであると。
それ以来、性について自由に考えるようになり、自身の性がどうであれ、そして相手の性がどうであれ、好きになった人が好きだというパンセクシャルの考え方に落ち着いていったということです。

心身ともに男であるという感覚が当たり前だった自分にとって、目からウロコが落ちるような気がしました。
性別に縛られない。それは、純然たる一個の人と人との付き合いになることなのでしょう。

また、これは先入観や偏見にとらわれずに、そこにある事実に目を凝らして物事をみる考え方のようにも思いました。ここでは性別の話ですが、それにとどまらず他の様々な出来事にも適用できることだとも感じています。

こう言うと話が突拍子もない所に飛躍するようですが、新しい人類が誕生したような、そんな不思議な感覚があります。
ちょうど、アーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」を読んだ時のような。

「青木志貴」という商品

私が本書を読んで驚いたことは、青木さん自身が「青木志貴」を徹底的に分析し、自分という商品をどうやって売り出すかということを常に考えていることでした。

将来、どんな自分になりたいのか。
そのために、まず自分はどういう立場にいて、目標地点に辿り着くには、どの道を進めばよいのか。
想いだけが先走るのではなくて、冷静に次の一手について考えている。そんな印象を持ちました。

そして、それを実現していくだけの行動力のある人だとも思いました。
声優養成所や大塚明夫さんとのお話は、まさにそれを象徴する出来事だと感じていて、何かを成し遂げる人の姿をみたような気がしました。
また、夢や目標を達成するという強い思いや覚悟とは何かということをみせつけられたようでした。

冒頭でも触れましたが、青木さんは本職である声優業のほかにモデルやファッションブランドのプロデュースを手掛けています。
また、今後の夢として芸能事務所の立ち上げやバーの経営などについてもお話をしています。

声優としての活動が一番であることや、声優以外の活動に対する声を受け止めたうえで、こうした夢を語っています。
本書を読み進めていき、それらの夢が「青木志貴」という商品を高めていくために必要な要素なのだと気づきました。

本業として地盤をしっかり固めたうえで、自分のやりたいことやできることを広げていきたいという意識は、職業人として健全な姿だと思いますし、私自身もこうありたいと感じました。

終わりに

終盤で語られる自身の職業観や夢の話は、刺激を受けるものばかりでした。
そして、その根底には幼少期から続いてきた性自認に関する苦悩があり、それを克服したことが、現在の原動力になっているのだと感じました。

また、今まで青木志貴さんがどういう方なのかあまり知りませんでしたが、本書を通じて物事の見方や価値観に触れて、とても興味が湧き、応援していきたいと思いました。

これは、青木さんのファンにとっても嬉しい内容であると同時に、全く知らない方にとっても生き方の指南になるものではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?