シャキーン!最終回によせて

2022年3月31日、14年間続いたシャキーン!の放送が最終回を迎えました。私は2016年か2017年頃から、つまりめいちゃん・モモエさんがMCの時代から観てきました(従って、主にその時代以降の回顧となります)。

友人に録画した放送を見せてもらったのが始まりでしたが、いつからか平日の朝7時(2021年度は6時40分)にこの番組を観るのが習慣になり、ここまでハマるとは思ってもみませんでした。

シャキーン!と目覚める瞬間

シャキーン!

番組タイトルにもなっているのこのフレーズ。
私がこの番組から受け取ってきたものは一体何だったのだろうかと思いを巡らせてみると、必ずこの言葉に行きつきます。

目が覚める瞬間、何かをひらめく瞬間、今まで見えていなかったものが見える瞬間、新しい発見を喜び、驚く瞬間。その一瞬一瞬の感情がここに凝縮されているような気がしています。
そしてそれが、番組コーナーの一つひとつから、間に挟まるスタジオでのトークから伝わってくるのです。

印象に残っているコーナーを挙げればきりがありません。
その中でも、当たり前のことを当たり前と片付けずに、そこから新しい発見をするという意味では「生きている」以上のコーナーはないでしょう。

これは先輩と後輩社員が、日常の何気ない動作を、まるで今初めてそれを知ったかのようにして、その感動を共有するコーナーでした(例えば、肘で匂いを嗅ぐことはできないが、鼻で匂いを嗅ぐことができる...など)。

事実、肘で匂いを嗅ぐことはできず、鼻を使えば匂いを嗅ぐことができます。そんな意識するまでもない当たり前の動作に焦点を当てて、考えてみる面白さ。
最初は何てこともありませんが、このコーナーを見ていくうちに、肘で匂いを嗅ぐことができず、鼻で匂いを嗅ぐことができるという当たり前の事実に驚き、感動すら覚えるのです。
「センス・オブ・ワンダー」という言葉がありますが、これに近いものといえるでしょうか。そんな感覚を思い出させてくれた屈指の名コーナーでした。

「生きている」に代表されるように、各コーナーの全てが、紛れもなくシャキーン!の番組コンセプトを体現していたように思います。

シャキーン!ミュージック

シャキーン!の思い出を語るうえで、数々の名曲が生み出されたシャキーン!ミュージックを抜きにすることはできないでしょう。

最終回の直前には、シャキーン!ザ・ライブと題して、歴代の名曲を歴代MCとアーティストがお送りする豪華な企画が打ち出されたことも記憶に新しいですね。

初めに「数々の名曲」と書きましたが、厳密に言うとこれは誤りで、シャキーン!ミュージックはその全てが名曲で、一曲一曲が「シャキーン!」という番組そのものを体現していたように思います。
ロック、カントリー調、ポップ、民族音楽など、楽曲の雰囲気は違えど、それらの根っこにあるものは共通していて、常に同じベクトルを向いていたと感じています。

実際、シャキーン!楽曲を手掛けたサキタハヂメさんは、下記のインタビューにおいて、”「シャキーン!」らしくない曲は1曲もない”と話しています。

月替わりで発表されるシャキーン!ミュージックから、いくつものメッセージを受け取ってきました。そんな中で、初めて聴いた時の衝撃が忘れらない曲が、馬喰町バンドの「終わる瞬間」です。

民族音楽風の曲調と共に「死」へと向かっていく瞬間を伝える、この楽曲も「シャキーン!」のコンセプトを体現したものといえるでしょう。

誰もが終わりへと進んでいく。いつか誰もが終わってしまうからこそ、今この瞬間にあるものに気付き、喜び、悲しみ、驚き、それらを一つずつ積み上げていく。そうして終わりを迎えたものが、また始まりとなって環のように連なっていく。その一瞬一瞬が、「魔法みたいな気分」であり「きらり夢をみて始まる気分」なのかもしれません。

シャキーン!ミュージックには当然映像もついているわけですが、「終わる瞬間」はこの点においても飛びぬけています。
それが、土屋萌児さんによる切り絵のアニメーションです。土屋さんはシャキーン!ミュージック以外でも「惑星兄弟」や「ハッタケさん」などのコーナーを担当されていました。
それらも素晴らしいのですが、この曲のアニメーションに至っては、楽曲の雰囲気や盛り上がりと共に、みるみる場面が転換し、物語が展開され、観る者を引き込む描写はまさに圧巻です。

その他にも、ザ・ぶどうかんズのことなど、まだまだ書きたいことはありますが長くなりすぎてしまうので、このあたりにしておきます。
いずれにしても、シャキーン!を支えた名曲からも大切なことを受け取ったことは確かです。

シャキーン!を彩ったスターたち

番組MC陣、各コーナーの出演者、シャキーン!ミュージックのアーティスト。皆さんそれぞれが、シャキーン!を彩ったスターでした。

「いちご」、「うさぎ」、「オッケーお茶の間」のコーナーに登場した玉城ティナさんにはいつも視線がくぎ付けだったし、「テレコRAP」や「ノリノリピート」で笑顔を振りまいた佐藤玲さんもしっかりと記憶に残っています。
クリエイター陣でいうと、テニスコートの繰り出す言葉遊びに夢中になり、岡江真一郎さんの生み出す視角トリックにも刺激を受けっぱなしでした。

そんな中で、やはりMCの存在は大きいです。

ここちゃんがMCに抜擢されてめいちゃんからシャキーン!の種を受け取ったときは、あの助手のここちゃんが!?と思いましたが、みるみるMCとしての捌きぶりが上達し、安心感すらありました。

はるかさんも日に日に大女優(?)としての風格が増し、ムチュウ人が加入してからは、MCというよりお姉さんとしての余裕も感じられました。はるか像プロジェクトで素顔が垣間見えたのも良かったですね。

また、シャキーン!ザ・ライブで、めいちゃんとモモエさんが帰ってきたときには、あの時に受け取っていたものがどっとあふれてきて、感慨深さもひとしおでした。あの時代に、シャキーン!を共にできて良かったなと。
今や、めいちゃんもモモエさんもそれぞれの道に進まれて、勝手にわが子の成長を喜ぶ親の気持ちになっています。

MCといえば、当然忘れられないのがネコッパチとジュモクさん。この2人の掛け合いがなかったらシャキーン!は始まらないと言っても良いでしょう。

ジュモクさんのあの、相槌とも独り言とも区別のつかないぼそぼそと入るコメントと、愛情と悪意が絶妙に入り混じったネコッパチのいじりがあってこそ、あのシャキーン!放送局があったのではないかと思うのです。

シャキーン!を観始めた影響で、エレ片のコント太郎(現在は、エレ片のケツビ)を聴き始めたこともあり、その意味でもこの2人の掛け合いに愛着が生まれていました。

終わりに(嬉しくて寂しいよ)

2022年3月期は、シャキーン!だけでなくEテレ全体に大きな改編が入り、コレナンデ商会の終了も大きなトピックスでした。
また、おかあさんといっしょでは、あつこお姉さんの卒業やガラピコぷ~が一区切りとなりました。

最後のシャキーン!ミュージック「卒業~ここからはるかへ~」に”嬉しくて寂しいよ”という歌詞がありますが、この数日間はまさにそんな気持ちでいっぱいでしたし、今もまだ続いています。

4~5年続いたシャキーン!を観る習慣が急になくなることの戸惑いはありますが、この番組からもらったシャキーンの種は、きっと自分の中で育ち続けることと思います。

この数年は番組の企画や体制で大変なことも続き、視聴者として不安な気持ちもありましたが、14年間番組を届け続けて下さりありがとうございました。

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