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Tokyo Happy Coats『奥の細道』 【B-3】ついにFamily Historyに王手か?!
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(本稿はアメリカのTokyo Happy Coats研究家Roy Baugher氏の許可を得て日本版サテライトコンテンツとして作成、画像や情報などを共有させていただいております。)
■落札できたぞっと、『婦人倶楽部』ぅ。我、感涙す。
このオークション、ウォッチしている先客がひとり居たし、ほんと長かったよ、残り10分が。カウントダウンする「残り時間」見ながら、イライラ+イライラ。気が抜けないから、最後までね。
「オークション・終了」。うれしかったあああ。泣けた、マジで。
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ということで、届いた荷をさっそく開ける。
雑誌を手に取る、パラパラとページを・・・めくれないのだ。もう70年前の雑誌、紙質も悪い、風化がとても進んでいる。手荒く扱えば、サラサラと砂の様に崩壊して指の間からこぼれ落ちそうだ。
ということで、ソローリソロリと記事が載っている「変わり種写真アンデパンダン」のページにたどり着く。あったよ、あった、お目当てが、それも特集の扉に。
◇ ◇ ◇
ページの右縦長に秦玉徳・旭天華夫妻の軽業ショット、そして上半分が”お嬢さん五人”の写真である。
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前回、私がキャプションを推理したが、実際の文章はこうだった。
珍しい体芸一家
東京浅草田島町の秦玉徳(はたぎょくとく)、旭天華さん一家はお嬢さん五人も合わせ揃って体芸狂(マニア)、お掃除など得意の芸でお母さんが踏み台になって疊と天井が一時に綺麗になるという、写真上は秦さん旭さんの片手逆立ち、左上はお嬢さん達のアクロバット・ダンス。
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そして下記画像が、アクロバット・ダンスを披露する五人の写真のアップだ。さらにその下に、Baugher氏提供の空母ミッドウェー艦内紙『Midway Missile』に掲載された1960年の写真を並べてみた。見比べていただきたい。
![](https://assets.st-note.com/img/1720063675315-hxW7UFgepL.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1720063306854-lNua2996bH.jpg?width=800)
一番小さな子(上画像では床に開脚、下画像ではボーカル)がRurikoさんというのは顔立ちからしてまず間違いないと見た。この『婦人倶楽部』の写真は1953年時点での5人だと、私は断言したい!
■Baugher氏のお見立てと家族・関係者への確認、その結果は???
しかしまだ断定はできない。そこで画像をすぐBaugher氏に送って確認してもらった。彼もGLHの5人だと信じるとの意見だが、お互い確証はない。
下記画像は、Baugher氏が画像の人物に該当すると思われる各メンバーの名前を推定で振ったもの。これをTomikoさんやEikoさんのご家族、関係者に送付して返事を待つことにしたのである。
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■返事が来た!
Baugher氏からのメッセージを転載する。
This is what Tomiko’s daughter wrote after asking to show the one photo to her mother:
Tomikoさんの娘さんへ、母親にこの写真を見せてほしいと頼んだ後、こう返事が返ってきた。
—
「こんにちは。多分、これは母たちかと思います。ありがとうございました。」
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This is what Eiko’s grandson wrote about the photo…
はい、おばあちゃんはそれが正しいと言っていました。
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I asked Eiko’s grandson: “Was your grandmother amazed or slightly embarrassed when seeing this? ☺️” (the acrobat photo)
Eikoさんの孫に(アクロバット写真について)「おばあちゃんはこれを見てびっくりした?それともちょっと恥ずかしがった?」と聞いてみました。
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Grandson replied “yes she was amazed”
「はい、彼女は驚いていました」と、孫は答えました。
中〆に、Baugher氏が私に宛てたメッセージを添えよう。
I will probably cry a little today about this photo…I never saw images of them as acrobats. 🥹
今日はこの写真を見て少し泣いてしまうかもしれません…彼女たちがアクロバットをしている姿を今まで見たことがありませんでした。🥹
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■イリュージョン『週刊読売』も入手。さて謎の記事はいったい?
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極めて幸運にも、別のネットフリーマーケットで『週刊読売』1966年12月2日号が出品されていたのを発見した。GLHの五人があの初代・松旭斎天勝の弟子だと書いていた謎の記事が載っているものだ。即入手。
これも『婦人倶楽部』と同じ日に私の手元に届いた。どんな記事か見てみよう。
一瞬、ドキッとした。さすが週刊誌、センセーショナリズムの見本のようなタイトルと内容。1966年といえば、沖縄がまだ日本復帰前の琉球政府時代の出来事。那覇にあった悪徳プロダクションが日本の女の子たちをダンサーと称して沖縄や東南アジアに送り出し搾取していたという事件のレポである。
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もちろんGLHはこの事件とはまったく関係はない。誤解されませんように。どういう箇所に名前が登場するかといえば、コレなのだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1720072727105-HbsudZDzn9.jpg?width=800)
だが、りっぱに成功している例も多い。『ゲイ・リトル・ハート』という初代天勝の五人の弟子のバンドが大変な人気で、沖縄にファン・クラブまでできたり、女ひとり各国を渡り歩いて財産をなした人もある。
文脈としては、プロダクションに騙され酷い目にあった女性たちの実情が説明された後、被害者たちとは逆の、”海外渡航者の成功例”としてGLHが紹介されているのである。というのも、当時沖縄は”外国”だったから。
本誌のリリースは、1964年夏頃にGLHが渡米してからすでに2年以上経った時だ。2年6ヶ月というタイムラグがあってさえ、「りっぱに成功している例も多い」とされる成功例の中から、代表としてGLHが言及されたのはどういうことだろう?
推測だが、この記事を書いたライターが沖縄で取材した際に、基地に出入りしている関係者などから一種の”Legend”として逸話を聞いたのではなかろうか。ライターがGLHの予備知識がない日本国内の読者に向けて、”初代天勝の五人の弟子”というツカミの文句を入れたと見る。
時を経てなお成功譚として語られるだけでも、沖縄での彼女たちの人気は飛び抜けたものがあった、と私は解釈する。
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■追加調査:ハコモリ姉妹の名前を、日本語表記では何と書くか?
さて余談。GLH/THCの各メンバー、ハコモリ姉妹の名前については、ここでは”Eiko, Keiko, Shoko, Tomiko and Ruriko Hakomori”と表記されている。では日本語だと、どういう表記になるのか。
名前についてはBaugher氏からいただいた追加情報はこれ。
I do not know how they spelled their last name in Kanji.
I know Shoko would sometimes use Kyoko as a first name. Ruriko also used Mieko as a first name.
彼らの苗字が漢字でどう表記されているかは分かりません。
ショウコはキョウコをファーストネームとして使うことがあったのは知っています。ルリコもミエコをファーストネームとして使うことがありました。
Baugher氏はメンバーを含む当事者・関係者からヒアリングを行っているので情報の確度は高い。苗字"Hakomori”の漢字表記は謎のままながらも、名前の方はどうなのか。ここは彼女らの自筆のサインがあれば、確定なのだが。
◇ ◇ ◇
そんなことを考えながら、レコードの出物がないかと何気にeBayを見ていたら、なんとサイン入りの『Live』が2枚出品されていたのだ。タイミングがイイぞ。
1.「ルリ子」(Ruriko)のサイン入り。
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Rurikoさんの場合は、カタカナの”ルリ”と漢字の”子”となっている。
2.メンバー5人全員のサイン入り。
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名前の日本語表記は左から、
「Shoko/祥子」
「Keiko/桂子」
「Ruriko/ルリ子」
「Tomiko/とみ子」
で、ご本人のサインなのでこれで確定だ。しかし「Eiko/□子」の「□=えい」の崩し字が判読できない。
東京大学の「電子くずし字字典データベース」なども参照したが、該当する漢字が見当たらず頭を抱えてしまった。同定までもう一歩だったが、残念。
よく見るとそのひと文字、英でも永でも栄でもなく、なぜか【帝】の字に見えるんだよねえ。英語圏での発音を考えて”tei”ではなく”ei”と略したのか。ひょっとしたらEikoさんの本当の名前は"Teiko”ではないかと思ったが、どうだろう?
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”心許なき日かず重るままに、白川の関にかかりて旅心定まりぬ”
『婦人倶楽部』のアクロバット写真がGLH本人であり、5人は秦玉徳と旭天華の娘であった。そのエビデンスが取れたことで、この道中も”白河の関”を越えたというところか。
関を抜けても、まだまだこの『奥の細道』、Destinationへはたどり着いてはいないのである。
次回は、GLHの渡米前に彼女らと親しくしていたあるアメリカ兵と、彼が今も大切に保管している物品や記録を軸に、奥へ奥へと、少しだけ”脇道”を進もうと思う。
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