インド記 part2 - 石像

インド人とのコミュニケーションはとても難しい。

インドには英語を話す人口が多いが、彼らの話す英語は特有の早口と、ヒンドゥー語による訛りで、英語とは思えないことが多い。

ジェスチャーも不可解だ。「頷く」動作は"NO"で、「首を横に振る」動作が"YES"を意味するのだ。ちゃんと調べたことはないが、こんな国はインドだけだと思う。

このジェスチャーが厄介である。外国慣れしたインド人は"YES"の意味であえて「頷く」が、慣れていないインド人は"NO"の意味で「頷く」のである。どっちの意味で頷いているのか本当に分からない。

首を横に振るのも、僕らがイメージする感じとは違う。鼻を横に向けるのではなく、鼻を軸に頭のてっぺんを左右に振る感じだ。分かりにくいと思うので、会った時に聞いてくれれば実演したいと思う。

だけどラヒムは違った。

多少早口ではあるが、日本人の僕にも十分理解できるように話してくれる。振る舞いも、どことなく欧米風だ。

うまくコミュニケーションが取れず不満がたまっていた僕としてはチャンスである。インド門に着くまでたっぷり時間もあるので、インドについて聞きたかったことを質問することにした。

石「インドは音楽が沢山あるよね?実は僕、日本でバンドやってるんだけど、インドの音楽も気になってるんだ。みんなどこでCDを買ってるの?」

ラ「なんだ、友よ!言いたいとがあるなら最初に言いなよ。CDを買えるところに連れていってあげるよ。」

いつから友になったのだ。まぁ良い。ラヒムなりの人と距離を詰める処世術なのだろう。気にしないでおこう。

そしてラヒムに連れられて5分ほど歩くとCDショップに到着した。お店というよりは屋台だったが。

そこで驚いたのが、CDのディスクを売っていないことだ。すべてUSBメモリのデータで売っている。データなので1つに収録されている曲数も30曲以上だ。

どれか買おうと物色してみるが、ほとんどがコンピレーションアルバムなので、ジャケ買いするしかない。だけど、どのジャケットも全然ピンと来ない。CDショップ店主のヒゲおじさんにおススメを聞いても、ひどい訛りで言っていることを理解できない。

悩みに悩んでいくつかの候補に絞り込んだものの、結局のところ買えなかった。この前日、インド政府が突如発表した「高額紙幣廃止」の影響で、持っていた紙幣が紙切れとなり、小銭ではCD代金に足りなかったのだ。

仕方なく諦めてインド門に向かおうとしたところ、ラヒムが明らかに違う方向に歩き出した。どうやら駅に向かっているらしいが良く分からない。

駅に用事はないし、電車に乗る予定もないが、一人取り残されても困る。仕方なく追いかけることにした。

- 続 -

石像

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