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NOTEでのオリジナル記事

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記事一覧

脱魂と憑霊3:中国、チベット、日本

「脱魂と憑霊1:狩猟、農耕文化から生まれた変性意識」、「脱魂と憑霊2:オリエント、西洋」に続く投稿です。 この投稿では、中国、チベットと日本の宗教、道教や密教、神道などに見られる「脱魂」と「憑霊」の要素をまとめます。 古代中国 中国には、現代に至るまで、「神憑り」を行う巫覡が多くいます。 ですが、北方や西方、東方に、特に古い時代には、狩猟、遊牧民族の影響でか、「脱魂」的な宗教現象も見られます。 中原の最古の王朝である殷では、祭祀王が神権政治を行っていました。 国家の

脱魂と憑霊2:オリエント、西洋

「脱魂と憑霊1:狩猟、農耕文化から生まれた変性意識」に続く投稿です。 「脱魂と憑霊3:中国、チベット、日本」に続きます。 この投稿では、キリスト教などの一神教と、古代ギリシャや西欧の伝統宗教、神秘主義や西洋魔術に見られる、「脱魂(幽体離脱、異界飛翔)」と「憑霊(憑依、神憑り)」の要素をまとめます。 古代ギリシャ 古代ギリシャ文化には、「脱魂」と「憑霊」の両方の要素を見ることができます。 これは、古代オリエントや地中海の諸国の影響を受けていたからかもしれません。 「脱魂

脱魂と憑霊1:狩猟、農耕文化から生まれた変性意識

「脱魂(=エクスタシー、幽体離脱、異界飛翔、呪的飛翔)」と「憑霊(=ポゼッション、憑依、神憑り、降神、降霊)」は、一般に、シャーマニズムの2類型の特徴とされるものです。 私は、「脱魂」は狩猟文化のシャーマニズムに特徴的で、「憑霊」は農耕文化の巫術(シャーマニズム)に特徴的だと思っています。 そして、この「脱魂」と「憑霊」は、様々な変性意識状態の中で、最も古代的で、対照的な状態でしょう。 この2つの要素は、シャーマニズムや巫術より後の宗教や神秘主義にも、様々な形で引き継がれ

夢見の術:その本質と奥義

私にとって「夢見の術」は、大きなテーマの一つです。 昔、「夢見の技術」というグログ・サイトも作りましたし、このNOTEでも夢見に関するマガジンをまとめています。 ですが、「夢見の術」というのは、一般にほとんど知られていませんし、実践はかなり難しいものなので、試しても諦めてしまう人がほとんどでしょう。 まあ、それは、瞑想でも、魔術でも、なんでも同じなのですが。 そういう私も、「夢見の術」の研究家ではありますが、決して実践家と言うほど、実践をしているわけでもありませんし、優秀

知恵を獲得する英雄、不死を探求する英雄

「知恵の獲得」、「不死の探求」に関わるいくつかの有名な神話を比較して解釈します。 扱うのは、旧約聖書の創世記、ゲルマン・北欧のヴォータン=オーディン神話、シュメールのギルガメッシュ神話、ギリシャのプロメテウスとテセウス、そして、ヘラクレスの神話です。 「知恵の獲得」=「死の発生」と「不死の探求」の2段階 「知恵」には、まったく対照的な2つの種類があります。 「言語的な知恵」と、「直観的な知恵」です。 一般に、多くの神話では、「言語的な知恵」の獲得は、「文化」の獲得や、

古代エジプトの神々と季節循環

古代エジプトも含めて、多神教の神々は、季節循環の中にいました。 神々は、自然の中に、実際に、見て、肌で感じられる、実在でした。 それに比べると、自然の営みから分離された一神教の神は、頭で考えただけの空想物に過ぎません。 古代エジプトの宗教は、内外の多くの地域の宗教、神々が複雑に習合しながら発展してきました。 この中で、多くの神々が同一視されたり、また、一人の神が様々な側面(神々の相)を持つとされるようになりました。 エジプトの神々はこのように複雑な様相を呈していますが、

高等魔術の秘儀参入のヴィジョン(マルクト→イエソド)

少し前の投稿で、魔術には、目的別で、「秘儀参入」に関わるものと、「願望実現」に関わるものがあると書きました。 本投稿は、魔術師の「秘儀参入」の体験が、どのようなものであるのかを、大体のイメージとして理解していただくためのものです。 魔術で言う「秘儀参入」とは、霊的・神的な世界を体験することで、人格を成長させることです。 本稿では、「秘儀参入」の方法である、「パス・ワーキング」の初歩段階のヴィジョンの旅を紹介します。 「パス・ワーキング」は、象徴によって精密にコントロール

日本の呪術各派の攻撃法・防御法(祓え・調伏・追儺・呪詛・呪詛返し…)

本投稿では、密教、陰陽道、修験道、神道、民間呪術などの日本の伝統的な各宗教の呪術の防御法と攻撃法を紹介します。 ただ、呪的攻防の方法は、秘密に属する部分が多いので、大まかな部分しか知りません。 私は、瞑想や伝統文化への興味のついでに、呪術について読んでいる程度で、呪術の実践者でもなく、専門家でもありません。 なので、個人的な、忘備録みたいなものです。 最初に、攻防の呪術の種類をあげてみましょう。 防御法と攻撃法とは言っても、この2つは、分離することはできません。 「祓

NLP(神経言語プログラミング)は魔術か?

ドナルド・マイケル・クレイグの『モダンマジック』は、近年で最も優れた実践魔術の入門書という評価を得ています。 この書では、第3版(2010年)から、NLP(神経言語プログラミング)を「魔術」の一種として取り上げています。 NLPは、能力開発的な性質を持つ「心理療法」の一つであり、もちろん、一般には「魔術」として受け止められていません。 一方で、NLPの創始者が、最初の著作のタイトルを「魔術の構造」として以来、NLPでは、NLPの方法を比喩的に「魔術」と表現することが良くあ

エンタメ作品の魔法と実際の魔法:技法

「エンタメ作品の魔法と実際の魔法:世界観」に続く投稿です。 エンタメ魔法と比較しながら、実際の魔法を紹介していますが、本稿では、魔法の具体的な部分として、魔法の種類と技法を扱います。 エンタメ魔法の種類 エンタメ作品で登場する魔法は、分かりやすく見えるのもでないといけないので、ほとんどが物理的な戦闘の道具になります。 具体的には、物理的な「攻撃魔法」、物理的な「防御魔法」、物理的な「結界魔法」そして、身体的な怪我に対する「治癒魔法(回復魔法)」などが主になります。

エンタメ作品の魔法と実際の魔法:世界観

メディアを問わず、現代のエンターテインメント作品では、「魔法」や「魔法使い」というテーマやモチーフが盛んに使われていて、それが衰える気配もありません。 エンタメ作品が描く「魔法」や「魔法使い」は、ほとんどが空想上のものですが、その一方で、「魔法」、「魔法使い」というものは、歴史的に実在してきました。 本投稿は、「エンタメ魔法」と比較しながら、この歴史的に実在してきた「実際の魔法」を紹介します。 まず、最初の本投稿では、両者の世界観について比較・紹介します。 続く投稿では

量子もつれと時間

以前、「量子もつれ(エンタングルメント)」が「空間」を創発するというテーマの投稿をしました。 「量子もつれ」と「時間」の関係についても興味を持っているのですが、このテーマについて、時々、ネット上でニュースを見かけます。 私には難しいテーマであることと、ニュースでは説明が短いため、ほとんど理解ができません。 ですが、個人的なメモとして、残しておきたいと思い、これらニュースをまとめた投稿をしておきます。 あくまでもメモであって、私はその内容を理解できていないことをご了承く

聖婚、聖娼、性瑜伽

古代から中世にかけて、世界各地で、「性」と「聖性」は不可分なものとして存在していました。 これを分離したのは、ユダヤ、キリスト、イスラム教による抑圧と、近代合理主義・啓蒙主義による世俗化の結果でしょう。 本投稿では、このテーマに関して、古代オリエント・ギリシャの「聖婚儀礼」と「聖娼」の制度、そして、キリスト教グノーシス主義の「聖婚の秘儀」、中世インドの「性瑜伽(性ヨガ)」、中世日本の「歩き巫女」と「稚児灌頂」などについて簡単に紹介します。 古代メソポタミアの聖婚儀礼

「葬送のフリーレン」のテーマの考察・解釈

以前に、アニメ「葬送のフリーレン」の解釈に関する投稿をしましたが、結構、荒い議論だったので、再考した文章をアップします。 ちなみに、今回、私はコミックの13巻まで読みました。 本稿は、アニメを見終わっている人を対象にしていますが、一部、アニメ以降のネタを含んでいますので、その部分ではあらかじめ注意書きを入れます。 魔王討伐の4つの意味 「葬送のフリーレン」の物語は、勇者一行の「魔王討伐」が終わり、帰還するところから始まります。 「魔王討伐」後の物語なのです。 そして、