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【イベント報告】戦場体験を語り継ぐ~孫が発掘した祖父の戦争と人生~

2022年10月9日(日)
NPO法人ブリッジ・フォー・ピースのオンラインワークショップにて
ゲストスピーカーとして登壇させていただきました。

その内容を、要点のみにはなりますが、記事にまとめました。

第1部 わたしが「戦争と平和」に興味を持ったきっかけ

まずは、わたしがなぜ「戦争と平和」に興味を持ったのか、についてお話させていただきました。

◆高校生のときに受けた衝撃

わたしが「戦争と平和」に興味を持ったきっかけは、
今振り返ってみると、高校生の時でした。
わたしが中高生のときに、同時多発テロ、アメリカによるアフガニスタン、イラクへの侵攻が起こりました。
それらのニュースも、それまでは何気なく聞き流していましたが、
英語の授業で観たある動画(ミュージックビデオ)に衝撃を受け、
「なぜ人間は戦争をするのだろう?」という漠然な疑問を持つようになります。

John Lennon - Happy Xmas (war is over)

※このときの詳細は別記事でまとめています。

そんな漠然とした大きな疑問を持ち続けながら、大学ではアメリカ政治外交史を専攻。
「アメリカの戦争」というアプローチで、漠然とした大きな疑問に果敢に挑みました。

大学卒業後は、イギリス留学、就職、東京でのOL生活、結婚を機に地方に移住、再就職、出産、子育て…。
目の前のことに精一杯で、慌ただしい毎日の数年間を送ります。

日々の生活では、大学で学んでいたことやそれに関わることからは遠ざかっていましたが、
実は心の中では、年々減少する戦争体験者と継承する機会への危機感と、そんな状況で何もできない自分への無力感を抱いていました。

◆BFPワークショップに参加して…

そんなとき、2021年10月、
「戦場体験を語り継ぐ」というタイトルのオンラインワークショップが目に留まります。
このワークショップへの参加が直接のきっかけとなって、わたしの平和のための取り組みが始まりました。
※ワークショップ参加前後のことの詳細は別記事でまとめています。

第2部 ライフストーリーでつなぐ、じーちゃんの戦争体験

このワークショップでは、サブタイトル「孫が発掘した祖父の戦争と人生」をご紹介するために、
①わたしが祖父たちの戦争体験を知るために、何をやったか
②やってみて分かったこと
③自分の経験を踏まえて、戦後世代はこれからどのように戦争体験を語り継いでいったらいいのか?の提案

という3ステップで構成されています。

その3ステップを解説する前に、実際にこの3ステップを活用した
「わたしとじーちゃん、じーちゃんと戦争」というスライドで、
祖父の戦争体験を紹介しました。
(先に紹介しておかないと、3ステップの解説が難しかったので…)

このパートだけで、記事1つ分の分量になりますので、
こちら↓をご覧ください。

第3部 戦後世代が語り継いでいくために…

祖父のライフストーリ―と孫である私とのかかわり、そして、祖父たちの戦争体験の概要を知っていただいたところで、
このスライドの形に至ったまでの過程を、3ステップで説明します。

①【やったこと】 資料、情報を集める

戦争体験を語り継ぐために、まずは現時点で手に入る「事実」をひとつでも多くかき集めることです。

私の場合、大学生の時に祖父から戦争体験の聞き取りをしたことがありました。
インタビューとしてはお粗末で、今となっては「もっと聞いておけばよかった~」と思うところが多々ありますが、「ないよりはあった方がいい」貴重な資料です。

今回、最も力を込めてお伝えしたかったことは、「兵籍簿」の存在でした。
戦場体験者本人からの聞き取りがますます難しくなっている今、「兵籍簿」は条件を満たす親族であれば取得でき、公的資料なのでかなりの記載に信頼がおけるものです。
※兵籍簿についてはこちらのマガジンにまとめています。

「兵籍簿」を取得し、解読したら、そこからいろいろと疑問が出てきました。
・祖父が言っていたこととの相違
・時代背景
・祖父が戦争へ行く前後の人生(出生~戦後の人生)
・祖父が赴いた中国についてや、残された家族が経験した銃後の生活
 等々…

その疑問をひとつひとつ解決するために参考にしたのが、下記に挙げられるものです。
・実家に残っている写真や書類等
・祖父の父や伯父が戸主となっているレベルで古い戸籍(兵籍簿取得に必要だった)
・インターネット(旧日本軍関連の公的資料の一部にアクセスできます)
・書籍(やなせたかしさんの「ぼくは戦争は大嫌い」が重宝しました)
・資料館(岐阜空襲について参考にしました)

これだけの資料で、祖父のライフストーリーの欠けている部分をすべて穴埋めできたわけではありません。
国立公文書館にまで足を運んだり、地元の親族を訪ね歩いたりすれば、もっと多くの情報を集められるのかもしれませんが、それに避けられる経費と時間の都合もありますし、どの程度極めるかは、自分自身の熱量と創意工夫次第なのかなと思います。

②【やってみて分かったこと】「事実」と「推測」をつなぐ

ここでは、①でご紹介した資料等を基に、”語り継ぐことを前提として”、ストーリーを組み立てるステップです。

先述の通り、どれだけ頑張って資料をかき集めても、戦争体験者本人ではない私たちには、その一部始終を完全な形で語り継ぐことはできません。
そこが、戦争体験者本人が語ることとの最大の違いです。

「完全じゃないから・欠落があるから、語り継ぐのはムリだね」
で終わらせてしまえば、そこまでです。

しかし私は、そこで終わらせたくはありません。

これは私の個人的な考えですが、『間違っててもいいから、ストーリーを組み立ててみる』ということを提案します。
①での様々な資料から「事実」は「事実」としてピックアップし、それでも欠落する部分は、関連する資料からなるべく”確からしい”情報を用いて補填する。
それでも欠落する部分は、私たち現代人の感覚でも構わないから、イマジネーションを働かせて、ストーリーにする。

このあいまいさに対して、「事実でないのはアカン」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
事実でないことが含まれていることは承知の上です。
ですが、不可避に関心が薄れつつある戦後世代に対してアプローチしていくときに、単なる事実の羅列は面白味に欠け、彼らの興味関心を引き付けるのに失敗する可能性を含んでいます。
「完全な事実の継承」よりも、「一世代でも多く、後世へ継承していくこと」を主眼に置いているのが私の提案で、
そのためには誤りを恐れずに伝え、戦後世代に気づきを与えること、そして、気づいてくれた若者たちが平和のために立ち上がることが、最大の目的であるのです。

③【やってみた上での提案】 ライフストーリーとして伝える

②の通り、「事実」に「想像」を織り込ませながら創り上げたライフストーリー。
では、なぜライフストーリーとして語り継ぐことが効果的なんでしょうか?理由は『ライフストーリーは時間と場所を超える』からです。

今、話をしているのは、祖父(=過去の人)・約80年前(=過去のこと)についてです。
ですが、過去の話として終わらせていては意味がありません。
わたしは第2部でご紹介したスライドのタイトルに「わたしとじーちゃん」と入れたように、私(=現代の人)・今(=現代のこと)との【つながり】を強調しました。
戦争体験の部分的な切り取りではなく、過去の人の人生を今を生きる私の人生と交わらせることにより、「過去のこと」は「今のこと」と【つながり】ます。

過去と現代を【時間軸】で比較した後は、
現代という【時間軸】は変えず、【場所軸】を移動させてみよう、と誘導します。

例えば、ウクライナ。
例えば、アフガニスタン。
例えば、ミャンマー。

インターネットが発達し、地球の裏側の人々のリアルな生活の様子や、一夜にして一変した人々の人生が、様々な媒体で日本の私たちにも届けられています。(届いているけど、意図的にキャッチするかは個々人に委ねられています)
「遠い国の人々のライフストーリー」も、もはや「自分事」と捉えるのに容易になりました。

【時間軸】と【場所軸】を行き来しながら、
過去と今、日本と世界、そして未来はすべてつながっている。
ライフストーリーはそれらの要素のつながりをイメージしやすくするツール。

文字情報だけではちょっと難しいかもしれませんが、何となくでも伝わったでしょうか?

まとめ

◆戦争を考えることは、生き方を考えること

第3部の③で述べたように、過去のことと今のことの【つながり】に気づくことの大切さを、私は強調します。
【つながり】を感じられると、「自分事」としての実感がわいてくるはず。
人は「自分事」として捉えたとき、考えや行動が変わります。
行動が変わると、生き方・生き様が変わります。
人ひとりの生き方が変わると、未来が変わります。

「戦争を考えることは、生き方を考えること」と私は信じています。

◆みんなも、できるよ

私自身の変わった(?)興味関心から、祖父の戦争体験を調べ、皆さんの前で発表する機会をいただきました。
が、これは私だけが特別なのではなくて、この記事を読んでくださっている皆さんにもできることなのです。

わたしは研究者でも、その道の専門家でもありません。

皆さんには、決して私の真似をしろと言っているわけではありませんが、
「調べてみようかな?」と思ったとき、私と同じような門戸は開かれてる、ということをお伝えしたいのです。

そして、私自身が実際に行動してみて感じたことは、
その戦争体験と自分との距離が近ければ近いほど、グッとこころに刺さるインパクトは大きく、思い入れも一層強くなります。

100人いれば、100通りの戦争体験があります。
100通りのストーリーや感情が、そこには眠っています。

今、戦後世代のわたしたちができることで、できる範囲で、
戦争体験を語り継ぐ一端を担う、そんな人がひとりでも多くなればいいなぁと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


この記事は
・祖父たちの戦争体験や人生
・戦争体験の収集の記録
・「戦争体験を語り継ぐこと」を考える
について、記録と情報発信を目的にしたnoteです。
歴史批評や政治的発言、歴史認識問題についての言及をする意図はございませんので、ご理解ください。

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