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コンテクスト・デザインとは何か?―② designの意味

福岡の映像制作会社 ㈱モアミザンでコンテクスト・デザイン領域を担当している映画監督の神保慶政(じんぼよしまさ)です。

前回は、「コンテクスト」の意味を考えてみましたが、今回は「デザイン」についてです。正直なところ、多くのメディアで語られつくされている感はありますが、僕だから言える・書けることをできるだけお伝えできればと思います。

5歳の娘が、たしか昨年だったかと思うのですが、急に「デザイン」という言葉を使いだしました。どこで覚えてきたのか(あるいは僕とかが言ったのを聞いていたのか)わかりませんが、気になったので「デザインってどういう意味?」と聞きました。そうすると「オシャレすること、飾ること」と答えました。

これを聞いたとき、「その通りだな」と思いました。もちろん、実際にはもっと複雑なので、5歳のボキャブラリーで言い表せないこともあると思うのですが、「オシャレ・飾る」というのはわかりやすい説明の仕方だなと子どもから学ばせてもらいました。

毎回国語の授業のようになってしまって申し訳ないのですが、designという英語を分解して考えてみます。
de-sign、ですね。
signは見ての通り「印」です。
しかし、この「見ての通り」と軽々しく言った裏には、実はめちゃくちゃ複雑なあれこれが隠されていますので、今回はスキップしてdeの掘り下げ集中します。

deは「離れる」とか「下」いうニュアンスを持つ接頭辞です。
departure(出発)、depression(落胆)など。
「よっしゃ行こう!」と出発するには、目的地(destination)の決断(decision)がなされていることが多いでしょう。
あてのない旅であっても、なにかしらの願望(desire)があるはずです。

で、de-signのdeは、「思考を外側に出す」というニュアンスを持っているのですが、contextでは「文脈」という意味合いが派生して「環境」となったように、designのdeも原義から派生・発展して「外」という意味合いが出てきたのだと思います。

つまり、designの主な意味合いは、最近よく言われるアウトプットをして、それをどこかに着地させるようなイメージで、「設計図を書く」「図面を描く」というような説明がネット等にも書いてあります。

designの和訳とされる「設計」と言うと、どうもこのところがわかりにくくなってしまうのですが、うちの娘が言っていた「飾る」の「飾」という漢字はデザインという英語とほぼ同じことを言っています。

偏(左側)は、フタのしてある丼ものみたいな象形文字です。つくり(右側)は、調べてみてめちゃくちゃ面白かったのですが、「人が布やはけで壁の下地の部分に次第にくいこんでいくように飾りをつけていく事」なんだそうです。depression(落胆)、deposit(堆積・貯金)、devotion(献身)等の「下」と同じということなんですよね。

最後にもうひと掘りだけさせてください。なぜ、「下」が「外」になるのかということです。deという接頭辞が持つ主なニュアンスを、僕が考える順番(原義→派生)の順番にならべてみました。ラテン語は大学のとき学びそこねた(興味があって教室の前まで行ったけど 他学科の専門授業で入りにくかったので入らなかった)ので、映画監督の経験をもとにした予想です。

「否定」→「下」→「徹底的に」→「強意」/「離れる」→「外へ」

なにかをつくるとき、買うとき、飾るとき、、、多かれ少なかれ意図というものがあります。
監督業というのは、その意図をできるだけ適切な形で適切なときに適切な人に伝える仕事で、旅行でいうと(旅行会社には勤めていたのでここはラテン語より確証があります)添乗員みたいなものです。

「意図」と矛盾するようですが、まず最初は否定することからはじまります。
「こうだ」と思うには、意識的であれ無意識であれ「こうではない」という判断が必要になります。
否定をしはじめたら、下に沈みます。考察・内省・思索などなどということです。
沈みはじめたら、泥沼にはまらないか怖いですけど、徹底的に沈みます。
その泥を使って顔とかを泥パックをする余裕が出てきたらしめたものです。
泥は足かせではなく、むしろ推進力になります。そして外へと出発するというわけです。

映画監督はデザイナーとは呼ばれないですが、意思決定やチーム作りやオーディションなど様々な局面でデザインが必要です。なので、上記なようなことはわかりますしできますし、意外とそれは映画以外の社会領域にも有用だということが最近わかってきました。

1600文字ぐらいになってきたのでこの辺にしますが、盲点といいますか、色々書いた中でひとつおぼえて頂くとすれば、「否定」が大事だということです。

今回は、「コンテクスト・デザイン」の「デザイン」を分析してみました。次回は、いまいちど「コンテクスト・デザイン」という言葉に戻って、具体的ケースもまじえてご紹介できればと思います。

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