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根拠のいらない話がしたくて

大学に行っていない。いい天気の日も行っていない。太陽につられて外に出てみようにもなんだかしっくりこない。今日の服装はダル着にサンダルで外に出る大学生だ。昼に起きて、外の光に目を細めながらカーテンを開ける。キャミソール姿で窓を開ける。昨日からベランダに干しっぱなしになっている首元がだらしなくなってきたTシャツを手に取り、そのまま着る。そこからそのままサンダルを履いてみて、流れから完璧に成りきれたこの大学生コスプレにしっくり来たので外に出てみることにする。太陽が出ているところはあたたかいが、日陰はTシャツ一枚では寒い。仕方ない。今日の私はだらしない大学生なのだ。そういう人ならきっとちょっとくらい寒くても 何とかなるっしょ と思いそうだと思ってそのまま足を進める。

何とかなるっしょと思って生きて行きたいなあとふと思う。空では雲がのんきに浮かんでいる。だらしないけどなんだかんだバイトして、いろんな飲み会に出て二日酔いで次の日の一限に出られなかった人のほうがよっぽど私よりも何とかなりそうなことがこの世のすべてのような気持ちになってくる。

まねしてみようかな。この世のすべて。嘘も真似しただけなら嘘の真似になるだろうし、嘘ついたことにならないでしょ。とかよくわからないことを考えてみる。気付くと信号が赤になっていて私は足を止めていた。イヤホンをつけ、ここ最近聴いていなかったBTSを流す。彼らの曲にはLove myselfを前面に出す曲が多い。自分とは何なのか本気でわからなくなってから聴けなくなっていた。しかし聴き始めると不思議なもので自分が自分の事を誰よりも信じてやまない人物になれたような気がしてくるのだ。そのままいい気になって真似し始める。歩き方が変わる。前を向き始める。まるでこの地にあるものすべてを手に入れに来た賊にでもなったんじゃないか。というくらいに気持ちがよくなっていた。まず手始めに道端に生えているねこじゃらしを引っこ抜いてみる。ふふん。いい気分だ。楽しませてもらおうじゃあないか。

ここまでくると信号が私の意に背いて赤になったかのようにも思えてくる。これが支配者の視点か。なるほどね。随分お育ちのいいことだ。あれ、私ったら皮肉まで言えるようになっている。BTSはすごい。ド根暗底辺大学生に元気を与え、さまざまな景色を見せてくれる。いまなら畑仕事している知らないおじちゃんに元気に何植えてるの~~~??と質問できそうな気分だ。あわよくばお手伝いをして、それから一緒に麦茶を飲んで一休みしたところでお別れし、いい汗かいたな~と帰宅し、明るいうちからシャワーを浴びて幸せな気持ちで眠りにつきたい。

元気に挨拶できるときとそうでないときでは晴れてるか、暴風雨かくらいに見える景色が違う。暴風雨の時は全部がだめだ。だめ。つい人前で言葉にしては自分に大丈夫。大丈夫。と何度も言い聞かせる必要があるくらいにだめだ。私の心の中ではおじちゃんのせっかく植えた野菜かなんかも復活不可能なくらいの洪水をおこし、おじちゃんの先々代のおじちゃんが建てた家の瓦屋根なんか軽々吹っ飛ばすような風が吹き荒れる。

とにかく私は大丈夫じゃないのだ。元気に挨拶できるようになったら壊した家や畑を謝りに行こうにもその被害の規模が大きすぎるような気がして気後れしてしまう。

それにしても今日はいい天気だなあ。

ふつうに元気に挨拶ができる毎日が送りたいです。なんとなく向かった大学。今日は何も受ける講義がない。友人を見つけた。

「やっほ」

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