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国内900万人を超える、買物弱者、フードデザート問題を考える。

“買物“に関する論文をピックアップ
して考察していきます。
ピックアップする論文の特徴は、
特徴1:
実務に使えそうな、分かりやすい結果が出ている
特徴2:
結果に対して、気持ちや行動が考察ができる
特徴3:
追加で想像をかき立てられる

⚫︎今日の論文の紹介
日立市における買い物弱者支援のための移動販売サービスに関する分析
鳥海 重喜, 大森 紘
https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/55/3/55_443/_pdf/-char/ja


買物弱者がテーマの論文です。



900万人を超える買物弱者

2024年3月19日に農林水産省は、
買物弱者の推計を発表しました。
買物弱者とは、スーパーやコンビニが近くになく、自動車も使えないため買い物が困難な65歳以上。
その推計は、2020年時点で
全国に904万3千人

衝撃的な数字です。
地方だけの話しかと思いきや、
首都圏でも他人事ではない話題です。

最近イトーヨーカ堂が首都圏の6店舗で
閉鎖を決めたり検討したりしていることを明らかにしました。
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20240312e.html

企業は利益追求が最優先ですから、
赤字の店舗や収益性が見込めない店舗は、
閉めざるおえません。

その結果、買物弱者は増え続けています。
国や地方自治体が対策に乗り出していますが、
対策が十分とはいえない現状です。

今回ピックアップした論文の研究対象は、茨城県日立市
 ・2013年に移動スーパーの事業者を公募
・カスミと日和サービスが2013年11月から2015年9月まで実証実験
・実験終了後に本営業を開始
・2018年には日和サービスが事業を撤退。その営業場所もカスミが引き継いだ
・現在は、北エリア25ヶ所、南エリア20ヶ所を月曜日から金曜日にかけて巡回
という状況です。

この経緯から、
移動スーパーを儲かるビジネスとして
成り立たせるのは難しそうな予感がします。

移動スーパーは,1日50人の客数で、月の利益が68,088円の試算

利益少ない!!
試算なので実際とは違う可能性がありますが、
これよりも低い事も十分考えられます。

計算式は以下

⚫︎売上 499,275円
1日客数 50人(実際の業者のヒアリングより)
✖️
客単価 1,585円(800平米未満の平均客単価)
✖️
営業日数 21日
✖️
粗利 30%

⚫︎経費 431,187円 
内訳
燃料費 14,857円
(小型トラック燃費5.5km×ガソリンリッター134円+消費税)

人件費 351,330円
(時給1,195円×1.75倍 福利厚生費なおを考慮)

車両保険料 15,000円

車両償却費 50,000円

売上499,275円−経費431,187円=68,088円
1日の客数が40人になると31,767円の赤字となる。

なかなか厳しい数字です。

論文では移動スーパーの移動距離を最小化する数理モデルの提案をし、
一週間の総移動距離が28kmから29km短縮でき、
経費が削減できるとしています。

移動スーパー以外に買物弱者を救う解決手段はあるのか?

買物弱者の問題は、
日々の生鮮食品を確保することが難しいとして、
フードデザート問題(食品の砂漠化)
と呼ばれており、その解決手段は以下の4つです。
・離れた店舗までの移動手段を店舗事業者あるいは行政が提供する(送迎)
・自宅にいる買物弱者がオンラインで注文し、商品を自宅まで配送する(ネットスーパー)
・フードデザート地域に店舗を出店する(新規出店)
・移動型店舗により巡回する(移動スーパー)

論文の冒頭にそれぞれのメリットデメリットが整理されていますが、
移動スーパーは買い物できるということだけでなく、人との交流や高齢者の健康維持や生活自立という別の側面のメリットがありとても有効です。

フードデザート問題を解決する国内外事例


移動スーパー「とくし丸」

日本で業績を伸ばしている、移動スーパー企業は「とくし丸」

ダイヤモンドチェーンストアの記事
10年後の高齢者マーケット『とくし丸』の成長戦略
https://diamond-rm.net/management/135392/

  • 12年に徳島で創業

  • 16年、オイシックス・ラ・大地の子会社となり車両の稼働台数を拡大

  • 22年現在では47都道府県で約950台に

  • 契約スーパーは140社を超え、最終的には車両を4000〜5000台まで増やす見込み。

  • 月間流通額は、16年時点で約2億円だったが、21年12月には22億を超えた

成長のキーは顧客の集め方にあります。
数名のスタッフが約1ヶ月〜1ヶ月半かけて、約8000世帯に「買い物でお困りではないか」と地道に声をかけ、“本当に困っている人”を探し出す。

このアナログな努力が、安定的な収益をあげることに繋がっていると考えられます。

無人移動販売

先ほどの試算で、1番の経費は人件費。
過疎が進む地域であれば、運転and販売の担い手を見つけるのも一苦労です。
それを技術で解決するのが無人移動販売。
国内外で実証実験がおこなわれてます。
https://jidounten-lab.com/u_36216


食べられる森、フードフォレスト

https://greenz.jp/2023/07/05/food_forest_2023/

フードデザートを解決するべく、考案され、生み出されたアイデアが「フードフォレスト(food forest)」。
アメリカのアトランタ市では、2022年までに、市内の住民50万人の85%にあたる人たちの自宅から1マイル(1.6キロ)以内に食べられる森をつくろうと計画が進んでいるのだとか。

この発想はテックと逆をいってて面白いです。
他にもないか引き続きリサーチしていきたいと思います。

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