「球質がたった4か月で改善!?」Rapsodo を活用した課題改善
皆さん、こんにちは!Rapsodo Japanの橋本と申します。
日本オフィスの営業である私が一番お客様のところへお伺い、ラプソードのデータ計測において色々お話をさせていただいておりますので、その中で活用方法をご紹介させていただけばと思います。
第1回となる今回は、「ラプソードを用いた課題抽出・トレーニング方法」についてです。
1.そもそもラプソードってなに?
ラプソードは投球・打球をカメラとレーダーで計測・分析する弾道測定器になります。機器では計測できるのは
投球→球速、回転数、回転方向、回転効率、変化量など
打球→打球速度、打球角度など となります。
最近はVAA(Vertical Approach Angle)やSSW(Seam Shifted Wake)縫い目が変化量に及ぼす影響のように少しマニアックなデータも計測できるようになりました。そして2024/4/23からは大谷翔平選手とアンバサダー契約を結んでいます(いつかはお会いしたいですね)
全国各地を回りますが、よく「データ活用は難しいのでは?」「購入しても活用できるか不安」「購入したけどどう継続的に使用していけばよいかわからない」という声をいただきます。
そのようなケースをなくすためにも実際に活用している高校や大学などをメインにどのように使用しているのかをお伝えできればと思います。
2.高校生 A投手の事例
①最初に計測を行う
私は特に中学生や高校生を計測する際には選手にどのような課題や悩みがあるか聞いてから計測を行うようにしています。もちろん、データを計測してすべて解決できるわけはありませんが、抽象的だった課題が具体的になったり、改善するヒントになったりするきっかけになることが多いからです。
この投手に最初その質問をしたときは、”ストレートが打たれる、ストレートの質を上げたいんです”と言っていました。
スリークォーター気味でオーソドックスな選手。計測前の練習では変化球も多く投げており、器用なタイプというのが最初の印象です。
以下に計測した選手データを示します。データから見るとこの選手は球速に対しての回転数が少ない投手でした。
回転数は、球速に対して比例していくものになりますが、130km/hであれば約2000回転が平均となりますので、概ね200~300回転ほど少ないです。
またストレートの回転効率に関しては87.6%と若干低めな数値でした(データ上は色々投げながら試したので少し上がっていますが、実際には80%くらいでした)。高校生のストレートの回転効率の平均は90%程度です。回転効率に関しては、様々な考え方がありますが、ストレートの回転効率が低い原因によっては、コントロールが不安定な投手が多いというのが私の印象です(もちろん例外の選手もたくさんいます)
実際に監督さんと話したときもコントロールが不安定で崩れるケースも多いと言っていましたので、要因はここにあるのかなと感じていました。
■回転効率が低めの選手のリリース動画(参考例)
■回転効率が高めの選手のリリース動画(参考例)
そしてこのストレートの回転効率を見ることは、自分の投球スタイルを確立する上で非常に重要になってきます。ストレートの回転効率を見ると、ある程度自分がどのようなタイプなのか、どの変化球が得意か見えてきます。そのあたりはハイスピードカメラの動画や以下を参考にしてください。
ただ、回転数が低いから、回転効率が低いからダメということは決してありません。回転数が少ないのであれば、逆にボールが打者が思っている以上に伸びてこないため打ちにくいですし、フォークなど回転数が少ない変化球が得意な選手が多いです。また回転効率が低いといわゆる”真っスラ”になりやすいですが、この真っスラに関しては、2000本安打を達成した元プロ野球選手(超有名人)と一緒にお仕事をしたときは”真っスラは真っスラでかなり打ちにくかった”と言っていたくらい、特徴のあるボールになります。
今回のケースは本人がストレートの質を上げたいと言っていたこと、コントロール安定が課題ということで改善の余地はあると考えていました。
②計測データのフィードバック
ラプソードではその場でデータがすぐ見れますので、フィードバックが容易です。iPadを見ながらコミュニケーションを取れますし、データを見ながらかなり議論することもあります。すぐに選手と打ち解けられるのはデータがあってこそです。これは実際に現場の指導者と選手間でも同じようになると思います。ラプソードが一種のコミュニケーションツールになるのです。
このときもデータの観点から”若干回転数が少ないのが気になるかな”、”ストレートを課題にしているようなら回転効率を上げるのも一つ”、”今のままでいくのであればストレートは平均に近い球質だから見せ球にして、変化球を磨く方がいい”という話をざっくばらんに選手と指導者へしたことを覚えています(私はトレーナーではありませんので、バイオメカニクスの観点や改善方法まではお伝え出来ません。。。)
実際にはハイスピードカメラも用いて、回転数が上がらない原因も推定していました。ここはバイオメカニクスの観点が強いと言われていますが、
①ボールの握り
②リリース時に人差し指と中指が開いている
というな要因であればすぐに色々試せるので回転数が上がる選手もいます。
この選手は別の要因があり、
③リリース時に人差し指 ・中指が伸びきっている(ボールの上から回転をかけれていない)
が原因で回転数が上がってこないとハイスピードカメラの映像から推測していました。
リリース参考になるYoutubeです!
③指導者や選手がトレーニングを立案
その後、この選手は自分自身で課題解決に向けて、指導者、トレーナーとトレーニング取り組みました。実際のトレーニングの内容については以下です。
①指先の強化(リリース時にボールに負けないように)
②様々なフォーム(オーバースローやサイドスローなど)による回転効率改善
①に関してはリリース時に指先が伸びてしまうのは指先の力が弱いという考えに至ったからのようです(授業中も指先のトレーニングをしていたとか)
また②に関しては、弊社で開催しているウェビナーで講談いただいたNEOLAB代表・内田聖人さんも推奨している改善方法です。様々なフォームで投げることでフォームの感覚を養う目的があります。
(余談ですが、月1で様々なゲストをお呼びしてウェビナーを開催してますのでふるってご参加ください)
④再計測
4か月後に再度訪問する機会があり、計測データを見てほしいということでしたので、その場で計測しました。以下がそのデータになります。
球速はまだ春先出ていなかったものの、回転方向は変わらずに回転数が200rpmほどUP、回転効率も大幅にUPしておりました。回転効率が上がったことによって、他の変化球(特にスライダー系)に影響がないか気になりましたが、前回と大きく変化はありません。(逆に回転効率が良いツーシームの取得していました。ダルビッシュ投手がMLBの開幕戦で投げたツーシームに感動したとか)
変化量も縦41.1cm、横45.1cmとシュート成分が強く、特徴のある球質になったと言えます。3か月ほどのトレーニングで大きな成果が出ていることが目に見えました。
指導者曰く、かなり投球が安定し、試合を作れるようになったとのことで練習試合でも好成績を残しているようでした。そして4月には春季大会がありましたが、ほぼ全試合で先発をし、シード校も2失点に抑え、勝利に貢献する活躍でした。
このように、ラプソードの計測から ”課題抽出”→”トレーニング立案”→”再計測”→”改善”のPDCA サイクルを回すことが一番多い活用方法になります。
3.まとめ
上記に事例を書き出しましたが、決して難しいことをやっているわけではないことがわかるかと思います。これまでの指導の延長上にあるものと思いますし、計測すれば様々なデータが取得できますので、その中で自身が感じている課題とデータの観点からの課題を照らし合わせて、改善していったという流れになります。
今回はトレーニングが選手にハマりましたのですんなり行きましたが、実際にはトライ&エラーを繰り返す必要が出てきます(トレーニングやフォームの修正で課題をどう改善していくのがベストかを立案するのが一番難しいところだと思います)。ただ、ラプソードがあればトレーニングで本当に効果が出ているのか出ていないのかもすぐ計測できます。
ただ、うまく活用できるいるチームは楽しく野球をしているなというのが印象があります。データを見てウキウキしながら話をしてくれる選手もいますし、この選手もデータにしっかりトレーニングの成果が表れており、それが自信につながったのではないかと思います。
計測すれば見えてくるものがありますので、まずは計測してみてください!