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失恋のピエロ

 好きだ、好きだ、好きで好きでたまらない、、、!
 こんな私の醜い恋心は到着予定地を通過し、行く宛もなくただ路頭に迷っている。
 初めに話しておくが私は恋愛が苦手だ、いや待てよ、苦手といえる程恋愛というものに対しての経験が無い。今までにまともな付き合いをした恋人はたった一人、そしてその恋人さえも失ったのである。

 学生時代の終わり頃から付き合った恋人。私にとっては全てが初めてで、新鮮で、心踊るような日々であった。マフラーを巻きながら二人並んでの下校道、繋いだ時の手の感触、好きな人の横顔を、笑った目尻を、恋人として間近で見つめられることがこんなにも幸せなのだと実感したのである。この幸せよ、終わらないでくれ、、、。まさしく夢ならば覚めないでくれ、、、!といった様な状態であった。

            あぁ、好きだ。
 

 春になり、私達は互いに別の道を歩み始め、会う時間も徐々に減っていった。それでも私達なら乗り越えられる、私は信じていた、そう私は・・。
 私はいつものように通話で近況報告を行ったが、どうでも良い反応をされる・・。今まで何通もやり取りしていたはずのラインが来ない、、。 きっと忙しいんだ、そうだ、そうに違いない、、。本当は何となく分かっていた、だが怖かった、失うことが、、。
 だがそれと同時に真意かどうか確かめたい思いがこみ上げた。「別れよっか、、。正直に教えて、もう気持ち離れてる?」、、、頼む、否定してくれっ!淡い希望を抱く私をよそに、あの人は事実を告げる、否定しないという方法で、、、、、、

 私の中の何かが崩れてゆく音がする。あぁ、、、全てが終わった。自業自得だ、、、。気付かない振りをすれば良かったのか?言わなければ良かったのか?、、、私は何度も何度も自らに問いかける。が、答えは一向に出ることなく、先の見えない洞窟に閉じ込められてしまった。


 ―互いに道が別れたって、会えなくなったって私達は変わらない。今と同じようにあなたをずっと好きでい続ける、約束するよ。私から振ることは絶対無いから。そうだ、同棲しよう、ずっと一緒にいられるように。
  
 あぁ、また君の言葉が頭の中でシャトルラン。もうやめてくれ。出てってくれ・・・。

 ―大好きだよ。趣味よりも友達よりもあなたが大切なんだ。仕事で嫌なことがあったら何でも愚痴っていいんだよ。共有して欲しいんだ。

 嘘つき、、、!私から離れていったくせに。一人ボッチにしたくせに、、。嘘つき嘘つき嘘つき、、、、!
 私の心はあの人への不信感と怒り、何より自らの寂しさに支配された。怒り怒り怒り・・・、それでも人間というのは実に愚かである。(私のような類の人間)、分かっている、あの人といても幸せになれない、なぜならあの人はもう私を好きでは無い、もうあの人に中に私はいない、、、。そんなこと分かっている。それでも離れないんだ、、出て行ってくれないんだ、、。いや、違うな。私が思い出を手放せ無いんだ。分かってる分かってる分かってる、馬鹿だよな、愚かだよな。叱ってくれ、いっそのこと笑ってくれ、、。理性が感情をコントロール出来ない状態はまるで二重人格を連想させる。

 久しぶり!〇〇行ってたよね?どれくらい時間かかった?、、、淡い希望を持ち、久しぶりに連絡を試みる。自らの全神経を一点集中し本音を包み込むように手渡した問いは、雑に包装紙を破かれ焼き尽くされように灰と化した。
 
 馬鹿だ己は。愚か者だ。もしかしたら、、、なんてあるわけ無いだろう。あの人に冷たくあしらわれたあの日から私の心にはモヤがかかり、霧の中に閉じ込められる。一瞬の光を見つけ、必死で走る。走り続ける。そしてまた消える。ふっ、私も落ちぶれたものだな、ついに幻覚が見えるとは、、。


 おい、君は私をこんなにも愚かにさせるのだぞ。自らを一層嫌いにさせる。辛辣、孤独、羞恥、憎悪、嫉妬、哀愁、、、、。イヤダイヤダ。コンナジブンイヤダ、、、参ったな、頭の中がショートを起こし語彙力が、、、、、。

 もう分かったよ、君はツワモノだ。いや、バケモノだ。何と名付けようか、、だめだ私にはセンスが無い。そうだ、君に任せるよ。センスが光る重要な役目を君にね。なんてたって私は君を信じているから。きっとこの先もずっと、、、、。
 だからお願いだ、戻ってきてくれ。頼む、頼む恋しいのだ。愛おしいのだ。狂いそうだ、君がいないと、、、私は、、、、、、、、。

             あぁ、好きだ。

 恋愛本を読み漁り、友に相談し、様々な方法を試した、君を忘れるためにね。
 

 だが、出来ないんだ私には。君のことを忘れて、君の笑顔も思い出も捨てて前に進むなんて。だからもう抵抗をやめるよ、降参だ。あっぱれだよ。憎悪を通り越し、称賛の拍手を贈ろうじゃないか。

 君がまた私を好きになってくれるのを信じて。私はここで待ち続けるよ。言うならば前には進まず、その場で足踏みさ。君が来てくれなかったら地獄だね。でも待つよ。だから、、もう一度、、。

 なんてな、そんな綺麗事あるわけないだろう。私はそんなに清らかでは無い、真っ黒さ。君が後悔するように私は自らをアップデートし続ける。君が戻ってきても遅いのさ。

 逃した魚は大きかったな、、、。そう君に言えるその日まで。私は這い上がるぞ。ん?情緒不安定で怖いって?何を言ってるんだい、君が私をそう変えたのだぞ?そう、、、、、

                失恋のピエロ
  
                                                               にね。

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